第4話 遊園地③
遊園地 カフェテリア
「はぁ、はぁ・・・もうだめぽぉ」
「あぁん、けい君の疲れ果てた顔もいいのです~」
「確かにかわいいよね~」
「姉さん達って本当に悪趣味だよねぇ」
ジェットコースターでフラフラになっている俺を見て、彩葉と琴音が嬉しそうにはしゃいでいるのを珠緒が呆れた表情で見ている。
そんな訳で、俺の体力が戻るのを兼ねて他のアトラクションを回って行き、最後にたどり着いたのが観覧車だった。
「これを彩葉姉と2人で行くのか?」
「勿論よ~、私はこう言うのをデートで行きたかったのよね~」
「デートとは違うと思うんだけどねぇ」
子供のようにはしゃぐ彩葉に対して、俺がツッコミを入れると彩葉が怒りながらこう言ってきた。
「なによ~、私と一緒に行くのがそんなにイヤなの~?」
「そういう訳じゃあ、ないんですがね」
俺はそう返しつつ、時計を見ると時刻は夕暮れ時で観覧車に並んでいる人は少なかったために比較的、楽に乗れることができた。
ゴンドラの扉が閉まり、観覧車がゆっくりと回るのに合わせてゴンドラも徐々に高度を上げていく。
「ねぇ、恵介君。ちょっといいかしら?」
「ん?」
そんな中、彩葉が急に神妙な顔になって俺にこう聞いてきた。
「婚姻法の改定が昨日、行われたのを知ってる?」
「・・・確か、三親等内での婚姻届の提出可能になった奴だよな?」
「えぇ・・・」
この世界の男女比は1:30で圧倒的に女性が多いので、男が複数の女性を娶る重婚が世界中で盛んに行われていたが、日本では血のつながった家族内での結婚は法的に無理だとされていた。
しかし、それが昨日の法律の改定で状況は大幅に変わった。
それは、血のつながった親以外の兄弟姉妹、叔父や叔母、姪や甥との結婚が可能になってしまったと言うことだ。
この改訂には、男性議員からの猛烈な反対があったので議論が続けられていたが結局、多数決での数の力には敵わずに賛成多数で可決されてしまった。
これによって、男である俺にとっては彩葉達とも結婚が可能になる訳だが当の本人としては全く嬉しくない状況だ。
(だって、血のつながっている姉妹との結婚だぜ?元いた世界の価値観でこの世界を見ている俺にどうしろって言うんだ)
親が番である相手との子供を設ける時には、自分の遺伝子の半分をコピーして子供に受け継がせるのだが子供を産む度に別の番と合体して産むと、子供同士では4分の1しか血がつながっていない。
俺と彩葉達との関係は、従姉妹のようなもんだがそれでも夜の合体は本能としては避けようとしているし、組織としても好ましくない。
暴力団というのは、組同士で敵対している場合が多いが法的な縛りや自分に利益がある取引なら積極的に乗っていくので、互いで潰し合うような行為にまで発達する事案は珍しくなっている。
しかし、組織を引っ張っていくリーダーやその家族の性癖や恥ずかしいネタがあれば、それを笑い物にする奴も出てくるのでそれをやめさせようとしていざこざが増えてしまう。
そうすれば、事件が発生して警察にお世話になる構成員も出てくるから近親婚とはなるべく避けたい。
「それでね~、恵介君」
「おぅ」
「私~、恵介君のことが好きになっちゃったみたい」
「・・・はぁ?」
そこまで思って、彩葉にそんなことを言われたので頭が真っ白になって思わず、聞き返してしまった。
「だ、だからね~?私は君のことが――――」
「いやいやいやいや、おかしいでしょ。普通は血のつながった兄弟姉妹でそういった感情は出ないはずだよ?」
素っ頓狂な声で、聞き返した俺に対して焦った彩葉がもう一度、言おうとしたところで立ち直った俺がそんなことを言う。
すると、彩葉は好きになった理由を言い始めた。
「だって、事故があった後の恵介君は人が変わったように優しくしてくれたんだよ~?それまで、私達のことを虫を見たかのような表情で見てたのに、今では優しい笑顔も見せてくれるとかどう考えたって惚れちゃうよ~」
「・・・えぇ」
彩葉の、俺が好きになった理由に俺はドン引きの態度を隠せなし、隠そうとも思わないが事故の前後で人格は完全に入れ替わったがそれで恋心を抱くとか、どれだけの性格の悪さだったんだよ。
確かに、過去の記憶を辿ってみるときつく当たっていたのは事実だがそこまでひどかったのか、当時の俺の態度は。
まぁ、過去にあった出来事に関してはどうしようもないから放置しておくとして、どうやって現状を打破するかだ。
今、俺の取るべき行動の選択肢は3つ。
1つ目は、彼女の好意を受け入れて表立って付き合うことにする。
2つ目は、彼女の好意を断って現状の関係を維持する。
3つ目は、彼女の好意を受け取りはするがしばらくは隠しておく。
(2つ目の選択肢が物凄い魅力的だ!寧ろ、それを取りたい!)
