第3話 遊園地②
遊園地 アトラクション前
「入場した時に問題があったけど結構、まともなんだねぇ」
俺達は一通り、遊園地内を見て回ったが元の世界で一般的な遊園地と対して変わらず、そのことで拍子抜けした感じだった。
人口比率が極端にアンバランスな世界だからてっきり、女性向けのアトラクションが多いのかと思ったらそうでもないので大いに助かる。
「それにしても、あそこまで強硬手段に出るのは珍しくなっているのよ~?」
「そうなの?」
俺の言ったことに、反応した彩葉が説明をしてくれた。
それによると近年、技術の進歩によって精子バンクというものが設立して男共の負担が大いに軽減したことや、子供はほしいけど結婚はしたくないという女性が急増しているらしい。
そのため、自分だけに構ってくれない男にお金を渡すぐらいならそのお金で、自分の子供を育てた方が良いという風潮が自然に出てきているらしい。
それでも、国としては結婚のための助成金やそれによって男の子を産んだ場合に補助金を出してまで、男とつながってほしいようだがなかなかうまく行っていないようだ。
「その結果、精子バンクで男の子を産んだ場合でも一定額の補助金は出るらしいんだけどね~」
「…」
一昔前だったら、子供のために仕方なしにつながっていたんだろうけど、今では選択肢が多くなってきているから1つの手段に固執する必要はないと言うことか。
そのため、もう1人の俺の記憶を探ってみると父親の記憶がない代わりに母親が、精子バンクから別々の子種をもらってきたことを姉達と話していたのを思い出した。
(もしかすると母親は手段だったり、面子だったりをこだわらない方なのかもな)
俺がそう思っていると、
「あっ、列が進んだわよ~」
「恵介も早く!」
と、琴音と珠緒に急かされて列を進んでいくとそこにはお化け屋敷という看板があって、いかにもな雰囲気を出していた。
「最初はやっぱりここなんですねぇ・・・」
「恵介君は昔から苦手だよね~」
「昔はよく、途中で泣いちゃったりしてかわいかったわ~」
「涙をこらえている表情とか、姉さん達は楽しんでたよね」
彩葉と琴音は嬉しそうな表情で、そして珠緒は呆れた口調でそう言ったが実は俺、ホラー系はとても苦手なんだ。
井戸から這い出て、テレビ画面にすり寄ってくるようなホラーの間がどうしても苦手で、未だに慣れないから反射的に八岐大蛇が出てしまうから困る。
それでも、お化け屋敷のようなものだったら大丈夫だと思うから、俺は彩葉達と一緒にその建物に入っていった。
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遊園地 カフェテリア
「大したことではなかったでござる」
「泣き顔が見られなくて残念だわ~」
「楽しみの1つだったのに残念です~」
「姉さん達は彼に何を望んでいるの…」
お化け屋敷を見終わったので、近くのカフェテリアで休憩している時に姉さん達が残念そうにそう言ったが、実際に大した怖さではなかったのでスルーしておく。
そんな訳で、次の予定を聞くとこんな返事が返ってきた。
「私達が1人ずつ、恵介君と一緒に1つのアトラクションに乗ろうという企画を思いついたの」
「それって楽しいのか?」
彩葉の企画に、俺が疑問を言うと琴音がこう言った。
「けい君はどうなの~?」
「悪くはないがこれと言って面白いリアクションは取れねーぞ?そういうのあまりやってこなかったし」
やぶさかではない俺に、珠緒がこう押し切った。
「じゃあ、問題ないね!」
「お、おぅ」
勢いよく、姉妹達にそう言われてやや押し切られる形で、彼女達とそれぞれのアトラクションに乗ることになった。
~~~~~~
遊園地 バイキング前
「んで、珠緒が来たかったのはここ、と」
「別にいいでしょ」
俺が驚いていると、珠緒はそっぽを向いているので照れ隠しでそう言う行動を取っていると考えて“いた”。
