第四章 旅の始まり
翌日、俺たちは冒険者ギルドに到着した。俺はすぐに受付へ向かうと、二十代半ばくらいに見える女性が待っていた。
「冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「詳しくは話せません。これを読んでいただけますか?」
俺は、世界の声からクエストを受けたことを説明した手紙を受付嬢に渡した。
「手紙ですか? では、拝見しますね……」
彼女は静かに手紙を読んだ。
「あっ……申し訳ありません。こちらへどうぞ。ギルドマスターが皆さんにお会いしたいそうです。」
手紙を読み終えると、受付嬢は俺たちを三階にあるギルドマスターの執務室へ案内した。どうやら、ギルドマスターも世界の声を聞き、俺たちがここへ来ることを知っていたようだ。
コンコン。
「ギルドマスター、メイネです。二日前にお話しされていた件です。」
「よし、入ってくれ。」
部屋の中から声が聞こえ、俺たちは中へ入った。
大きな机の向こうに座っていたのはギルドマスターだった。三本の腕、サソリのような尻尾、そして獅子の顔を持ち、重厚な鎧を身にまとっている。種族はキマイラだった。
セラとフィナはすぐに俺の後ろへ隠れた。
どうやら、ギルドマスターの見た目に圧倒されたようだ。
「さあ、みんな座ってくれ。」
「おや? レンとリオルもいるのか。」
「タロス、お久しぶりです。」
「ああ、最後に会ったのは七十年前だったかな。ドラコリンの難易度3地域を一緒に探索した時以来だ。長い冒険ではなかったが、印象に残る旅だった。」
どうやら、この二人は昔、短い間だけ同じ冒険者パーティーに所属していたようだ。
「タロスギルドマスター、いつも冒険者ギルドの運営でシズカワ家を支えてくださり、ありがとうございます。」
「そんなに堅苦しくするな、レン。お前が赤ん坊の頃から知っているんだからな。」
そして俺は自己紹介をした。
「初めまして、タロスギルドマスター。俺はヴェクソス・アーデント。このパーティーのリーダーです。さっそく本題に入ってもよろしいでしょうか?」
「ほう……君がリーダーか。ずいぶん率直な性格なんだな。」
「メイネ、それをヴェクソスに渡してくれ。」
受付嬢は俺に一通の手紙を渡した。
俺がそれを開いた瞬間、再びクエスト画面が目の前に現れた。
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クエスト名:最初の啓示 ― 第二部「古代の森のモンスター騒動」
クエスト発行者:???
クエスト目標:エルダーグレンで発生しているモンスター騒動を調査せよ。
クエストレベル:4
クエスト期限:30日
クエスト報酬:???
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今回は、情報がほとんどなかった。
分かっているのは、エルダーグレンの古代の森でモンスターによる騒動が起きていること、そして調査期限が三十日であることだけだった。
調査クエストなので、一日で終わるかもしれないし、期限いっぱいまでかかるかもしれない。
「ん? どうしてみんな空中を見つめているんだ?」
「何か画面でも見えているのか?」
俺たちに見えているものが見えないタロスは、不思議そうな表情を浮かべた。
「全部説明します。」
「ギルドマスターも世界の声を聞いたのなら、知る資格があると思います。」
俺は、最初のクエストやグランドストーリーⅠのことを含め、すべてをタロスギルドマスターとメイネに説明した。
「なるほど……」
「そういうことだったのか。」
「ギルドマスター……」
メイネは真剣な表情でギルドマスターを見つめた。
「これは、先代ギルドマスターが伝説の勇者について話していた内容と同じです。」
つまり、昔の伝説の勇者も世界の声からクエストを受けていたということか。俺はクエストの詳細を書き写した紙をギルドマスターに手渡した。
「『エルダーグレンのモンスター騒動』か……」
「……しかも期限は三十日。」
彼はため息をついた。
「まさか世界の声が、私のような年老いた冒険者ではなく、数日前にクラスを得たばかりの子どもたちを選ぶとはな……」
「第二世代には、あまりにも過酷だ。」
「俺も同感です。」
私はギルドマスターに同意した。
「僕たちは、なぜ自分たちが選ばれたのか、まだ分かっていません……」
