表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
1章  ~ビーストライド~
26/95

22

 とぼとぼと家の中に入っていくマガネ。


 キッチンの奥から食器を洗う音が聞こえてくる。マガネが、ランニングに言っている間に返ってきていたのかな?とそちらを伺いつつ、部屋に向かおうとすると、ユウミが声をかけてきた。

「マガネ?帰ってきたの?」

「うん!シャワー浴びてしまうね!」

そそくさと部屋に向かい、デバイスで明日の天気予報を見る.


明日の天気は晴れのようだ。


スウェットスーツを洗濯かごに入れると、洗濯機のある裏手に持って行った。

「ママ、先に寝るからね!ちゃんと朝早く起きれるように、早く寝るのよ!」

「わかってるって」

 着ているもの全部放り込んで、回し始めると、自分も風呂場に入りシャワーを浴びた。バスタオルで体をふき取り、部屋着に着替える。洗濯機はまだ回ったままだ。今日の夜のうちに、たまった洗い物は干しておいて、朝の手間をなくしておく。自分の洗濯物は自分でやるのはこの家のルールだ。終わるまで、まだ一時間はある。


 マガネは裏手に回って、外の空気を吸いに行った。

 夜も21 時を回って、今は完全に空は夜の闇に覆われていた。近隣に家が少ない麦畑だらけのこの辺りは、明かりが少なく夜の星がきれいに見える。

 手持ち無沙汰のマガネは、善五郎の家のほうを向いた。家にもガレージにも明かりがついていない。


じいちゃんはもう眠ってしまったのだろうか…。


 何の気なしにガレージのほうに向かうマガネ。しん…と静まり返ったガレージは、整備中のトラックと、その奥にトラクターと牽引車、農機具が並んでいる。マガネは、その奥に視線を走らした。天窓の明かりが差し込む向こう、厚手のシートが被せられた一角を見つめながら、マガネはまだエレメントスクールに入る前、このガレージに来たことを思い出していた。


「すっげー!ビーストマシンだ!これってどうしたの?」

 善五郎がこのガレージで、レストアし、メンテナンスしていたそのマシンは、濃いブルーに彩られたボディで構成された豹のようなビーストマシンだった。


 いとおしそうにそのマシンを見つめると、善五郎がマガネに嬉しそうに言った。

「世界中、旅して探し回っていた、大事なマシンだ。わしが引き取ったんじゃよ」

 マガネは目を丸くして、善五郎に聞いた。

「すげー、俺もいつかこれに乗れる?」

 ただ、単純にビーストライドとビーストマシンにあこがれていたころの幼いころのマガネが善五郎に聞いた。


「パパ!」


 そんな思い出をかき消すように、頭の中でユウミの声が響いた。


「金輪際!あの子を、ビーストマシンに近づけないで」

 大けがをしたとき、ユウミがきつく祖父の善五郎に言った言葉を、おぼろげな意識の奥で聞いていたマガネ。善五郎は申し訳なさそうな顔をして、ただただうつむきうなずいていた。


 星明かりが差し込む中、そんなことを思い出していると、後ろから善五郎の声が聞こえてきた。

「ママに叱られても知らんぞ」

 振り返ると、善五郎を立っていた。優しく微笑むような、いつもの善五郎を見て、マガネはどこか、ほっと安堵するが、すぐに困った表情を浮かべると、うつむいて、つぶやくように善五郎に言った。


「あの時、ここでキツくママに叱られたけど、理由がわからなくて……」


 善五郎は、マガネの気持ちを受け取るようにその言葉を聞くと、

「仕方ないさ、好奇心なんてものは誰も止められない。ママも分かっているはずじゃ」

「一度、レースに出て大怪我した時、俺がビーストマシンに乗ると、不幸になる人がいるんだなと思った。だから、もう、乗らないって決めたんだ」

 思いつめたように言うマガネに歩み寄り、その肩に手を置く。善五郎の手は大きく、機械いじりで荒れてごつごつとしていた。

「さっきの…、聞きしてしまったが、じいちゃんは嬉しいよ。いじめられている友達を助けるような子にマガネが育った事を。ママも、きっとパパも喜んでるはずじゃよ」

「でも、……じいちゃん、俺どうしていいか」

「おまえがどうしたいかじゃ。マガネには後悔の多い人生は歩んでもらいたいくない。…好きにしたらいい」


 善五郎は、マガネの手を取ると、握りしめた手をほどき、ポケットから取り出したものをその手に握らせた。握った手を返してゆっくり開いていくマガネ。

「これは…」


 ゆっくりと手を開いていくと、そこには銀色に光るイグニッションキーがあった。


 驚くマガネ。善五郎はマガネを見つめてうなずくと、

「お前の父、エルバレスのイグニッションキーじゃ。いつか、お前が大人になるとき、渡そうと思ってな。そのマシンはこのチップで起動することが出来る。マガネ、後は自分で決めなさい・・・」

「じいちゃん…」

 マガネが善五郎を見ると、善五郎は踵を返して、ガレージから出ていった。


 マガネが再び自分の手を見る。イグニッションキーが、月明かりに反射してきらりと光る。マガネはイグニッションキーをぐっと握ると、心に決めたかのように顔を上げ、天窓の光がさすシートに手をかけて、それをはぎ取った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