第4話 お披露目
車内
「・・・それで俺も一緒に行くことになった訳ね」
「迷惑だったか?」
「いいや、全然」
おれは母さんの手伝いとして、とある会合に向かうために車に乗っていた。
普通の会合だったら俺の出る番はなく、構成員として働いている彩葉や琴音を同行させるのだが今回の会合綾や特別な会合である。
それは、武蔵黒澤組の全組長の顔合わせだ。
本来だったら、12月や8月に行うべき行事を5月中旬の休日に行うのには理由があって、引退した構成員や新しく入ってきた構成員が仕事に慣れてきた時期を見計らってやるらしい。
一般人が、ヤクザの構成員になる時期はバラバラではあるが、一定の周期があって4月と9月が多いという話だ。
理由は会社を退社したり、学校にいられなくなって退学したりと様々だが実際の構成員になると、かなりきつい生活を送らないと行けないから躊躇する人が多いし、準構成員として生活を送っている人も多数いる。
その中でも、構成員で下っ端でもある部屋住みから成り上がって4次団体や5次団体の組長になる人もいる。
何が言いたいかというと、光があれば闇があるように仕方なしに裏稼業に手を染める人がヤクザに関係なく、多くいると言うことだ。
そんな人達からお金を巻き上げている時点で例え、俺達が直接関わっていなくとも警察などから目をつけられているのは間違いない。
そんな中での顔合わせに出席すれば、否応なしに俺も目をつけられることになり、学園の生徒から告白されても断るしかなくなる。
誰だって、ヤクザの関係者にはなりたくはないだろうと思いつつ、車は目的地に向かうのだった。
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会合場 待合室
「どうだろうか・・・似合ってるかな?」
「あぁ、充分さ」
待合室において、着慣れない和服に戸惑う俺に対して母さんは嬉しそうに頷きながらそう言ってくれた。
俺がここに呼ばれた理由は、八岐大蛇の能力を所持してから15年になるのと同時に、無事に高校生になったことをお披露目する必要があるという。
先代の能力所有者は今から30年近く前、平成になってから1年ぐらいで亡くなってしまったらしい。
死因は、姫路山本組との戦いによって命を落としたからだ。
当時は今と違って姫路山本組もかなり力を持っていたため、流血沙汰になることが多かった上に先代は母さんの兄さんだったらしい。
母さんの兄さん、俺にとっての叔父は武蔵黒澤組の中でも随一の武闘派で、男なのに戦いの最前線によく出ていたとのことだった。
その結果、命を落としたのだが当時の黒澤家には男がいなかったため、長女である母さんが精子バンクを使って子供を設けていくのだがなかなか、男の子が生まれなかった。
当時、母さんはまだ20代だったので子供は産めたのだが、3連続で女の子だったのでかなり焦っていて俺が生まれた時にはかなり喜んだらしい。
その後はご存じのように、多種多様な教育を受けたために過度なストレスでそれまでの俺の人格が自殺を図り、意図せずに同時刻に事故死した俺と入れ替わったと言う訳さ。
(入れ替わる前の奴の意識があの後にどうなったかなんてどうでも良い。今は学園生活と仕事をどうやって両立させるかだ)
授業参観という大きな山を越え、仕事もクラスも安定しているが今も綱渡りをしていることには変わりない。
家の事情をクラスメイトに知られずに、普通の学園生活を送るという綱渡りをしていなければ余裕を持って送れるのだが、そうも言ってられないのが現状だ。
何故なら、今年の9月からマフィアのご令嬢が2人も留学生としてくることが決まったからだ。
マフィアは普通、目的のためなら手段を選ばないような奴らのでこっちとしては気の抜けない組織であり、しかもそのご令嬢ともなれば学園内で血みどろの戦いでも起こしそうだから困る。
それはともかく
今回の会合の顔は能力持ちの俺であり、会合に合わせて母さんや彩葉達からこう言われている。
『普段通りに行動しろ』
異口同音だったが彼女達からそう言われているため、普通に行動するつもりだがおっかないお姉さんやお兄さんがいたらどうしよう、と勝手に考えながら時間になるまで待っていた。
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会合場 大広間
「組長の茜様とそのご子息である恵介様がご入室されます」
案内の人がそう言うと襖の扉がスライドして開き、母さんに続いてやや緊張しながら大広間に入ると数十人のお姉さん達が畳に座っていた。
(うわ~、見た目は普通の社会人という風な女性もいるけど完全にヤクザさんという雰囲気を出している人もいる、が母さんほどじゃあねぇな)
長らく裏稼業に従事しているせいか、柄が悪い女性の比率が多いのでやや緊張するが、母さんほどではないのでやや拍子抜けだった。
母さんの身体にはいくつかの火傷の跡があり、雰囲気も怖いお姉さんなのだが俺や彩葉達にとっては、今まで女手1つで育ててくれたお母さんというイメージの方が大きい。
そのため、この会合できているお姉さん達の雰囲気は普通の人ならどう猛な犬として感じるのだが、俺にとってはチワワみたいな小型犬が吠えているようにしか感じない。
とは言え、この場に来るはずもない男が突然、入ってきたので彼女達の視線を一手に集めてしまった。
会場がざわつく中、母さんの後に続いて静かに歩く俺は母さんの左隣に座った。
そして、新年度の顔合わせとそれぞれの組織の報告が終わった後、軽いパーティーとして無礼講の宴会になった。




