28.レイスの最後
「友紀様。私がリズとめぐみ様の所に行くよ。友紀様はポールとレイスの所に行ってあげて。」
私は振り向きサランの言葉に頷いた。私はテコテコと駆け足でポールに近づいた。私も見ておいた方がいいのだろう・・・。
「友紀様・・・何故こちらに?」
「・・サランが。」
「そうですか・・・・。」
ポールは1度目を閉じ再び目を開きレイスの方を見る。
レイスの前に並べてある物にギョッとするが黙っておく。
レイスは先ず寂し気な虚ろな濁った目で転がっている頭を撫で確認するとランタンの蒼い炎が少し小さくなった。
だが、もう1人を見てレイスは手足のないその男を抱きかかえ顔を近づけた。
はっと突然男が目を覚ます。レイスの目が大きく開き、濁った灰色と黒の混ざった眼球にその男を写した。
「うぅわぁぁぁぁ。助けてくれぇ。悪気はなかったんだ。」
「悪気なく出来るクズが居ようとは・・。」
ポールが小さく呟いた。
私は何がなんだか分からずレイスやポール、手足が無く叫んでいる兵士をただ眺めているだけだった。
レイスは表情を変えず手足のない兵士の身体に手を置いた。胸の方までゆっくりと手を這わす。
「やめてくれぇぇ。」
その兵士は涙を流し何か懇願しているように見える。だがレイスは胸の上に置いてある手をズブズブとゆっくり胸の中に押し込んでいった。
「がふぅ・・・やめて・・・助け・・・・。」
兵士は口から大量の血を吐き出しながら助けを求めていた。だが胎内でブチブチと音がしドクンドクンと動く心臓をレイスは片手で取り出す・・取り出してもドクンドクンと脈動を続ける心臓。
「あ・・・俺のし・・・ん・・。」
兵士は口をパクパクさせ血の泡を吹きながら息を引き取った。心臓だけはドク・・ン・・ドク・・ンと弱まりだしたがまだ動いている。ポールはジッとその様子を真剣な目で眺めていた。
とうとう心臓の脈動が止まりレイスの持つランタンの蒼い炎が消えた・・・。と同時にランタンがボロボロと崩れ落ちレイスは動かなくなった心臓をコロンと地面に落とす。
レイスは静かに目を閉じ空を見上げ何も持たない両手を掲げた。身体の傷も、無くなっていた乳房も戻って綺麗な身体になっていた。そのままスゥーと空に吸い込まれるように消えて逝った。
「・・・ありがとう・・・・。」
私は澄んだ声を聞き何故か涙がポロポロと溢れてきた。そして・・・なんとなく私は察したのだ。
「友紀様、終わりましたね。お疲れさまでした。」
ポールが少し微笑んで頭を深々と下げた。私はポールが頭を下げたので私もポールの方を向き頭を深々と下げた。
「ははははっ。」
ポールが頭を下げた私を見て笑った。何故だ?
サラン達が残ったアンデットを倒してこちらにやってきた。サランは余裕を見せ手を振っている。
「ポール。上手くやってくれたんだね。助かったよ。」
サランがポールをねぎらった。
「いえ・・・恐縮です。隊長。・・・あの・・カルナック殿には・・」
「わかってるよ。こういうことが起きるのはよくあることだよ。カルナックあんちゃんが責を負う必要もない。ただ友紀様達を巻き込んでる事の方があんちゃんにとって問題なだけ・・。」
みんなで森の外まで歩き今日は馬車に乗って帰るようだ。流石に少し疲れた。
馬車に乗り込んでいるとカルナック兄ちゃんが森の入口の門の前に1人で立ってこちらを見ている。
「カルナック兄ちゃんどーしたの?」
私が声を掛ける。
「・・・申し訳ありませんでした。」
カルナック兄ちゃんは深々と頭を下げた。あー。あの事ね。
「これは仕方ないよ。これからが大事なんだよ。レイスだっけ?あーいうのが出ないようにしていかないとだね。」
ポールとサランもやってきた。
「カルナック殿・・先程は・・その・・すみませんでした。僕も言い過ぎたようです。」
カルナック兄ちゃんは顔を上げポールを見る。
「いや。言い過ぎではない。間違いなく私の責任だ。すまない。迷惑をかけた。」
カルナック兄ちゃんの言葉にポールはバツが悪く頭を掻いた。そこにお母さんがひょっこり顔を出す。
「ところでレイスってなんなのかしら?」
サランがレイスの件について詳しくお母さんや私に話してくれた。
「そお・・・女性が悔いや悲しみでレイスになるのね・・・。本当に迷惑な話ね。」
お母さんのセリフに私やポールがギョッとする。サランは頭を掻いた。
「だってそうでしょう?悔いなんてみんな残すでしょうし、危険も承知で物売りもしていたのでしょう?」
「ですがめぐみ様・・・。」
ポールが食い下がる。が、お母さんは話を続けた。
「ここでは男はみんな悔いを残さず死ねるのかしら?」
ポールは下を向く。
「そうではありませんが・・・。」
「女の人だけがそうなるのよね?だったらやっぱり迷惑な話だわ。故郷の北の村だってその死んだ娘が召喚したアンデットに襲われるかもしれないのよ?それともここはそういうシステムなのかしら?」
「シス・・テム?」
サランは首を傾げる。
「そうだね。そういうシステムで今日の出来事は1つのイベントなんだろうね。」
私は答えた。そういう作り込みがお母さんのよく言う昔のロープレっぽいのだろう。
「カルナック兄ちゃんそういう訳だから。明日朝に塔にきてよ。ちょっとみんなで話し合いをするよ。今日の事は気にしないでねカルナック兄ちゃん。」
カルナック兄ちゃんは涙を溜めて笑顔を作り頷いた。
「はい。明日の早朝にお伺いいたします。」
早朝はちょっと・・・