「……それに、なぜ他の大陸ではなく、ヴァレシア大陸へ向かうことになったのかも分かりません。」
タロスはしばらく黙っていた。
「リオルが君たちと一緒でよかった。」
「彼は王国の近衛兵だが、その前は冒険者だった。」
「ベテランというほどではないが、君たちを導くには十分な経験がある。」
彼は突然、言葉を止めた。
「……待て。」
「リオル……」
「君は第一世代だったな。」
「難易度3地域だけでも、当時の私たちのほとんどには手が届かなかった。」
「それなのに、なぜ《世界の声》は第一世代である君をこのクエストに選んだんだ?」
「そのことですが……」
リオルは僕を見た。
「ヴェクソス。」
「彼に話すなら、今がその時だと思う。」
僕はうなずいた。
「レン、説明してくれるか?」
「冒険者ギルドの仕組みには、お前のほうが詳しいから。」
レンはうなずいた。
「ギルドマスター……」
「俺たちは、第一世代のレベル上限を解除する方法を見つけました。」
タロスは信じられないという表情でレンを見つめた。
「……今、何と言った?」
レンは、第一世代にかけられたレベル制限の呪い、その解決方法を発見した経緯、それを公表する危険性、そして昨日みんなで話し合った計画について、慎重に説明した。
「……なるほど。」
タロスはゆっくりと椅子にもたれかかった。
「それで説明がつく。」
「昔、多くの第一世代の者たちは、何か起こることを期待して再び《大鑑定ホール》へ戻り、もう一度水晶球に触れた。」
「だが、何も起こらなかった。」
「第二世代が始まったのは、わずか二年前だ。」
「だから第一世代は、もう一度水晶球に触れてみようとは考えなかった。そんなことをしても無意味だと信じていたからだ。」
彼はリオルのほうを見た。
「だが、リオル……」
「それで君のクラスも変更できるのか?」
「いいえ。」
「昨夜、試しました。」
「画面に表示されたのは、今の自分のクラスだけでした。」
そのことは、昨夜すでにリオルが《ワールドリンク》を通じて僕たち全員に共有していた情報だった。
「つまり……」
「クラスを変更することはできない、ということか。」
僕は口を開いた。
「この情報を秘密にしておく責任は、冒険者ギルドにお任せしたいと思います。」
「もちろんだ。」
「メイネ。」
「すぐに全支部のギルドマスターへ連絡しろ。」
「それと、現在外大陸で遠征を率いている第一世代の最高ランクSSS冒険者三名も招集してくれ。」
「はい、ギルドマスター。お任せください。」
「私の『伝令使』のクラスなら、すぐに知らせを届けられます。」
タロスは再び僕のほうを向いた。
「ヴェクソス。」
「出発はいつの予定だ?」
「冒険者ギルドから何か支援は必要か?」
僕は首を横に振った。
「いいえ。」
「このパーティは、自分たちだけで物事を管理できるようになりたいと思っています。」
「難易度3地域から先は、誰も助けてくれません。」
「結局のところ、頼れるのは自分たちのパーティだけです。」
「だから、そのことを最初から学んでおきたいんです。」
「それに、出発は明日の予定です。」
タロスは微笑んだ。
「分かった。」
「では、君たち全員の幸運を祈っている。」
「ありがとうございます、ギルドマスター。」
「これから旅の準備を始めます。」
僕が扉へ向かったとき、タロスが僕を呼び止めた。
「待ってくれ、ヴェクソス。」
僕は振り返った。
「何かありましたか、ギルドマスター?」
彼は少しだけ頭を下げた。
「君の父上のことは、すまなかった。」
「あの時、君の父上の難易度3地域への遠征を承認したのは私だった。」
「彼のパーティはランクSSだった。」
「私は、本当に彼らなら準備ができていると信じていた。」
そうか……
父さんのパーティを難易度3地域へ送り出したのは、ギルドマスター・タロスだったのか。
僕が父と同じ姓だったから、ギルドマスターは僕が父の息子だと気づいたのだろう。
僕は優しく微笑んだ。
「大丈夫です、ギルドマスター。」
「冒険者になるということは、命を落とす危険を受け入れるということです。」
「危険の大きい職業ですが……」
「……その分、大きな報酬もあります。」
タロスは静かにうなずいた。
別れの挨拶を済ませた後、僕たちは執務室を出て、一階へ向かった。
フィナ、セラ、そして僕は正式に冒険者登録を済ませた。
