力と想いは表裏一体(1)
ウィィィーーーーン
カシャカシャカシャカシャ…!
いつもより長く、激しくキューブの面が動き出す。
「今日は気合い入ってんなぁ」
「なにを作ってるの?」
「見れば分かると思います。」
しばらくキューブが動く音だけが離れに響く。
カシャン! ペッ ペッ ペッ
眩い光と共に、厚紙で出来た箱が3つ吐き出された。
「これは…」
「そういうことだよね…」
「ホワイトソルジャー様とファーミーコング様と同じ…」
「「 ミニロボットだぁ~! 」」
黒、ピンク、紫の箱にはそれぞれミニロボットのイラストと機体名が大きく描かれていた。
「こっちは『ブラックシャドー』。 背中に背負った直刀と影を操る忍者型。 アルフ兄の相棒機みたいですね」
「ボクに? すごいな、本当に影に溶け込むような漆黒のボディ。シンプルだけどカッコいい、結構好きなデザインだね。」
「こっちの猫耳メイド型は『メイディーフェリス』。 拳と愛嬌と器用さを併せ持つ、王女様の護衛とお世話役です。」
「わたくしにですの!? この様な可愛らしい、お耳がついたお友達を…!」
「そしてこの紫色の機体は…」
僕の箱だけ、なぜかガッツリ『漢字』で機体名が記されていた。
「『影忍 紫苑 』…ブラックシャドーの兄妹機で、情報収集と搦め手、他の機体のサポートなど、いろんな仕事を担当する機体のようですね。」
黒、ピンク、紫の箱が相棒の元に渡った。 だが不満そうな顔をしているのが2人。
「なんでわたし達にはないのよぉ~」
「アルフ兄にもあるんだからオレらにも作ってくれてもいいんじゃねーの?」
「今はソルジャーもコングもいるから必要ないだけだよ。
だいじょーぶ、いずれ2人にも『必要な時』が来るよ。」
「「ヒィッ!?」」
「あまり脅さないでくださいアルフ兄。 ソラ姉、キッド兄、みんなで組み立てましょう。」
そこからの時間は、まさに夢のようだった。
みんなでコタツを囲み、ランナーからパーツを切り離し、組み立てていく。
やがて、コタツの上にソルジャー、コング、シャドー、フェリス、紫苑の5機がズラリと並ぶ。
「それでは、感動のご対面といきますか」
「こちらを入れて、こうですわ!」
「からの、こう」
アルフ兄、ルネッタ、そして僕がそれぞれの機体の背中に魔晶石電池を装填し、手のひらに立たせる。
3機の眼に光が灯る。
漆黒の忍者装束に身を包んだ機体は片膝をつきアルフ兄に忠誠を誓うように首を垂れた。
「頼りにしてるよ、相棒」
紫を基調とし、兄機であるシャドーとフードや額当てを共通とした軽装備のクノイチはアクロバティックに僕の手から肩、頭、コタツの上、手のひらと飛び移る。
腰のクナイを1本ずつ引き抜くと、シャキッ!と小さなクナイをクルクルと回してポーズを取る。
うん、頼りになりそうだ。
「よろしくね、紫苑」
クラシカルな黒いメイド服、ピンク髪にメタリックピンクの猫耳と尻尾を覗かせる機体は主君を見上げると、ドレスの裾をつまむような動作で優雅にお辞儀をする。
スッとスカートを離したかと思うと、バッとその腕のオープンフィンガーガントレットを披露するかのように、空手のような構えをとる。
お世話と護衛を兼任する猫耳メイド型として、文句のない挨拶だ。
「と、尊いですわ!! わたくしにお仕えしてくれる可憐なメイドでありながら、いざという時はその拳で敵を粉砕するという頼れる護り手であるのですね!
この金属感を持つ独特なピンク、しっかり布感を持ったメイド服を1機体に両立させるとは…これは推せます!」
ルネッタが鼻息を荒くして語る。
お淑やかな彼女の面影はどこへやら、完全にフェリスの魅力にメロメロになって、完全に『そっちの道』へ開眼していた。
「早くこの子達の実力を見てみたいですわ!」
「残念ですが、今日はもう遅いので、本格的に動かすのは明日にしましょう。」
「もっとフェリスが動く姿をみたいですの…」
「今からやってたら団長さんや父さんに怒られます。 ちゃんと陽が出て堂々と動かした方が絶対いいです。」
「で、ではこの子達、パーツや武器の付け替えられるのですよね!
パーツの付け替えを試すだけでも!」
「それなら構いませんよ。 ちょっとやってみましょうか」
「フェリスにブラックシャドー様の剣を持たせて、コング様の足の部分を付け替えてみたいですわ!」
「早速ゴリゴリの武装させるんですね…」
「あ、ずるい! わたしもやる!」
「オレはソルジャーにコイツの武器を持たせるぜ!」
「主よ! 次の漫画をよこすのである!」
「あ~はいはい。今錬成するから」
「兄君よ、この応募者全員サービスの応募ハガキであるが…」
「それ多分、どう頑張っても届かないやつ…」
「なんであるとぉぉぉぉ!?」
さらに時間が経ち…
「その絵がたくさん描かれている書物はなんですの?」
「娘よ、お主も読んでみるのである!」
数分後。
「……っ!! ここで、ここで伏線が回収されるなんて……! 凄いですわ! 次の巻は!? 次の巻はどこですの!?」
「これである! この14巻は我の推し巻である!」
コタツの温もり。
並んだ5機の小さな相棒たち。
漫画に熱中するドラゴンとお姫様。
そして、それを見守る兄と姉たち。
「……生きてて、よかったですわ」
「そうであろう、そうであろう! これこそ生きる喜びであるのだ!」
ルネッタが、漫画から顔を上げ、満面の笑みでそう呟いた。
病の苦しみから解放され、秘密を共有し、新しい「大好きな趣味(オタクの道)」を見つけた彼女の笑顔は、どんな宝石よりも輝いていた。
「これは夜通し大騒ぎコース確定だね」
「ですね」
王女様だろうが、なんだろうが関係ない。
ここはベジッタ村だ。
最高の仲間たちと共に、この優しくて少しカオスな日常が明日を作っていく。




