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43章 平和の終焉―――六百七十五年・十月三日(二)



 今夜も遅いアラン先生からの珍しい電話を終え、釈然としない感情を覚えながらも、歯を磨こうと洗面台へ。

 歯ブラシを動かしつつ、キュー先生の部屋のドアを見上げ、闇の中微動だにしない彼の姿を想像する。どう控えめに考えてもストーカー以外の何者でもない。

 同居人が恩師に特別な好意を持っているのは最早明々白々だ。しかし第三者の僕が見る限り恋人同士では決してなく、互いの側からきっちり線引きがなされているように感じた。決して幼馴染を越えてはならない、と言う暗黙の了解に因って。

「あ、そうだ」

 伝言するのをすっかり忘れていた。時計を見ると十時前。まだ起きている時間だ。

 口を濯ぎ、リビングへ戻ってコードレスホンの受話器を手に取る。すっかり暗記した番号を押し、コール音を聞きながら相手が出るのを待つ。

 しかし何故か切断音の後、留守番電話に切り替わった。電源が入ってなかったのか?でもさっきはちゃんと呼び出ししていたけれど……うーん。まぁメッセージが入っていれば登校前に聞くだろう。


「―――ロウ、僕だよ。明日の放課後、受験生の保護者達が見学に来るらしいんだ。だから大会用衣装を持って来て、くれぐれも忘れないようにね」


 親戚の女性の件も尋ねたかったが、生憎時間切れだ。続きは明日会ってからにしよう。

 玄関の施錠を確認し、自室に戻って寝巻きに着替える。勿論親友に言った手前、ちゃんと自分の分を別の手提げ鞄に用意しておく。

(そうだ、頼まれた牛乳は……ま、いいか。先生が戻ったら飲むだろうし)

 そう思いながら電灯を消し、ベッドに横になった。―――翌朝、ルナ小母さんがとんでもない知らせを持って、二〇一号室に駆け込んでくると知らずに。そして―――平穏な日々が、永久に終わりを告げてしまったとも知らずに。




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