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第八十三章 a fales bond

真音とめぐみのバトルは、めぐみが断然優勢だった。

しかし、不思議と言うか何と言うか、めぐみの超能力に対し無防備だと思っていたのだが、ユキの秘策(?)の成果もあり引き離されたバトルにはなっていなかった。


「君のガーディアンは優秀なようだね。でもこうでなくちゃ面白くない。お姫様を助ける勇者は強くなくては」


「なら鈴木は大魔王ってところか?悪者が好きなんて初耳だぜ」


「あっははは。私は常識ってのが嫌いなんだ。大魔王が悪い奴だとは限らないじゃないか。それに、勇者と呼ばれる連中は古来より下心がある奴しかなれないんだよ。人助けなんかで命を張れるわけがない。君だって、赤木に好意があるから助けたいんだろう?人間というのはそういう生き物さ」


「淋しいよ………淋し過ぎる。人間が人間を語ったって説得力無さ過ぎだって気付けよ!」


「だから神になるんだ。神になれば人に腹が立つ事もない。人に苦しむ事もない」


「妄想だぜ………神になんてなれるか!ビリアンって奴が親玉なんだろ?騙されてんじゃないのか?」


「ビリアン様は偉大なお方。神なんて器には収まらないほどに。私が神になり、ビリアン様には神を超えた存在になっていただく。それゆえ君達選定者を倒さねばならない」


「狂信者に成り下がったのか…………本当に、淋し過ぎるよ………鈴木」


真音が左手を少し斜め下で開く。すると落とした弓が戻って来た。


「それでいいんだよ、如月。本気でやってもらわないとガーディアン・ガールになった意味がない」


たぎる力がめぐみを焚きつける。抑え切れない衝動が彼女を人の域から引きはがしていく。


「ガーディアンの悲しみも知らないくせにガーディアン・ガールなんて口にするな」


手元に戻った弓の弦を引く。ギギッと音を立てしなる。


『真音………』


ユキは真音の言葉が嬉しかった。そして逃げずに戦う決意を見せてくれた事も。


「お前みたいな奴は許せないんだよ。目ぇ覚まさせてやるっ!」


宿る力が矢を形成し、いつもより強い光を放つ。


如月きみからの想い………受けて立つよ!」


めぐみは足を広げ、両手を前に出してそこに力を集束させる。


「すごい力だ………勝てるか?」


『さっきも言ったでしょ?同じ力をぶつける場合、優劣は関係ないわ。真音が手を抜かない限りちゃんと相殺されるわ』


今はユキを信じるしかない。


「行くぞ!」


真音は弓を弾いた。

矢は一閃を描きめぐみ目掛けて飛び出した。


「そんなか細い矢で私は倒れない!」


対抗してめぐみも溜めた力を解放した。

二人の技と技が衝突。押しつ押されつを繰り返す。


「ユキ!相殺される前に矢が消えちまうぞ!」


『大丈夫。私を信じて』


意識の中でユキが熱くなるのを感じる。その熱は細胞を伝い、血液を沸騰させる。こんな感覚は初めてだった。


「身体が………熱いっ……!」


『耐えて!』


今すぐにでも氷で全身を冷やしたい気分だ。それでもこの熱さから逃れられるかはわからないが。


「だめだ………ユキッ!!」


倒れそうなくらい熱に浮かされ、限界を感じる。

矢が消えてしまえば、めぐみの力の塊が飛んで来る。

その前に………


「私の勝ちだ!如月!!」


勝利を確信しためぐみだったが、


『勝つのは私達よ!!』


ユキの力が真音を媒介に、消えそうになっている矢に注がれる。


「この力は!」


思いもよらぬ大きな力に、めぐみが怯む。そしてユキが言ったように、二つの力は相殺される。激しい閃光を起こして。


「はぁ……はぁ………くっ!」


真音は膝から落ち、冷めて行く身体を抱いた。


『ガーディアン・ガールの力はガーディアン・ガールの力で相殺されるの。ディボルトして真音が使う力は、私の力を真音の身体が耐えられるように変換したもの。これが毎回じゃ身体がもたないでしょ?』


「…………これがヒヒイロノカネの力…………」


『そうよ。さ、立って。まだ勝負は着いてないわ』


めぐみはさっきの閃光で目が眩んで立てないようだ。寸前で目を閉じた真音に対し、ヒヒイロノカネの力を解放するには目を開け続けなければならないのか、めぐみは目をやられるまでまぶたを閉じなかった。

真音はのたうちまわるめぐみの前に行く。


「うっ………目……目が……」


「鈴木…………」


あれだけ脅威に感じためぐみが、今はただの人間に戻っている。

真音の気配を感じたのか、うっすら開ける瞳は光っていない。


「や………やるじゃないか………見直したよ」


「ガーディアン・ガールの力はガーディアン・ガールの力で相殺される………ユキがそう言ったよ」


「はは………さすがは本家本元。俄か仕込み、不慣れな力では足元をすくわれるわけだ」


立場ば逆転した。真音にはユキがついている。ヒヒイロノカネの力を持っていても、生身の身体に負うダメージだけは拭えない。


「行けよ。赤木が待ってる。私はもう戦えない」


「………みたいだな」


めぐみが戦意喪失を告げた。それは真音にもわかっていた。


『真音!』


「いいんだ。戦う意志のない奴の命までは奪えないよ」


とどめを刺す気のない真音に半分キレ気味だが、言ったところで刺さないだろうと思い諦めた。


「考えてみれば、君は一人じゃない。表面に出て来ない分、君のガーディアンは冷静に戦況を見極められるんだな。もちろん君もたいしたもんだよ、如月」


「俺は………俺は弓を殺し合いには使わないって一度は決めたんだ。なのに、いつの間にか………もう的には向き合えない」


「ストイックになるなって。自分が正しいと思う事をしたんだろ?だったら嘆く事はないさ」


「…………サンキュ」


「ほら、早く行くんだ」


真音は小さく頷き向かいのビルへ移る渡り廊下へと行く。

だが…………


(フン……)


その後ろでめぐみが不敵ににやける。待っていたのだ、視力の回復を。

めぐみの瞳は再びヒヒイロノカネによってまばゆい輝きを放ち、ゆっくりと立ち上がる。墓からはい出るゾンビのように。


(甘い………そしてあまりに人を信用し過ぎる………君の弱点だよ………)


ゆらゆらと揺らぎながら立ち上がった後は、危機に気付かぬ真音の背中を『ぶち抜く』為、三度みたび構えを取る。


「フフ……フフフ………アーハッハッハッハ!!死ねぇっ!!如月!!」


全ての力を込めてエネルギーの塊を投げ付ける。真音とユキを殺す為に。

プロの野球選手よりも遥かに速い速度で飛んで行く。


「消えて無くなれーーっ!!」


叫んだめぐみだったが、顔色が変わった。真音が振り返ったのだ。驚きの眼差しではなく、『こうなる』事を読んでいたかのように。そして、実に鋭敏な動作で弓を構えると、一瞬で矢が現れる。


「そ、そんな………」


めぐみはそれを見た瞬間、本能で負けを悟った。多分、矢はエネルギーの塊を突き破り、自分のところへ飛んで来ると。


「どうしようもない奴だ……情けを掛けたのに」


真音は矢を射った。

めぐみが予想した通りになり、彼女の胸に突き刺さる。更に、勢いの止まらない矢は、めぐみの身体を押し壁を突き破る。


「あ………ああ………嫌だ………嫌ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………………………………………!!!」


そのまま、めぐみは地上へと落下した。


「お前は演技に向く性格じゃないよ」


弔いの言葉を言った。


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