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Vtuberの妹の中の人ですが  作者: 針坂時計


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26話

ちょっと前の話。カラオケ大会終わった後ぐらいかな。

お披露目についてオンラインで打ち合わせをしていたときに、玲花さんから切り出された。


「そういえば、案件が来てるんだけど興味ないかな?」


案件っていうと、プロモーションを含みます的なやつだっけ。通常の配信と違って企業からの依頼でやる、いわゆる商品紹介だね。

案件報酬はボイスやグッズと並んで重要な収入源と聞いたことがある。

玲花さんが資料を画面共有してきたけど、この企業ロゴって、え、マジかこれ。


「ホログラフィックユニバースじゃないですか」


ソシャゲやらない人でもタイトルラインナップぐらいは知ってるレベルの超有名企業だ。

ポチポチゲーになりがちなソシャゲでオープンワールドのアクションRPGをやるという挑戦を成功させ、その圧倒的なクオリティで瞬く間に業界トップに駆け上がったトップランナー企業だ。


「え、凄いですね。ホロユニから案件くるんですか」


「ウチだけじゃなくて、何人のストリーマーや事務所に同じ依頼をしてるみたいだけどね。こういう企画なんだって」


玲花さんが別の資料を共有してきた。

えっと項目が初心者向けチュートリアルのリニューアルとお助けアイテムの配布、ガチャの新キャラ紹介。このへんは定番だね。

で、最後のレイドチャレンジってのが目玉か。


「レイドチャレンジですか」


「うん。かなり難しいチャレンジで、達成度に応じてゲームアイテムの配布が豪華になるんだって。あと公式SNSとか、成績優秀者はゲーム内でもチャンネルを紹介してくれるみたい」


なるほど。ストリーマーは常に注目される機会を探してるからなあ。ホロユニぐらいの規模のメーカーに紹介されれば凄い宣伝になる。上手いこと考えるね。

で、私にレイドチャレンジをやって欲しいってことかな。

まあ、このゲーム自体は以前やっていたゲームではある。ナイトメアナイトが発売される前ぐらいかな。


「あれ、プレイしたことあるの?」


「はい。手を出したことはあるんですが、続きませんでしたね」


「そうなんだ。やっぱり学生だと課金がキツいよね」


「それもあるんですが、頑張って貯めた石でお目当てのキャラを引けなかった時にモチベがダダ下がりするのがキツくて…」


「あー…」


この悲しみはガチャ経験者なら誰でもあると思う…。地道に周回したりして集めた石が、ものの数分で溶けてお目当てが出なかったときの、あの虚無感は筆舌に尽くし難い。

来るまで回せる石油王は別として。

しかし、ちょっとブランクあるけど大丈夫だろうか。ゲームそのものはまだインストールしてあるから操作練習とかは出来ると思うけど。


ただまあ、私にもわかるレベルの大型案件ではある。

役に立てるなら望むところだし、レイドチャレンジも面白そうだ。

配信までにはまだ時間があるし、操作を思い出すついでにボスを一通り倒してパターンを掴んでおこう。

ここまでがちょっと前の話。





「はい、今回はホログラフィックユニバースさんからの案件でエリア:ロストゼロの紹介をやっていきます」


「いきます」


『案件やー』

『ホロユニとはまたデカいところから来たな』

『お嬢もでかくなった』

『お嬢はわしらが育てた』


「監督ヅラのコメントは置いておいてね、早速紹介していきます。まずエリア:ロストゼロとは──」


お姉のMCでゲームの紹介が行われていく。

エリア:ロストゼロはシングル向けの3Dアクション。

近未来のサイバーパンク+ポストアポカリプス的な世界観で、プレイヤーはエージェントを操ってロストゼロと呼ばれる不毛の大地に眠る資源を回収したり、ロストゼロ発生に秘密を解き明かすのが目的だ。

このエージェントがガチャキャラだね。キャラには属性とロールがあって、3人までパーティに編成できる。その組み合わせの多さからくる多様なプレイスタイルが人気。キャラも頻繁に追加されるから、編成の自由度はかなり高め。その分ガチャが多めになるんだけど、そこはお得課金パックとかデイリーでそれなりに石を配ってバランス取ってる感じ。


