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Vtuberの妹の中の人ですが  作者: 針坂時計


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28話

8月の陽射しが容赦なく降り注ぎ、外は茹だるように暑い。連日40度弱とかどうなってんだろね。プール日和にしても暑すぎである。


ちょっと遠くのアミューズメントプールに行くため、電車に揺られること30分弱。到着してから更にバスに乗るんだけど、バス停は同じプールにいくであろう家族連れやカップルでそれなりに混んでいた。日傘じゃなくてラフィアハットにして正解だったかな。

現地集合だからひとりなんだよね。何かあるわけじゃないけど、なんとなく肩身が狭い。

お出かけにはしゃぐ子どもを微笑ましく見守ったりしてたらバスが到着したので乗り込んだ。バスってあんまり乗らないんだけどこの混雑具合は普通なんだろうか。



待ち合わせの駐輪場の自販機が見えてきた。もう私以外揃ってるみたいだ。5分前には到着してるはずだけど、みんな気が早いな。


「愛ー、こっちこっち」


「あいちー遅せーよー」


「あんたらが早いんだよ」


えーと、メンツはしーちゃんとギャル山さん、そして相田 音羽さん、飯田 絵麻さん、内田 卯衣さん、江古田 伊緒さん、小田 朝美さんの5人グループと、男子が本多くん、酒井くん、榊原くん、井伊くんの4人だね。なお松平も徳川も同じ学校にはいないもよう。

女子が多めだけど、四天王ズはよく参戦してくれたな。彼らは全員タイプは違えどイケメンであり、女に慣れているし変に飢えてないので、仲良くしやすいから助かるけども。


「んじゃ、メンツも揃ったし移動すっか」


酒井くんを先導にどやどやと歩き出す。酒井くんはちょっと不良入った目付きの悪い茶髪ピアスなのだが、面倒見のいい兄貴肌の人物でもある。こういう時に率先して動いてくれるので頼りになるね。

「おはよ」と手を握りながら挨拶してきたしーちゃんにおはよと返しながら受付へ。メンツは多いけど、だいたいいつものグループで固まる感じだね。

受付から更衣室まで繋ぎっぱなしだったので、なんだか周りから微笑ましく見られてた気がする。



で、着替え終わった。ん? 色っぽい話題とか無いよ。更衣室も混んでるし、暑いからさっさと水に入りたいので着替えもササッとですよ。

どうも私が最後だったらしく、しーちゃんとギャル山さん、あと本多くんが待ってくれていた。あとのメンツは既に移動したらしい。薄情なやつらめ。まぁここに大勢たむろってても邪魔か。


「ごめん、おまたせ」


「いいってことよ」


そう言うギャル山さんは黒のスポーツタイプのハイウエストビキニである。ていうか合流したときも思ったけど、髪思い切ったなあ。


「赤でくるとは思わなかった」


「ん? あぁ髪? いいっしょ、これ。美容師さんにオススメされたんだ」


なるほど。ギャル山さんにしては思い切ったチョイスだと思った。実際に似合ってはいる。髪色に合うメイクのやり方も一緒に教えてもらったんだろうね。いい美容師さん捕まえたな。

で、私はともかく、しーちゃんとギャル山さんという美少女が水着姿でいるわけだが。


「本多くん、我々を見て何かないのかね」


「む? あぁ、三人とも似合ってると思うぞ」


…余裕綽々で流されたぞ。彼は身長190とかあってガタイもよく、ついでに顔も武士みたいな精悍なかっこよさがあるので、そっち方面が好きな女子や一部の男子に人気がある。女慣れしてるから今更クラスメイトの水着ぐらいでは動じないってことか。

変にそういう目で見られても困るけど、ここまで淡白だとちょっとムカつくな。


「からかい甲斐がなーい」


「表現がやすーい」


「もっと丁寧に褒めろー」


「勘弁してくれ」


悪ノリ3人の攻撃に本多くんは苦笑した。そういう顔もサマになってるのがちょっと面白くないなあ。赤面のひとつでもすれば可愛げがあるものを。


まぁそんなことはどうでもいいので移動、移動っと。

県内最大のアミューズメントプールだけあって色んな種類の遊び場がある。定番の25メートルプールと、それを囲む流れるプール。あとはビーチを模した(流石に砂浜はないけど)波のある底の浅いやつと、これまたデカいウォータースライダー。あと変わり種でビーチバレー用のコートなんかもある。

1日で遊びきれるかなぁ。

他の面子が移動したらしい25メートルプールに向かうと、クロールでガチ競争してる男3人とそれを黄色い声で応援する女子グループがいた。

うんうん、青春だね。


「差せーーッ!榊原ーッ! !!」


「遅れてんぞ酒井! 最後の追い込み見せろォ!」


「そのまま逃げ切れ井伊! あたしの500円のために!!」


…青春、だね?



