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第百六話 回収結果


 

 まずは下僕骨たちに、崩落した洞窟を掘り出すよう命じる。

 小山の斜面は見事に窪んでしまっており、再び洞窟として掘り直すのは土が脆くなりすぎて、しばらくは無理だろうな。

 生き埋めになった兵士たちを回収したら、今度はもっと地下深くに洞窟を作ってみるか。


 次に洞窟の外にいた兵士の死体を身ぐるみ剥いでいく。

 兵のほとんどが分厚い布地の服で、鉄甲や皮鎧は意外と少ない。

 持っていた武器も結構バラバラだったりで、正直、小鬼たちのほうがまだ統一性はあったな。


 半分ほど整理が終わった頃、何かの足音が近付いてきた。

 視線を向けると一角猪に跨った大きな骨が、馬の手綱を器用に引っ張ってくるところだった。

 鞍の上には全身を鎧で覆った男が、小麦を詰めた袋のように無造作に積まれている。


 首が変な方向に曲がっているのは、鎚矛で殴られたか、それとも馬から落ちたせいか。

 

「よう、頼まれた通り、ちゃんと仕留めてきたぜ」

「ご苦労さん、そいつが隊長か。……うむむ」

「どうしました? 吾輩先輩」

「鎖帷子だとまだ使いようがあるんだが、板金鎧は流用しにくいなと思ってな」


 全身型の鉄鎧は、大体が持ち主の体に合わせて作ってあるからな。

 それに肉の体がない吾輩たちには、空洞部分がありすぎて衝撃が余計に伝わってくるし。


「無理に着なくても良いんじゃないですか? 動き難いだけですよ、それ」

「それもそうか。勿体ないが、鍛冶屋に渡して鋳潰させるとするか」

「ところで客が来てるぜ、吾輩さん」


 タイタスが顎でクイッと後方を指す。

 そこに居たのは村長を始めとした、複数の村人たちだった。


 農夫たちは地面に転がっている死体や、斜面を掘る骨の姿をマジマジと見つめていたが、やがて意を決したのか互いに頷きあった。

 そして身を引くと、彼らの背後に居た男たちを吾輩たちへ見せる。


 それは両手を縛られ、目隠しと猿ぐつわをされた三人の男だった。

 誇らしげな顔の二羽のカラスが、男たちの頭をわざとらしく踏み付けている。


「村を脅かす不逞の輩をひっ捕らえて参りました、骨王様」

『うむ、よくやったな、お前たち』


 吾輩の言葉に、村人たちは雷に打たれたように頭を下げた。

 そして再び顔を上げた彼らの瞳には、誇らしげな光が浮かんでいた。


 フーやムーが見つけたとはいえ、男爵の手先をしっかり捕まえたのは素晴らしい手柄といえよう。

 実はここできちんと村を守る覚悟を見せない村民が居た場合、こっそり入れ替えていく算段を村長には伝えてあった。

 どうやら余計な配慮だったようだな。


 内偵者どもを受け取った吾輩は、褒美に主を失った馬たちを村長たちへ手渡す。

 さり気なく鞍を変えるなどして、元の持ち主がバレないよう注意もしておく。

 中々、良い馬たちのようだが、手元に置いておくと面倒になりそうなので、ほとぼり冷めたら売り払うと良いだろう。


 馬を受け取った村人たちは、いきなりの臨時収入に興奮した面持ちで帰っていった。


「じゃあ吾輩は、こいつらを黒棺様に捧げてくるぞ」

「それでは、後は僕がここの指示を」

「俺は飼育場を覗いてくるぜ。そろそろ猪どもの泥浴びの時間だしな」

「倒す!」

「そんなこと言ってると、また振り落とされるぞ、ロク助」

「たおーす!」


 仲良く猪に乗ったタイタスとロクちゃんは、颯爽と走り去ってしまった。

 しまった。どうせなら、途中までこいつらを運んで貰えば良かったか。


 仕方がないので、カラスたちに突かせながら無理やり歩かせることする。

 飼育場と鶏小屋の囲いをグルっと回った先、小山の反対側には新たな洞窟が密かに開通していた。


 こちらの穴は坑木をしっかり入れていたせいで、先ほどの揺れにも無事、耐えてくれたようだ。 

 やや心配であったがこれでどの程度まで保つか分かったし、この先、穴を広げる時には大いに参考になるな。 


 黒棺様に三人の男を投げ込んだ吾輩は、期待を込めて側面を確認する。

 なんせ四十人以上の魂だし……。

 

