第八話
なかなか体力のあがらないマチルダは根気よく基礎体力をつけるため、次の日も放課後トレーニング場をランニングする。初めて走った時と比べると格段に体力が付き、一周走るだけで息が切れていたのが、息が切れなくなっていた。
そうして走っている所へ、ダニエル・シェーファーとイグニースがやってきた。珍しくフランク・ベッカーとブラウは一緒ではないようだった。
マチルダは面倒なことに巻き込まれるのが嫌で、咄嗟に目をそらそうとするが、ダニエルがぐいぐい合わせようとしてきて、マチルダとダニエルの目が合うのだった。ダニエルの目にマチルダを蔑む色は見えない。
とはいえ、色々絡まれているマチルダはダニエルの事が苦手だったので、軽く会釈してさっさと通り過ぎようとするとダニエルが声をかけてきた。
「マチルダ……お前はいつも走っているのか?」
「?? はい……そうですが、……何かご用ですか?」
マチルダが露骨に嫌そうに返事をしたことにダニエルはちょっとショックを受けつつ、言葉を返す。
「いや……用と言うほどではないのだが、毎日放課後に走っているようだが……」
「(なんでそのことを知ってるのかしら? ちょっと気持ち悪いわ……)
はい、皆様と比べて体力がありませんので、少しでも追いつこうと……」
「そうか、一生懸命頑張っているのだな。以前はすまなかった。」
そう言って、ダニエルはマチルダに頭を下げた。頭を下げられたマチルダは焦る。
「シェーファー様、頭をお上げください。気にしておりませんので。」
そう言ってマチルダに愛想笑いではあるのだが微笑まれたダニエルは顔を赤くしていた。
耳まで真っ赤にしたダニエルを見たマチルダは不思議そうにダニエルを見た。
「お風邪をお引きになられでいるのですか? 耳まで赤いです。大丈夫ですか?」
ダニエルはあんなに意地の悪いことを言っていたのに体の心配までしてくれるマチルダの顔を見ると心臓の鼓動が体中に響きそうになった。微笑むマチルダの顔を頭の中から離すことができそうになかった。
その様子にリラとイグニースはニヤニヤと笑っている。
『おぬしの主は恋に落ちおったか?』
『リラ様、そのようです。あのようなダニエル様を見るのは初めてです』
『それにしても、マチルダは全く気付いていないようだ』
『そうですよね。主様がちょっと不憫です』
そう言ってイグニースは出ていない涙をふく素振りを見せた。




