第6話 喧嘩の対価
喧嘩があった日から数日後 教室
「高崎君、ヤクザとつるんでいたそうよ」
「え!?私、彼のファンだったんだけど!」
「しかも口では言えないやり方で、か弱い女の子からかなりのお金を巻き上げていた様だよ?」
「じゃあ、誠君のファンをやめるわ」
男というのはこの世界では守られる存在であり、例え犯罪者であろうとも国家は種馬の確保を目的としてどの国でもある程度の保証している上、社会的にもそれを容認する流れは近代から現代に懸けてほとんど変わっていない。
しかし、何かしらの理由で子供を作る上で欠かせない子種が作れず、仕事を持っていない男はホームレスと同等の扱いになる。
その理由は、先天的な病気や遺伝子的な欠陥だったり、後天的には事故だったりするのだが高崎達の場合は後天的な事故でそうなってしまった。
本来であれば、喧嘩での金的潰しは罰則に値するが高崎達がそれまでに犯してきた罪の方が圧倒的に多い上、学校や俺との喧嘩に居合わせた女学生達の証言によって俺の正当防衛は認められた。
その反面、高崎達は子供が作れない身体になってしまったため、男性に対して支払われる支援金は6月いっぱいで全面的に停止。
その他の優遇されていた全ての支援も、同じく6月で止められるという。
これらの法令はあくまで、子種を作れる身体を持っている男性に与えられている優遇措置であり、絶対的な支援ではないので仕事に就いていなければニートの類いになってしまう。その一方で、国民としての保証は最低限ではあるが確保されている。
そのため、形は何であっても仕事にありついてお金をもらえるのであれば、数自体は多くないが結婚すらもできる。
とは言え、ちゃんとした手順でお金をもらっていない彼らにとって1番、つらいのは社会的な抹殺だ。
それまで築き上げてきた地位が全部、崩壊した上に尾びれ背びれがついた噂は彼らや彼らの家族を苦しめていき、冷たい視線へと堕としていく。
これが今回の高崎達に対しての策であり、お金を巻き上げられている女性達を少しでも救い出すための方法だった。
今回の場合、高崎達の行動がわかりやすかった上に事情を知っている人が組織のトップにいたので行動しやすかったが、普段はこうもうまく行かない。
何故なら、こう言った出来事は如何にしてボロや尻尾を出さずに、相手を貶めるかが重要になるからだ。
これは囲碁や将棋の世界でも言えるが、自分が勝つためには自分のペースを崩さず、手順通りに指せるかが重要になるのと同じだ。
その結果、高崎誠は学校一の人気者から学校一の嫌われ者へと様変わりした。
そして本人はと言うと、俺との喧嘩で全治1ヶ月の大けがをした上に、2週間は入院することになったらしい。
彼の母親は、俺に対して裁判を起こす構えでいたが当の本人が犯した犯罪が多すぎたため、それらの対応に追われている。
これが、俺と高崎との喧嘩の結末だった。
~~~~~~
生徒会室
「済まねぇな、この数日間の噂の流布について」
「全くです。あなたからの提言を聞いた時には耳を疑いました」
俺が今、いるのは生徒会が使っている教室で俺の他には生徒会長がいて、面会に使う椅子でお互いが向かい合って話している状態だ。
そこで話しているのは、高崎誠の罪の暴露についてだ。
この事については、男である俺がいくら喋ろうとも女子学生達にとっては正当防衛をしたついで、としか受け止められないので生徒会の方から色々と喋ってもらったのだ。
いくら人気とは言え、保護される立場である男が1人で頑張って喋るよりも、少なくとも学校内では権威のある生徒会が動いた方が大多数の生徒は信じやすい。
そして何より、学校内でも彼のカツアゲの被害に遭っている生徒がいるため、生徒会から流れた噂が余計に広まることを助長させた。
せめて学内の生徒に手を出さなければ、ここまでひどいことにはならなかっただろうに、と思うぐらいに色んな噂が流れているので、俺が張本人だったら居ても立ってもいられないだろう。
「結果的に今回の件で貸しが1つ、できた訳だが・・・」
「それについては既に決めました」
「ほぅ・・・?」
とまぁ、生徒会が自然な流れで噂を流布してくれたことは良いのだがその反面、無理を言って流してもらったので貸し借りが発生してしまった。
そのため、今度は俺が生徒会長の頼みを聞かないといけなくなったので、生徒会長の頼みを聞くと意外な頼みが来た。
「家庭訪問ですか?」
「えぇ、あなたが私の家に単独で来るだけで良いの」
「それにしても何でそんなことを・・・」
俺がさらに話を聞くと、衝撃的な返事が返ってきた。
「私の母があなたに直接、お会いしたいと言っています。武蔵黒澤組、八岐大蛇の能力を所有している黒澤恵介さん」
「!?」
~~~~~~
自宅 自室
『何故、そのことを?』
『尾頭祐子さんと会話を見てから疑問に思い、授業参観の時に確信しました』
『君の親は何者だ?』
『私の母は政治家であり、武蔵黒澤組と深いつながりを持っている人物です』
『では何故、お偉いさんが裏稼業の一家である俺に会いたいと?』
『いずれは私をあなたに婚姻させるつもりだそうです』
『…』
「参ったな…」
俺は自室のベットに寝っ転がり、生徒会長が言ったことを思い返していた。
正直な話、こう言った親が決めた婚約者と結婚するなんて貴族同士か、特殊な状況でしか発生しないと思っていたから寝耳に水だった。
そのため、彩葉に聞いてみると
『恵介君と婚姻させる話は今の所、入ってきてないわね~』
と言う返事をもらったが、裏を返せば家を存続させるために俺が政略結婚に出される可能性があるのだ。
例えば、組織的に壊滅的なダメージを受けて存続が不可能になった場合、黒澤家の長女である彩葉と共に俺もどこかの養子に出される場合も起こりえる。
(とは言え、実際に会ってみないとどうしようもないから考えても仕方ない、か)
俺はそう思いつつ、日々の日課をこなすためにベットから起き上がった。