ただアクション要素強めのゲーム性が従来のメーカーファンやライトプレイヤーに敬遠される要素にもなってるらしく、今回の更新でそこを強化してくる感じだね。

実際、以前のテキストだらけだったチュートリアルから、プレイしながら自然に操作が覚えられるようなつくりになってる。このゲームのキモであるジャストアクションについても念入りに手ほどきしてるし、配布アイテムも序盤ではかなり便利だから、大分入りやすくなったんじゃないかな。元々構成自体はシンプルなゲームだしね。


「あ、これで終わりか。うーん、もうちょっと遊びたい。上手い作りね」


『続きは本編で』

『だいぶわかりやすくなったのう』

『初期はほんまアレやったからな』

『テキストだらけだったもんなあ』

『しかも翻訳が未熟だったから分かりづらいこと』

『先駆者は苦労してたんやな』

『実際初期はまず基本プレイの情報交換がメインやった』

『ホロユニじゃなかったら遊ばないとか言われてたもんな』


あ、やっぱり世間でも不評だったんだね、前のチュートリアル。



さて、ガチャ紹介はお姉に任せてレイドチャレンジの準備をしよう。

クライアントは立ち上げてあるので動作確認、と。うむ、コントローラー問題なし。動作エラーなし。クエスト開始確認よし。

ガチャはね、見ないでおこうね。見ると欲しくなっちゃうからね…。

コメントが大盛り上がりしてるのを見ると、デザインも性能も大分いい感じのキャラらしい。

ちょ、ちょっとだけ…いや、ノーノー。


『妹ちゃん静かだけどどうかしたん?』


「新キャラを見ると欲しくなるから見ないようにしたいんだって」


『案件やぞw』

『いいのかそれ』

『オイデオイデ』

『こっちの沼は生暖かいぞ』

『一緒に沈もうやァ』

『逃さんぞ』


誘惑はやめろォ!




「さて、最後はこちら。レイドチャレンジー」


「わー」


『わーわー』

『ほんへ』

『待ってた』

『頼むぜ』


さて、出番だ。

お姉のアナウンスを聞きつつクエスト突入。

1回までリトライしていいらしいので、とりあえず編成はオーソドックスなタンク、DPS、サポーターの編成。だいたいこの編成にしとけばなんとかなる。


「準備もできたみたいなので、始めていきましょう」


「いきます」


クエスト開始。敵は上半身ムキムキのゴリラみたいなボス。ストーリーで戦ったことあるやつの色変えかな。このゲームは人型タイプのボスが総じて強くて、このボスも結構強かったけど、どんなもんかな。

まずはサポーターでバフを……うお、開幕0秒でいきなり攻撃が、って、え


『ワンパン!?』

『うは』

『はい』

『これね』


えー……サポーターはステータス低めとはいえ、ワンパンかいな。

パーティ内で2回までリスポーン出来るので、クールタイムを待ちつつ他のロールも試してみたけど、DPSもワンパンで沈んだ。タンクはたぶんギリ2発までいけるかも。ただこのゲーム、回復という要素がないんだよね。つまり今の編成だと6発攻撃受けたら負けってことか。

マジかこれ。


『厳しない?』

『他所のチャレンジもみたけどクリア者はまだいない』

『完クリは難しいから、報酬増えるラインまで火力で押し切るのが主流やね』

『実際30%削りぐらいでも十分旨い』


なーるほどね。そういうことね。火力キャラで削れるとこまで削って報酬をもらうのが現実的なラインなわけね。


「……ふーん……」


『おや、妹ちゃんの様子が』

『あーこれは』

『? なんかあんの?』

『魔王覚醒』

『止め絵なのに目からハイライトが消えたように感じる』


なるほど正しくチャレンジってわけだ。クリアできるもんならやってみろと、そういうことね。なるほどなるほど。

そういうことならまぁ、うん。わかった。

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