後編 女は憑依したのか?
おじさんは話し終えた。
「どうだ、怖い話だろ」
「うん怖かった。不気味な話だね」
「マジで怖かったぞ、翌日の小学校は憑依の話で持ちきりだった」
俺はおじさんの話を整理してみる。
おじさんは小学生のころ、ケンジ君と一緒に夜中に神社に行った。
そこにいた白い女の左肩にさわることができたので幽霊ではない。
おじさんとケンジ君は神社を出て左に走って逃げた。白い女は追いかけてはこなかった。
しばらく走ると十字路の左から女子高生が現れた。白い女とは別人である。
そして彼女は突然頭を抱えて地面にうずくまる。
神社を指さして、おじさんをにらみつけて言う。
『さっき神社で私の肩にさわったよね、痛かったわ……』
つまりこれは。
怒った白い女の生霊が女子高生に憑依したということか。
なるほど怖い話だ。
ちなみに憑依とは霊(生霊も含める)などが乗り移り意識を乗っ取ることである。悪魔つき、狐つき、イタコなど歴史ある現象であり、演技や精神疾患の一種だとも言われている。
「おじさん、憑依なんてあるの?」俺は聞く。
「神社の出来事を言い当てられたから本当にあるのかもしれない」
疑り深い俺は考えた後、おじさんに聞く。
「これって白い女と女子高生が仲間で、子どもを怖がらせるために憑依された演技したんじゃないか?」
「じゃあどうやって僕が肩にさわったことを伝えるんだい?」
「そりゃあ、おじさんとケンジ君が逃げた後に、白い女が女子高生にスマフォで電話したりメールやラインしたり」
「それは現代の話だ」
「現代?」
「この話は昭和だ」
「……あっ!」
気づいた俺におじさんが言う。
「あのころはスマフォもメールもラインも無い。そもそも携帯電話が無い。もちろん固定電話はあるがそれは厳しい。僕とケンジ君が逃げた後に白い女が固定電話がある民家に入り、女子高生に電話するのは時間がかかりすぎて間に合わない」
俺は考える。別の方法があるのではないか。
「……昭和でも双眼鏡がある。女子高生が遠くから神社の出来事を見ていたんだ」
「いい推理だ、でも無理だ」
「どうして?」
「神社の周りは木が密集しているから鳥居がある側からしか見えない。そして神社の向かいには廃屋があるから、あまり遠くから見ることもできない」
「女子高生は廃屋から双眼鏡で見たのでは?」
「それも無理だな」
「どうして?」
「僕とケンジ君は神社を出て左に曲がって走った。そして女子高生はその先の十字路の左から出てきたからだ」
「あっ、そうなるか」
「女子高生が十字路の右から出てきたなら話は成り立つ。だが実際は左だ。そのためには走って逃げる僕らに気づかれずに十字路まで行き左に曲がる必要がある、無理だ」
「なるほど」
俺は考える。
憑依なんてあるのか。
何かトリックがあるのではないか。
おじさんの話に変な所があるのではないか。
……。
そういえば。
白い女から走って逃げるとき、おじさんが前でケンジ君が後ろだった。
俺はおじさんの太ったお腹を見る。
「おじさんは小学生のころ、足が遅かった?」
「ああ僕は遅かったぞ、今と同じで太っていたからな」
「じゃあケンジ君はおじさんより足が速かったの?」
「うん、すごく速かった」
「白い女から走って逃げるとき、おじさんが前でケンジ君が後ろにいたんだよね」
「……ああ」
「おかしくない?」
「言われてみると……なんでだ?」
俺は自分の推理をおじさんに言う。
「白い女と女子高生だけが仲間じゃない、ケンジ君も仲間だ。ケンジ君は白い女が追っかけてこないと知っていたから本気で走っていない」
おじさんは驚愕の表情を浮かべた。
「な、なにいいい! いやその可能性はあるのか」
「ケンジ君が仲間だから、11時過ぎに神社に行く予定やおじさんが白い女にさわる予定も伝わっていた」
「でも、どこにさわるかわからないだろ? だから女子高生は憑依の演技ができない」
「ジェスチャーだ。ケンジ君は女子高生に見えるように、右手の人差し指で自分の左肩をさす、などのジェスチャーをした。それをおじさんに見られないために、おじさんより後ろにいる必要があった」
「……た、たしかにそれなら走って逃げるときに僕より後ろにいなければいけない。でも、僕が神社で白い女にビビって何もせずに逃げたらどう伝えるんだ?」
「その時は左右の指で×をつくって女子高生に見せればいい。女子高生は無言ですれ違うだけだ」
「……騙されたのか僕は」
おじさんはくやしがる。
「ケンジ君のこと許せない?」
「いや昔のことだからいいよ」
俺は推理を続ける。
「最初に白い女が消えたと言った男子高生も存在しなくて、ケンジ君の嘘かもしれないね」
「白い女と女子高生とケンジの3人は何が目的なんだ?」
「わからないよ。身近で怖い話でも作りたかったのでは?」
「怖い話なんかより。それに情熱を注いで迫真の演技をする奴らのほうが怖いよ……ん? 待てよ」
「どうしたの? おじさん」
「ケンジのやつ、小学6年生の時に高校生のお姉さんとお友達だったんだよな?」
「そうだね」
「ゆ、許せねーー!」
おじさんは絶叫していた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