アホどもは放っといて、しーちゃんと浮き輪を借りて流れるプールでまったり泳いでいる(ギャル山さんと本多くんはあっちに合流した)。

お客さんは少なからずいるけど、プールが広い分それなりにスペースはあるのでのびのび泳げていい感じ。水遊びはね、こんな風にダラーっと楽しむのが好きなんだよね。


──本多キタ!

──本多に400!

──本多に500!

──賭けにならんだろが!

──そもそも賭けるんじゃねえよお前ら


「何しとるんだあいつらは…」


「うちのクラスだからね…」


それを言われるとぐうの音も出ない。

さっきから周りの人がチラチラ見てて恥ずかしいんだけど…。

アホどもを見ながら泳いでる私たちの横を、飯田さんが江古田さんの浮き輪をぐるぐる回しながら凄い速さで通り抜けていった。江古田さん目回してたぽいけど大丈夫なのかアレは。笑ってたからいいんだろうけど。



3〜40分ほど泳いだだろうか。体も少し冷えてきたので、上がって皆と合流した。ずっと賭けレースしてたのね君ら。


次はウォータースライダー行こうぜってことになったけど、待ち行列も長いのでペア枠で行くことになった。で、ジャンケンが繰り広げられている。女子だけで。

男子は選ばれ待ちなんだけど、普通こういうのって男子が競うもんじゃないのだろうか。

そして私としーちゃんは決めるまでもなくペア認定されてジャンケンから除外されてた。抗議したら全員から「何言ってんだコイツ」みたいな目で見られた。なんでだよ。


ギャル山さんがイチ抜けて本多くんとペアに。飯田さんと江古田さんは敗退して女子同士のペア。

で、2位の小田さんが榊原くんを指名しようとしたところで相田さんの待ったが入ったんだけど。


「まぁ待てあさみん、ここであたしに榊原を譲ってくれればさっきの負けをチャラにしてあげよう」


「ほう…? ひとつ確認だが、それは、ラブなやつか?」


「いや、インテリメガネが悲鳴をあげるところを見たい」


「知ってはいたがいい趣味だ。だが断る」


「何ッ」


「何故ならわたしもインテリメガネの悲鳴を聴きたい! てことで榊原よろしく!」


「いいですけど、僕はどういう表情すればいいんですかね、これ」


榊原くんも苦笑いである。

なんでもいいけど、行列長いんだから早く決めてね…。



 

並んでる最中も何かと騒ぐ面々(主に女子)をおさえつつ、ようやく私たちの出番が来た、わけ、なんだ、けど。


「…高くない?」


「高いねー」


別に高所恐怖症とかではない私でも結構ビビる高さなんだけど…そしてしーちゃんは何故そんなに楽しそうなのか。

専用の大きめな8の字浮き輪みたいなやつに前後で座るんだけど、私が前ですねそうですね。知ってた。

スタートは安全確認も兼ねてスタッフさんがやってくれるらしい。


「では行きますねー」


「お願いします」


「えちょま」


「行ってらっしゃいませー」


まだ心の準備がぁぁぁぁうわぁぁぁぁ…


待って速い速い速いいったん止まって止めて止めてそのカーブは無理無理ぶーつーかーるーーーーーわあぁぁぁぁ取っ手取っ手! うひいぃあスピードがちょっと緩めにぃぃぃまた早くなったぁぁひゃああぁぁぁぁぁ


──ザッパーーーーン


ふへぇ…目が回った…。



浮き輪を返却して、他のメンツを待ちがてらプールサイドで休憩。膝枕は波がかかってきて微妙なので肩を借りてる。てか、しーちゃんはなんでそんなツヤツヤしてるんだ。


「こういうの結構好きなんだよねー。遊園地でも絶叫系ハシゴしたりするよ」


うん、君と遊園地いくときは心の準備しておくね…。


──いぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!