この世界では、冒険者ランクはGからSSSまで存在する。
「パーティ名は何にしますか?」
登録書類を書きながら、メイネが尋ねた。
「セプタリス。」
「七つの星……」
「とても素敵な名前ですね。」
冒険者登録とパーティ登録の両方を終えた後、僕はみんなのほうを向いた。
「準備が終わったら、明日の朝にまたここで集合しよう。」
「それから、家族が遠くに住んでいる人は、手紙を送るのを忘れないでね。」
みんなが帰り始めたその時、僕はセラを呼び止めた。
「セラ。」
「な、何ですか、ヴェクソス?」
「装備を買いに行こう。」
「昨夜、《ワールドリンク》でレンとリオルに相談して、みんなでお金を出し合って君の装備を買うことにしたんだ。」
「だ、ダメです……そんなもの、受け取れません。」
「大丈夫だよ、セラ。」
「君の家が裕福じゃないことは分かってる。」
「それに、今の状況を見る限り、お金もほとんどなくて、宿に泊まれるのも明日までなんじゃない?」
「は、はい……どうして分かったんですか?」
「気にしなくていいよ。」
「これからは僕たちはパーティなんだ。」
「君にも強くなってもらわないと困るから、これはパーティの資金だと思って。」
「僕たちはみんな、もう装備を持っている。」
「持っていないのは君だけなんだ。」
「君だけ置いていきたくない。」
エリラは優しくセラを抱きしめた。
「受け取って、セラ。」
「あなたのためでもあるし……」
「……私たちのためでもあるの。」
「わ、分かりました……」
「受け取ります。」
エリラになだめられた後、セラはようやく装備を買うためのお金を受け取った。
その時、僕はあることを思い出した。
「待って、フィナ。」
「クラスを間違えて選んじゃったんだよね?」
「装備は大丈夫なの?」
「うん。」
「大丈夫だよ。」
「もともとはメイジのクラスになるつもりだったから。」
「メイジとスピリチュアリストは、使う装備がほとんど同じなの。」
「アクセサリーだけ違うから、鑑定の儀式が終わった後にもう買ってきたよ。」
「それなら良かった。」
「じゃあ、セラ。買い物に行こう。」
「ふ、二人だけですか?」
セラはどもりながら慌てた様子で言った。
「うん。」
「どうしたの?」
「僕と一緒じゃ嫌だった?」
「メイジが使う装備なら分かるよ。」
エリラが軽く僕の肩を叩いた。
「……そういう意味じゃないのよ、ヴェクソス。」
……あ。
女の子と二人きりで買い物。
それじゃ、まるでデートみたいじゃないか。
セラは、僕と二人きりなのが恥ずかしかったんだろう。
「じゃあ、レン。」
「一緒に来てくれないか?」
「メイジの装備にも詳しいよね?」
なぜかエリラはため息をついて首を横に振った。
女の子って、本当に難しい。
「私は二人で行ったほうがいいと思う。」
「私は家族と話をしないといけないから。」
「ああ……分かった。」
僕はもう一度セラを見た。
「二人だけでも大丈夫?」
セラは顔を真っ赤にしたまま、小さくうなずいた。
その後、僕はセラと一緒に冒険者地区を歩きながら、街を少し案内した。
数分後、僕たちは僕が自分の装備を買った店へ到着した。
店に入るとすぐに、元気なハーフリングの少女が僕たちを迎えてくれた。
「お帰りなさい、ヴェクソス!」
「今日はどうしました?」
「新しい防具をお探しですか?」
「今日は違うよ、イリカ。」
「今日は彼女の装備を買いに来たんだ。」
イリカはセラのほうを見て微笑んだ。
「なんて綺麗なハーピーの女の子なの。」
「き、綺麗……?」
「イリカ。」
「メイジ用の装備を一式お願い。」
「武器も含めて。」
「もちろんです。」
彼女はセラのほうを向いた。
「何かご希望はありますか?」
「杖とオーブ、それともスタッフのどれにしますか?」
「どれも使ったことがありません……」
「ヴェクソスさんに決めてもらってもいいですか?」
僕は少し考えた。
ハーピーという種族の種族能力の関係で、セラは戦闘中のほとんどを飛行して戦うことになるだろう。飛行中、または相手より高い位置にいると与えるダメージが10%上昇する。一方で、地上や相手より低い位置で戦うと命中率が15%低下する。
片手で扱える杖が、一番自然な選択だった。
ハーピーの翼は腕についている。
翼が背中についている天使や妖精、ドラゴンとは違い、ハーピーは両手武器を使いながら効率よく飛ぶことができない。その代わり、その構造のおかげで空中での機動力は他の三種族より優れていた。