うん、考えてはいたんだ。事前のくじ引きで、1番最後になった彩葉との会話で俺にとって衝撃的な事実が、明らかになるからその理由は脇に置いていく。
「んじゃまぁ、乗りに行きますかね。珠緒さん?」
「・・・うん!」
俺が彼女を誘うと、珠緒は嬉しそうに付いてきた。
(正直ならいればカワイイ女性なんだがな)
俺はそう思いつつ、彼女と一緒にアトラクションに乗るのだった。
一方、待機している彩葉と琴音はどうしているかというと、
「あっ、こんな洋服もいいわね~」
「こっちのもかわいいのです~」
と、遊園地内にあるショッピングセンターにおいて、遊園地のキャラクターが乗ってある洋服などを見て盛り上がっていた。
「うお~!結構、揺れるね~!」
「アハハハ、たーのしー!」
話は戻って、恵介達が乗っているバイキングはどうなっているかというと、こっちもこっちでかなり盛り上がっていた。
バイキング特有のかなりの揺れに、2人で楽しみながらそれが終わるまで色々と叫んでいた。
「はぁ、楽しかったねぇ」
「あーあ、久しぶりにあんなに叫んだわ」
恵介達がアトラクションを降りて、待ち合わせ場所に向かっていると彩葉達も用事が済んだようで、ちょうど同じタイミングで合流した。
「あら?ちょうど終わったみたいね~」
「そっちも買い物は済ませたのか?」
「勿論です~、ほら~」
俺の質問に対して、琴音が両手に持っている手提げ袋を見せてくれた。
「ほぉ、服があるな」
「かわいいイラストの洋服があったから買っちゃいました~」
「へぇ~」
俺と琴音が盛り上がっていると、彩葉がこう言ってきた。
「2人とも~?お話はその辺りにして、アトラクションに行ってきたらどうかしら~?」
「は~い」
「はいよ」
俺達が反論もせずに彩葉の指示に従ったのは、彼女の笑顔が少し怖くなっていたからだ。
俺自身、彩葉が起こっている場面に遭遇したことはないが、遭遇したことのある人に聞くと修羅のような黒いオーラを纏いつつも笑顔でいたことが恐怖に感じたらしい。
彼女の怒りの対象になった人物は何故か、忽然と姿を消したかと思うと1ヶ月ぐらいしてから廃人のようにやつれた姿で見つかるそうだ。
そのため、姉弟の中では彩葉だけには逆らわない方が良いというのが鉄則のルールになっている。
そんなことがあるので、琴音はボディガードに買ったものを預けると、俺の腕に手を通して引っ張った。
「じゃあ、行きましょうね~。けい君~」
「アッハイ」
「あー!ずるーい!」
それを見た珠緒が怒り出し、彩葉に関しては黒いオーラの圧力が強くなった。
それが怖くて俺は後ろを振り向けないが多分、周りの人からすれば余計に笑顔が怖くなっていると思う。
そんなこんなもありつつ、俺は琴音と次のアトラクションに向かった。
~~~~~~
遊園地 ジェットコースター
「こ、これか!これなのか!?」
「そう言えばけい君、これも苦手ですよね~」
俺達が来たのは、遊園地では定番のジェットコースターだった。
「徐々に登っていくところがイヤなんですが・・・」
「いいじゃない、いいじゃない。そのぐらいだったら大丈夫だって~」
さっきも言ったが妙な間が苦手なのでスピードを得るため、徐々に高いところに登っていく時間がとても苦手である。
それに高所恐怖症のため、自分の身体や能力で付かない高さにまで登っていくのを余計に、苦手にしている。
とは言え、琴音の要望を無下にできないので俺は仕方なしにジェットコースターに乗ることにした。
「ほ~らっ、そんな世紀末みたいな顔をしないの」
「ぜってー、苦手だってことを知っててやってるだろ?」
「それでも付き合ってくれるけい君もけい君よ~?」
互いに冗談を言い合いながら、ジェットコースターの列車に乗ってスリル感を楽しむのだった。
次回投稿は数日、空きます
理由としては、私生活での忙しさでなかなか書けない時間が多くなるからです