<能力>


『末端再生』 段階3→5

『平衡制御』 段階3→5

『聴覚鋭敏』 段階3→5

『頭頂眼』 段階3→4

『集団統制』 段階2→3


『気配感知』5『反響定位』4『危険伝播』3

『麻痺毒生成』2『視界共有』2『臭気選別』1

『腕力増強』1『賭運』1『暗視眼』1

『角骨生成』1『生命感知』1『火の精霊憑き』1

『精霊眼』1『地精契約』1『肉体頑強』1


<技能>


『片手剣熟練度』 段階9→10→『片手剣熟達度』 段階0→2

『短剣熟練度』 段階9→10→『短剣熟達度』 段階0→2

『骨会話熟練度』 段階7→10→『骨通信熟練度』 段階0→2

『忍び足熟練度』 段階7→9

『回避熟練度』 段階5→8

『動物調教熟練度』 段階5→8

『罠設置熟練度』 段階5→6

『指揮熟練度』 段階4→6

『受け流し熟練度』 段階4→6

『片手棍熟練度』 段階2→6

『盾捌き熟達度』 段階3→5

『両手剣熟達度』 段階2→5

『弓術熟達度』 段階2→4

『騎乗熟達度』 段階2→3


『火の精霊術熟練度』10『投剣熟練度』7『鑑定熟練度』6

『罠感知熟練度』6『射撃熟練度』5『片手斧熟練度』5

『土の精霊術熟達度』5『投擲熟練度』4『両手棍熟練度』3

『両手斧熟練度』2『両手槍熟達度』2『投斧熟練度』1

『投槍熟練度』1『見破り熟練度』1『火の精霊術熟達度』1


<特性>


『打撃防御』 段階3→6

『斬撃耐性』 段階3→6

『刺突防御』 段階1→6

『圧撃防御』 段階2→5


『毒害無効』10『聖光耐性』6『炎熱耐性』5『腐敗耐性』3


<技>


片手剣・短剣

『しゃがみ払い』 段階9→10→『地走り』 段階0→2

『三段突き』 段階5→8

『三回斬り』 段階1→6

『両鎌交撃』→『鋏切り』 段階0→2


片手斧・片手棍

『強打』 段階0→3

『裏打ち』 段階0→2


両手剣

『兜割り』 段階0→5

『水平突き』 段階0→4

『弾き飛ばし』 段階0→3


『早撃ち』 段階6→8

『二連射』 段階3→5

『重ね矢』 段階0→2

『狙い撃ち』 段階9


『盾撃』 段階5→7


精霊術

『地段波』 段階4→9

『地壁』 段階5

『地槍』 段階2


近接技

『痺れ噛み付き』 段階3

『齧る』 段階3


その他

『飛び跳ね』 段階6→8

『脱力』 段階4→6

『念糸』 段階9

『威嚇』 段階3


未分類

『聖光』0『頭突き』0『爪引っ掻き』0

『体当たり』0『くちばし突き』0『棘嵐』0

『突進突き』0


<戦闘形態>


『二つ持ち』 段階9→10→『双剣士』 段階0→1

『弓使い』 段階7→10→『射手』 段階0→1

『盾使い』 段階7→10→『盾持』 段階0→1

『戦士』 段階0→2

『精霊使い』 段階2→6


 総命数1901→3161



 くう、新能力はなしか!

