第10話 体育祭 後編
借り物競走が終わった後は、後半戦となって椅子取りゲームが始まるのだが前半戦と後半戦の間の時間で、ちょっとした事件が起きた。
「あら~、けい君。元気にしてた~?」
「…何でここまで来るのさ」
「そりゃ~、けい君がちゃんとやれているかな~と思ってきてみたんだけど~?」
「それについては別に良いんだけど、とにかく近い!近いから離れて!」
「えぇ~?どうして~?」
「俺が恥ずかしいの!てか、くっつくなぁぁあ!」
体育祭で、俺の様子を見に来た彩葉が休んでいる俺のところにまでやって来て、自身の体を俺の体に密着させてきたのだ。
そのため、周囲にいたクラスメイトやその他のメンバーが、その様子を端末の写真機能を使って写メを撮りまくり、なのは達が自分の胸元に手を当てて悔しがっていた。
彩葉が俺を散々、からかってから帰って行った後に皆から質問されて休憩時間が終了した。
『さぁて!後半戦の最初は椅子取りゲームです!ルールは―――』
半ば、恥ずかしい思いをして休憩前よりも疲れたような気がするが、後半戦で初めてのゲームが椅子取りゲームと言うのは勝てる気がしない。
前世ではこういったものが苦手で、序盤で負けていたりしていた。
そのため、苦手意識があるのだが無理そうだったら速攻で負けるという手もある。
そうこうしている内に、椅子取りゲームのセッティングが終わったようなので、俺は手頃な椅子の近くに立つと珠緒を初めとする見知った女子生徒達が、俺の近くに立ってきた。
理由を聞くと、彩葉とのやり取りに嫉妬したとしか、思えない内容が聞けたのでそのままにしておこう。ツッコミを入れると面倒になるしな。
そう思っていると、ゲーム開始の合図と共に軽快な音楽が流れてきたので、全生徒が歩き出すのだがいつ止まるかわからないから俺としては苦手だ。
そして、神経を尖らせていると何の予告もなしに音楽が止まったため、俺は急いで近くの席に座った。
すると、周囲の生徒達はまだ動いてすらいなかったのでまた、能力を使っちまったなぁと思っていると、時間の流れが加速して生徒達も急いで座り始めた。
その結果、最後まで椅子に座る度に能力が無意識のうちに発動してしまったため、俺にとっては勝負にすらなりえなかった。
その後、ハチマキ取りや玉入れ、玉転がしなどがあったが俺が1番燃えたのは棒倒しだった。
何せ、俺のチームが攻撃側だったので棒を倒す側だった。
とは言っても、乱闘必至だったので立体機動装置は外して勝負に挑んだけど、チームで勝利するというのは一人で勝つよりも別の喜びがあって良かったと思う。
そんな訳で、最終競技であるクラス対抗リレーだ。
これは、クラスごとで走る人を決めるのでクラスにいる男達は半強制的に、リレーに参加することになってしまった。
理由は、その方が他の女子に喜ばれるから。
走る人は4人で俺のクラスの場合、雄一郎がトップランナーで俺がアンカーを任された。
そのため、立体機動装置を再びつけて走ることにした。
しかし、ブレードを出しながらの走りは危ないと言うことで、仕舞ったままで走ることになった。その判定に、生徒達からはブーイングが出たようだけど。
そんなことがありつつも、クラス対抗リレーが始まった。
うちのクラスは、雄一郎の頑張りで1位を序盤で獲得したがその後のクラスメイトが、普通だったので混戦状態になった。
そして、クラスのアンカーがスタートラインで待機していると、俺の他に知らない男子が2人と珠緒が立っていた。
「あれー?珠緒さんじゃあないですか、どうしたんですかー?」
「………」
「アンカー全員、男子だというのに君だけが女の子というのもおかしな話だよねぇ」
「………」
「それともあれか?俺と一緒に走りたいという姉さんのがんブフォ!?」
「うっさい!クソ弟!」
「だ、だからって全力で殴らなくても…」
「それはあんたの自業自得!ほら、とっとと立ち上がって!」
偶然にも、俺の隣に立っていた珠緒に話しかけていたら彼女から盛大に腹パンを食らって崩れかけたが、アンカーにバトンを渡そうと走ってきたランナーが近くまで来ていたので、俺は崩れかけた状態でバトンを受け取った。
タイム差はほとんどなく、珠緒とほぼ同時にバトンを受け取ったのでそこからどうやって、1位を取るかということに意識を向けた。
幸い、珠緒の腹パンはそれほどの威力がなかったので走ることに問題ないが、その行為のせいで彼女に対する批判が出ている。
これは走った後で、ちゃんとフォローを入れておこう。
そう思っていると、クラス対抗リレーは珠緒がいるクラスが1位になった。
そのため、珠緒に対してのブーイングが発生したが、俺は手を上げてそれを制止してこう言った。
「皆さん、この結果は俺が彼女を勝たせてあげたいという気持ちで腹パンをもらいました!ですので、そう熱くならずに彼女を祝ってあげて下さい!」
俺がそう言うと、多くの生徒からそうだったのかという声が上がって、彼女への非難の声は消えていった。
これでいいかな、と思って珠緒の方を振り向くと彼女がそっぽを向いたが、耳が赤くなっているので大丈夫だろう。
こうして、楽しくも大変だった体育祭は終了して帰る準備をしていると、執行委員会からアナウンスがあった。
『えー…ただいまより、全生徒による恵介君が能力として持っている蛇との触れあい大会を行おうと思います!』
「……え?」
執行委員会の説明によると、俺の能力に関しての情報はかなりの精度で生徒だけではなく、社会全体に広まっているのでいつでも能力を展開しても良いとのことだった。
しかも、俺や俺の家族に対しての風評被害を垂れ流したマスコミの人達は全員、謎の失踪を遂げていて悪いようにはなっていなかった。
と言うことは、俺の家族がヤクザもんだと言うことが社会全体に知れ渡っている訳で、今までの俺の苦労は何だったんだと言いたくなってしまった。
さらに、俺が所有している能力である蛇の触れあいとか、完全に時期を狙っていただろうと感じ取ってしまうが政治家や企業人からすれば、俺の葛藤は些細なことかもしれない。
という訳で、やや脱力した状態での能力解放。
蛇の胴体や尻尾は腰から出てくるので、立体機動装置を外しての能力解放が多くの生徒が触れるように、太さが1メートルぐらいのでかい蛇の頭の方と尻尾の方の8本ずつを出した。
能力を解放している間、人が触りに来るのでそう簡単には動かせないが感覚の感度をかなり落としているのでダメージは出ないし、動かすのは頭の部分や尻尾の先端部分だ。
しかし、全生徒が触れる長さがあるので軽く10分ぐらいは触られた。本物の蛇みたいだしな。
そんなことがありつつも、体育祭は終了した。
主人公の努力は犠牲になったのだ。権力者の犠牲にな。
と言うことで、主人公の能力がある程度の自由を得ました。
これもSNSの発達で、情報伝達が早くなった結果です。
そして、年内最後の投稿となりそうですので、次回の投稿は来年の予定です。
皆さん、良いお年をー!