でも、それを取ると琴音と珠緒達から総スカンをもらうのは必至だし、笑いものになるのは御免被りたいから俺は、仕方なしに3つ目の選択肢を選んだ。
現に彩葉は、今にも泣きそうだしな。
「はぁ、わぁ~ったよ」
「え?」
「表向きには今まで通りで頼むよ」
「それって・・・」
俺がそう言うと、彼女の表情は徐々に明るくなった。
「彩葉姉の好意、受け入れるよ」
「やったー!」
そして、俺が答えを言うと彩葉は嬉しそうに叫んで俺に抱きついたが、俺は別のことを考えていた。
この世界の人口比がおかしいのは散々、言ってきたがそのせいで近親相姦なるものが古代からあったようで、主に母親が自分の子供やその友達の筆おろしをしたことなどが多数の文献から確認できる。
そのため、彼女の話や悩んでいるうちに本能的な嫌悪感はゼロではないが薄れているので、特に否定する要素がない。
とは言え、彼女が俺に好意を寄せてくれたのはありがたい話だ。
何故なら、八岐大蛇の能力の反動は子々孫々に伝わるだけではなく、その家の長女が男子を産んだ時点で能力の保有者の残っている寿命が8年と決まってしまう。
事故死や自殺ならともかく、過剰な能力は時には暴走を招く可能性もあるので、その予防策として組み込まれた可能性が高い。
その結果、もしも彩葉が俺のことを嫌っていて他の男と合体して子供を産んだ時、男子として生まれた時点で俺の寿命は残り8年となる。
現在、俺は15歳だから彩葉が男子をここで産んだら23歳までの命となる。
せっかく、転生をしたのに8年の寿命とか本気で笑えないから彩葉に彼氏がいなくて助かった思いだ。
今、思い返してみると琴音も珠緒もこのために動きにくい大正ロマンや着物姿で遊園地に来たのだろう。着物姿は、今も昔も俺の好きな衣装だからな。
そう思っていると、彩葉が思い出したかのようにこう言ってきた。
「あっ、そう言えば~」
「ほい?」
「琴音ちゃんと珠緒ちゃんも恵介君のことが好きみたいよ~」
「ファッ!?」
その爆弾発言は、俺の予想だにしなかった発言だったので激しく動揺した。
「え、えええ、ちょっ、ええええ」
「ふふふ、今まで気付かなかった?」
「全く気付いてなかったでござる・・・」
激しく動揺している俺を見て、彩葉は面白そうに笑っていたが観覧車のゴンドラの扉が開く直前に彼女はニコニコしながらこう言った。
「今度、機会があったら聞いてみたら?そしたら素直に答えてくれるよ?」
そして、ゴンドラの扉が開いて一足先に彼女が出ていった。
俺もやや遅れて、ゴンドラから出たが呆然としながらこう呟いた。
「俺は大変な過ちを犯してしまったかもしれない・・・」
俺のぼやつきは、夕暮れの風の中に消えていった。
遊園地回はこれで終わりです
次回からは、黒澤家での日常を書いていこうと思います