 これまでは、能力持ちにそれなりに当たってきたのだが……。

 どうもただ単に、運が良かっただけか。

 四十二人もいれば一人くらい何かしら持ってるかと思ったが、実は能力持ちの確率はさほど高くないのかもしれんな。


 よし、気を取り直して、確認だけ済ませておこう。

 習得済みの能力のうち、ムカデ、甲虫、兎は欠かさず集めていたので、こいつらの持っていた能力は、ついに最高段階まで上げることが出来た。


 末端再生の場合、気合を入れると失った指程度なら、一分ほどで生え変わる速さとなった。

 聴覚鋭敏は可聴範囲の高低差が広がったようで、今では人の耳では拾えない音まで聞き取れる。

 平衡制御に関しては、今ひとつ実感はなし。

 あと集団統制が3になって、一度に動かせる下僕骨の数が二倍近くになったのも美味しい。


 技能も新たな習得や増加はなしか。

 まったくもって、がっかり騎士どもだな。


 一応、この三ヶ月の夜間は近辺の生き物狩りや、骨同士の組手を続けてきたので、技能自体はそれなりに向上はしている。

 ロクちゃんは片手剣と短剣を熟達度まで上げたし、タイタスは盾、ニーナは長剣、五十三番は弓とそれぞれ得意分野を伸ばしたりと。


 しかしながら、かなりみっちり遊んだ、もとい訓練したにも関わらず、熟達度の表記になってからは上昇が非常にゆっくりなのである。

 ここから先は、人間が到達できる限界が近いということだろうか。


 それはそうと、この数ヶ月で一番大きい収穫は戦闘技能ではなく、骨会話がついに最高段階に達し新技能に変化した点だ。

 新たに出現した骨通信は歯音をより圧縮出来ただけでなく、指向性をもたせることが出来るようになった。


 簡単に言うと対象の頭骨内に直接、言葉を叩き込めるのだ。

 そしてさらに便利なことに、これは人間にもある程度、有効であった。

 骨たちほどの理解は難しいが、まずまずの意味の込めた言葉を、人間たちに伝えることが可能となったのである。

 これは頭蓋骨の構造が、吾輩たちとほぼ同じなのが影響しているのかもしれない。

 おかげで村人たちとの意思疎通も、かなり容易になった。


 特性も増えてはいないが、各防御の段階自体は稽古で増やすことは出来た。

 理由として、末端再生が強化された恩恵も大きいか。

 少しくらいの損傷なら簡単に直るせいで、遠慮なく戦えるのはありがたい。 


 そして技と。

 これも激しい組手の成果である。

 

 ロクちゃんの必殺しゃがみ払いは、地走りとかいう格好いい名前に変わってしまった。

 あと巨大カマキリの技をアレンジして、鋏切りという技を会得したりと。

 

 片手棍の強打や裏打ちは、タイタスが編み出した技たちだ。

 これまでは盾で接近してからは脱力しかパターンがなかったが、これで攻撃の幅が大きく増えたといった感じである。


 両手持ちの長い剣から繰り出される三種の技は、ニーナの得意技だ。

 特に切れ目なく繋げてくると、その破壊力には眼を見張るものがある。


 五十三番は吾輩をよく手伝ってくれていたので新技はないが、持ち技自体はほぼ全て段階を伸ばす優秀ぶりだ。 


 それと吾輩もひたすら丘を崩していたので、地段波だけは上げることが出来た。

 今回の生き埋め作戦の要となったので、まあ良しとしよう。


 最後に戦闘形態だが、これも大きな変化があった。

 上級職らしきものが三つも現れたのだ。


 具体的にどう変わったのかは分からないが、より強くなったのは確実なようだ。

 あと密かに戦士というのが増えていたが、これは多数の武器を操れるニーナの戦闘形態っぽいな。


 総命数は1260増加で、とうとう3000の大台に到達した。

 だが機能開放はなく、霊域拡大の2段階目の文字も灰色のままである。

 まだまだ、魂が足りていないということか。


 今回の総括として、魂の回収だけなら断トツであったが、他の面で特筆すべきは装備がやや増えた程度しかない。

 もっと強くなるには、結局、遠征で強い相手を探す方が確実であるとの結論になってしまったな……。

 

 回収結果の検証を終えた吾輩は、そのまま畑の方へ足を伸ばした。

 ついでに丸芋の植え付けの進捗を、確認しようと思ったのである。


 下僕骨が一斉に屈みながら作業中のところへ近付くと、骨たちを指揮していたニーナがそそくさと駆け寄ってくる。


「向こうで凄い音してたっすよ! 何かあったんすか?」

「ああ、男爵の手下が来たので、ちょっと罠をな」

「ええっ!!」


 吾輩の言葉に、長身の骨は驚いた顔で麦わら帽子を脱ぎ捨てる。


「敵が来たんすか? 俺っちの出番っすね!」

「いや、もう終わったから、種芋の作付けの方に集中してくれ」

「エッ!!」


 愕然とするニーナの肩を叩きながら、吾輩は言葉を続けた。


「今回は洞窟内に引き込む作戦だったからな。次は期待しているぞ」

「うう、俺っちも活躍したかったすよ……」


 仕方のない話なのだ。

 多分、あの場にニーナがいたら、真っ先に洞窟の外に飛び出していただろうしな。



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