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君の明日を見つめて  作者: 逢坂すずね
シーズン2
12/14

3年後

恋春(こはる)がいなくなってから3年経った。

俺はもう、立派な社会人だよ。恋春が帰って来た時のため、お金を貯めている。今はもう一人暮らし。一人暮らしをしてわかったことは孤独だってこと。

「ピンポーン」

家のチャイムが鳴った。誰だろう?

「はいはーい」

俺はドアを開けた。

「久しぶりだね、夏樹(なつき)

「え?」

俺は見間違いじゃないかと思った。

だって、そこには恋春がいたから。

「恋春、恋春なのか?」

「ふふっ、そうだよ。ねぇ、家に入れてよ」

「あっうん」

俺は自分の部屋に恋春を入れた。

「ここ、いいマンションだね」

「うん。去年できたばかりだからな」

恋春は普通に俺のベットに座って足をバタバタさせてる。

「本当に恋春なのか?」

「もう。夏樹は元カノの顔も覚えてないの?失礼な」

恋春はそう言って頬を膨らませた。

確かに恋春だ。でも、色々と聞きたいことが多すぎて何から聞けばいいのかわからない。

「あのさ、色々と聞きたいことがあるんだけど…」

「何でもいいよ」

何からがいいのか。

「手術はどうなったの?」

「あれから移植手術をして、成功したの。でも、私の体の調子が手術した後からちょっと悪かったから入院してたの。…手術は成功したんだけどね、いつまで生きられるかわからないんだ」

「でも、手術は成功して、寿命も延びたの?」

「うん!」

俺はそれを聞いた瞬間、恋春を抱きしめた。

「どうしたの?」

「よかった。よかった。こっちはすごい心配したんだからな」

「ごめん」

「ばーか」

俺らはしばらく抱き合うと離れた。やっぱりちょっと名残惜しい。

「なんで俺の部屋が分かったんだ?」

「夏樹の家に行ったんだ。前に行ったことがあったから夏樹のお母さんが快く上げてくれたの。そこでね夏樹が引っ越したこと知ったんだ。今、会社員なんだね」

「そうなんだ。俺、母さんから何も聞いてないんだけど」

「あぁ、私が口止めしたからね。ほら、ドッキリサプライズ」

なんだそれ、と突っ込みそうになった。こっちは心臓が止まるかと思ったのに。急に現れるなんて本当にひどいと思う。俺は携帯は変えても恋春から連絡が来るかもしれないから番号は変えなかったのに。

「ごめんって。それより、一人暮らし?」

「一人暮らしじゃなかったら恋春を家にあげてないな」

「だよね。私と別れた後、恋人できた?」

「いいや、ずっと恋春のことを思ってたよ」

「嬉しいこと言ってくれるね。で、会社員って具体的に何やってるの?」

「俺はディスクでの仕事。パソコンで色々と打ち込みとかしてる。週2くらいで外回りも行くよ」

「へぇ~。でさ」

「ちょっと待って」

「何?」

「質問攻め過ぎてちょっと困るんだけど」

俺は質問をどんどんしてくる恋春を止めてそう言った。最初は俺が恋春に質問してたのに。

「ごめん。だって、私は全然変わってないのに夏樹はすごい変わってるんだもん」

「恋春も変わったよ」

「どこが?」

「大人っぽくなった。可愛いから綺麗になった」

俺がそう言うと俺のベットにいた恋春は、床に座っていた俺に抱き着いて来た。強く俺の服を握っている。

「恋春、どうしたの?」

「やっぱり私、夏樹が好き」

「…恋春、恋春のお母さんが許してくれたらだけど、一緒にここに住まないか?」

俺は思い切ってそう言った。今まで恋春と一緒になるためにお金を貯めてきた。だから、恋春が帰ってきた今、俺にとってはそうしたい。だけど、恋春と恋春のお母さんの了承がなきゃいけない。

「同棲ってこと?」

「うん。どうかな?」

「私たち、もう恋人じゃないんだよ」

確かに俺たちはもう恋人じゃない。あの日、別れたから。

「もう一回恋人になればいいし、俺たち、婚約したじゃん」

「そうだけど…」

「ダメ?」

「私はいいよ。でも、お金が…」

恋春が心配していることは分かる。病院に通院するお金や生活費、そう言うことを考えてるんだと思う。

でも、俺だってこの3年間お金を一生懸命貯めたんだ。それなりにある。これからも一生懸命働けば恋春の分くらい頑張れる。給料だってそれなりにもらってるし。

「大丈夫。俺だって今まで頑張って来たし、これからも頑張る。ダメかな」

「本当にいいの?」

「あぁ」

「夏樹、ありがとう。これからよろしくね」

「うん。でも、まずは恋春のお母さんに許可をもらわなきゃな」

「うん!」

俺たちはその後すぐ恋春の家に行って恋春のお母さんと話をした。

恋春のお母さんは快く了承してくれた。

その次の日、早くも恋春は家に引っ越してきた。荷物が少なかったから引っ越し業者は呼ばず俺が荷物を運んだ。

恋春にもやっと、普通の幸せな日常がやって来た。

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