次の順番だったらしい小田さんの悲鳴が聞こえてきた。いや、あんたが悲鳴上げるんかい。




丁度いい時間になったのでフードコートでお昼を食べることになった。

ラーメンにしたんだけど、私が小食なこともあって想定よりちょっと量が多い。かといって残すのもマナー違反だしね、どうしたもんか。


「皆瀬さん、どうかしたの?」


しょうがねえ伸びる前に食べるかとにらめっこしながら覚悟を決めてたら、井伊くんに話しかけられた。

彼もラーメンにしたらしい。ちなみに何味という選択肢がほぼなかったので、彼も私と同じく醤油ラーメンである。


「いや、ちょっと多くてね」


「あぁ、なるほど。皆瀬さん小食だもんね」


「そうなんだよね。残すのもアレだしどうしようかなと」


「よかったら僕に少しわけてもらっていい? ちょっと足らないかなと思ってたんだよね」


うーん、これだよ。この押し付けがましくない物言いと気遣いだよ。これがモテるイケメンというやつだよ。

提案はありがたいので素直に引き取ってもらった。


「寝取りだ」


「寝取りだな」


「NTRはいかんでしょ」


何言っとるんだこの「あうお」どもは。




お昼を食べ終わって次はビーチバレーでもやろうぜってことになったけど、その前にトイレタイム。こういうところのトイレは激混みになるのが分かりきってるので早め早めに済ませておくのが吉だと思うんだけど、行くのは私としーちゃんだけだった。

たまに女子はなんで一緒にトイレに行くのか、と男子に聞かれるんだけど、そういう生き物だからとしか言いようがない。女子は基本群れで生きるもんなんだよ。


で、用を済ませて戻ろうかってところで、知らない男性二人組に声をかけられた。


「ねえねえ、キミたちさ。よかったら一緒に遊ばない?」


「女の子二人だと寂しいっしょ? 俺らいいところ知ってるから」


んーナンパか、ダルいなあ。アミューズメントプールでいいとこもなにもなかろうに。しーちゃんは急に知らない男子に声かけられて体を固くしちゃってるな。

えーと、たぶん同世代、髪普通、鍛えてる様子なし、顔もまぁ普通。目線ちょっと落ち着かない。値踏みしてる様子なし。

…ちょっと後ろにこっちみてニヤニヤしてる男子グループがいる。なーるほどね。ガチナンパじゃなくて、罰ゲームか単なる悪ノリか、そのあたりか。

監視員さんは…っと、いたいた。ちょうどこっちに注意向けてるね。こういうところじゃナンパは禁止だからな。


「興味ないんで他所いってもらっていい?」


「そんなこと言わずにさ、ちょっとだけでも」


「絶対楽しませるからさ」


しつこいな。あっさり引き下がるようなら見逃してやろうかと思ったけど、そういう態度なら仕方ない。

監視員さんに目配せする。遠いから気づかれないかなと思ったけど、ちゃんと気づいてくれたのか軽く頷き返してきて、無線で連絡を取っていた。

これでよし。


「そっちの黒髪の彼女はどう? ていうかめっちゃかわいいね」


「だな。ガチで付き合いてえ」


相手の後方に警備員さん確認。もうちょい足止めするか。

てか明らかに怯えてる相手に何いってんだこいつらは。だからモテんのよ、知らんけど。


「悪いけど」


肩…は私のほうが低くて微妙にサマにならないので、腰に手を回してをグッと抱き寄せる。


「この子、私のカノジョなんで触らないでね」


「え」


「え」


「え」


いや、なんでしーちゃんまで驚くんだい。


「それって、レ」


「はい、そこまでね」


警備員さんが男たちの腕を掴んだ。強面に腕を掴まれて相手は一気に顔色が悪くなった。後ろにいる仲間っぽい連中も慌ててこっちに来てるね。


「あ、君たちは行っていいからね」


「ありがとうございます」


面倒事になる前にさっさと行こう。なんか真っ赤になってるしーちゃんの手を握ってそそくさと離れた。




皆と合流してもしーちゃんがずっとべったりで離れないのを訝しがられたので、ことの顛末を話すと


「それは愛が悪いわ」「あいちーが悪いね」「せやな」「そやな」「それな」「同感」「賛成」「異議なし」「右に同じ」


「なんなんだお前ら」


しーちゃんは責任取ってね、とか言ってくるし悪ノリが過ぎんかねキミらは。



その後は男女混合でビーチバレーをやってボロ負けしたり、波のあるプールでまったりしたりして、夕方頃に解散した。

うーん、ちょっと面倒な事もあったけど楽しかったな。普段はみんな塾とかあるから大勢で遊ぶことってあんまりないんだけど、やっぱりこういうのは楽しいね。


後日、帰りの電車の中でしーちゃんの肩にもたれてグースカ寝てる私の画像がグループラインに出回ったのは説明を要求することにしよう。

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