スタッフは両手武器なので論外だ。
オーブは飛行中に手から滑り落ちる可能性がある。
やはり杖が一番だろう。
「イリカ。」
「杖と、メイジ用の装備一式、それから命中重視のアクセサリーをお願いします。」
「それと、レベル1の魔法ポーチも一つ。」
「かしこまりました。」
「セラさん、こちらへどうぞ。」
「試着室へご案内します。」
「は、はい。」
「また後でね、ヴェクソスさん。」
僕が命中重視のアクセサリーを選んだ理由は単純だった。
セラは今まで魔法を使ったことがない。
最初のうちは動いている相手に攻撃を当てられないだろう。
命中率を上げれば、経験を積むまでその欠点を補える。
それから、さまざまな種族に防具を合わせる方法だが……
そのためにあるのが《種族適応》という能力だ。
防具職人や裁縫師は、たいてい早い段階でその能力を習得する。
世界には非常に多くの種族が存在するため、その能力がなければ装備を作るのに何倍もの時間がかかってしまう。
セラが着替えている間、僕は店の中を見て回った。
二十分ほどして、彼女は新しい装備を身につけて戻ってきた。
「……綺麗だ。」
イリカは誇らしげに微笑んだ。
「だから言ったでしょう?」
「この子は綺麗なんです。」
「ちゃんとした服を着て……」
「……少し身だしなみを整えるだけで十分なんですよ。」
その通りだった。
セラの顔立ちが整っていることは前から分かっていた。
でも、いつも長い前髪で顔を隠し、着古した服ばかり着ていた。
今の彼女を見ると……
まるで別人のようだった。
僕が素直に褒めると、セラの顔は一瞬で真っ赤になった。
あまりにも恥ずかしそうで、頭から湯気が出そうなくらいだった。
買い物を終えた後、僕は彼女を宿まで送り届け、そこで別れた。
次にやるべきことは……
……母さんに旅のことを話すことだった。
その日の夕方、一緒に夕食を食べ終えた後、僕はようやく口を開いた。
「母さん。」
「話したいことがあるんだ。」
「ん?」
「珍しいわね。」
「そんなに真剣な顔をして。」
「僕、パーティのみんなと旅に出るんだ。」
「旅?」
「でも……」
「クラスを手に入れたのは、ほんの数日前でしょう?」
「どれくらい行ってくるの?」
「一か月くらい?」
「……たぶん、十年。」
母さんは固まった。
「実は……」
「僕たちのパーティは、特別なクエストを受けたんだ。」
「かつて伝説の勇者が受けたのと同じ種類のクエスト。」
「僕たちはヴァレシアへ向かわなきゃいけない……」
「……そして、おそらく難易度10地域まで。」
母さんは長い間何も言わず、そっと僕の頭に手を置いた。
「そう……」
「つまり……」
「あなたも、お父さんと同じように……」
「……ヴァレシアへ行くのね。」
「《世界の声》が、きっとあなたを導き、守ってくれると信じているわ。」
「でも……」
「私の小さな男の子が……」
「ほんの一か月前まで、『立派な冒険者になるにはどうしたらいいの?』って聞いていたあの子が……」
「……今は、そんな遠い場所へ旅立つのね。」
母さんは寂しそうに微笑んだ。
「……分かったわ。」
「許可します。」
「でも、十年後に帰ってくる時は……」
「未来のお嫁さんを連れて帰ってきなさい。」
「孫の顔が見たいもの。」
「へへ。」
「か、母さん……」
「ぼ、僕……頑張るよ。」
その日の夜、僕たちはできる限り長い時間を一緒に過ごした。
何年もの間、これが最後になるかもしれなかったからだ。
翌朝、母さんは五分近く僕を強く抱きしめ、ようやく腕を離した。
僕も静かに抱きしめ返した。
冒険者ギルドの前に着くと、セプタリスのみんなはすでに集まっていた。
メイネとギルドマスター・タロスも見送りに来てくれていた。
「みんな、家族にはもう挨拶を済ませた?」
僕は尋ねた。
リオルは首を横に振った。
「まだだ。」
「どうせエルダーグレンへ向かうんだ。」
「直接会って伝えるつもりだ。」
「分かった。」
出発する前に、僕はみんなへ一言だけ伝えたかった。
「今日……」
「セプタリスは、おそらく史上最大の試練となる旅を始める。」
「いつか必ず帰ってこよう……」
「……アウレティス史上最強のパーティとして。」
「おおーーっ!!」
セプタリスの七人は、共にアウレルヘイヴンの門をくぐった。
こうして、僕たちの旅はついに始まった。




