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8章 過去と未来をつなぐ現在

クリスマスだというのにこの海は人が少なく、どこかさびしそうだった。


私たちはあの時、一緒に流れ星を探した場所と同じところに静かに腰をおろした。


どれほど時が経ったのだろうか、静けさがあたりを包みこんでいた。


いろいろな考えが頭の中を駆け巡っていた。



「・・久しぶりだね・・、元気だった?」


長い沈黙を破り、私は不安からか普段ならたわいもない言葉をかすれた声でいった。


「うん、まあまあかな・・」


彼は相変わらず流したような返事をした。


それがかえっていつもと同じようで、私は少し安堵した。


「そうだ!またココア持ってきたんだ、一緒に飲もうよ・・」


私はあのときと同じようにココアをつくってきた。


あの時、流れ星を探したときと同じように。


なぜかあのときのことを思い出した。


彼の未来がみえる前のこと。


あの時までとても幸せだったのに。


あの時、星にかけた願いはかなわないの?


そう思うと涙が溢れ出していた。


涙が止まらなかった。


「なに泣いてるんだろね、私・・・」


彼が横目でみているのに気付き、私は涙を拭きながら、かすれた声でそういった。


「あなたにとって私ってなんなのかな・・。」


彼に言いたいことはたくさんあった。


だけど、それを言う勇気を私は持っていなかった。


彼をくるしめるだけなんじゃないか。


彼にとってわたしは重荷なだけなんじゃないか。


そういうネガティブな考えが浮かんでは消え浮かんでは消え、繰り返していた。


彼は、何も言わずに強く私を抱きしめた。


彼のぬくもりを感じながら、再度、この彼を死なすことだけはさせないと、強く思った。



そうだ、かんがえてみれば、あの未来の映像には私も写っていた。


彼が冷たく寝ている傍らに泣いている私がいた。


もし、わたしが今、彼と別れたらあそこには私はいないのではないか?


そうすれば、私が見たあの未来は、これから起こる本当の未来とは違くなる。


そうすれば、彼は死ななくても済むかもしれない。


未来が変わるかもしれない。


確信はないけれど、その可能性は十分にある。


だとしたら、彼のために、彼の未来のために私は彼の前から姿を消したほうがいいのではないか。


それが一番の方法なのではないか。


そう考えた。


そうだ。


それがいい。


それしかない。



愛する彼のために。



私が彼のために出来ること。




「もう、おわりにしよっか・・」


私は涙を目にいぱっいに溜めてそういった。


やっと声にでた精一杯の言葉だった。


「・・そうか、わかった。」


しばらくして彼が言った。


私を強く強く抱きながら。


私は背中に彼の大きな手を感じていた。



「・・あ、雪・・・」



「・・・ほんとだ・・」



やはり私がみた未来どおり、この日はホワイトクリスマスになった。


未来は変わらない。


変えるためには、これでいいのだ。


私の選択は間違っていない・・・そういいきかせていた。



天使の羽の様に舞い落ちる雪の白さと、どこまでも続いている海が二人を包んでいるような気がした。



私は涙が止まらなかった・・・。


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