本当ならドキドキ展開。
授業は終わり、教室を出たところで花恋と別れた。
私の目的地はもちろん教員室だ。
前を歩く姫の歩くペースはやたら早い。
怒ってるのか、早く終わらせたいのか、あるいは両者か。
ちなみに、さっきうっかり出してしまった翼は姫が戻してくれた。
そんなこともできるってすごいよね!
私もこれからできるようになるのかな?
教師だからできるのかな?
「着いたわよ。」
扉の鍵を開けて中に入る。
目立つものはテーブルとかソファくらいのシンプルな部屋だ。
「今は誰もいないしどこでもいいから座っといて。」
そう言うと、姫は奥の部屋に入っていった。
とりあえず近くの椅子に座る。
まったくあの子(※仮にも教師です)はー。
みんなの前ではキャラを保ってたけど、2人になった途端に不機嫌オーラ全開だったよ。
ちよっと怖かったよ。
ほら。
今思い出しても悪寒がーーーーとまではいかなかったね、うん。
だけど相当怖かったから!!
あれだ。 姫は怒るとすんごい怖いタイプだ。
どうせ誰もいないんだったらえっちな方向の呼び出しが良かったなー。
ちょうどソファもあるし
「そこで甘い蜜月を過ごした2人の禁断の関係は、どんどん深みにはまっていくのであった。」
めでたしめでたし。
「な、何考えてんのよ!」
「おわっ!?」
いつの間にか姫は、ティーカップを2つおいたお盆を持ってきてくれていた。
奥に行ったのは、紅茶を淹れてくれるためだったみたい。
「ありがとう!!
お盆持つからそんなに怒らないでよー。」
席を立ってお盆を受け取る。
「あれ、手が震えてるよ?
…妄想したら興奮しちゃったんだよね、わかるよ。」
「だ、だ、誰がそんなこと!
大体妄想してたのはあんたじゃない!!」
「あ、やっぱバレました?
……でもね、姫。
妄想をさせたソファが悪いんだよ!
犯人はこのソファくんだ!」
ピシィ!
犯人をドヤ顔で指差してからのテレビとかでよく言われてるセリフ。
決まった………!
姫をちら見る。
絶賛呆れ顔続行中☆
今なら120円でありがたい罵倒を頂けるよっ
さぁ入った入ったー!
「はぁ、ほんとあんたは…。」
……このままじゃなんかいたたまれないぜぃ!
「も、もぉ、ソファくんったらぁ」
ソファくんをペチペチする。
「…ねぇ、なんで私が呼び出したかわかってる?」
あ、本題に入るらしい。
ジト目に耐えるのがそろそろ辛くなってきたからちょうどいいや。
「んーと、授業内容と違うことしてたから怒ってるとか?」
「そんなことで呼び出さないし怒らないわ。」
「さっきの不機嫌オーラは?」
「え、そんなオーラ出てた?」
質問で質問で返されてしまった…
「そりゃあもう! ずっと無口だったし。」
「もしかして、考え事してるとそうなっちゃうのかしら。」
な‥…ん……だ…と……?
あの恐怖に震えた時間は無駄だった‥…と?
「私の恐怖を返せーっっ
うぅわああああ!」
「能力ってね、ほんとに具体的なイメージを持ってないと発揮できないのよ。」
発動しましたスルースキル!
「いいもん! すねちゃうもんねー」
必殺ふくれっつら攻撃!!
「それもその能力を使う経験をしてないと抱けないくらいの強いのをね。」
連発とな。
もうだめだ……。
これ以上は戦えない…。
…悔しいけど今回は大人しく聞いとくか。
「だから最初の授業で、あなた達にそれぞれの能力経験の記憶を脳に叩きこむ予定なの。
つまり、それを受ける前に能力を使うことは不可能に近いわ。
この学校が出来てからもこんなことは初めてなはずよ。」
「ふむ。
ってことは……はい、先生っ
ガチャしてたら幻かってくらい誰も引いたことがない超激レアアイテムがでてきちゃったレベルのイレギュラーさってことですか!?」
「例え話が何言ってたか分からないけど、イレギュラーなのは確かね。
さぁて。 なんで能力が使えたのか白状しなさい?
……まさか、実はもうここを卒業してたとかじゃないわよね?」
卒業してるってことは私がもうすでに18歳超えてるかもって疑われてるってこと?
まだピチピチの16歳だコノヤロ♡
「自分でもなんで使えたのかあんまわかんないんだけど……。
疑うなら戸籍見てみろやいっ」
「えっ」
「ちょ、そこ。心底びっくりしたような顔しないでよ!」
あーもー なんか今度はがっつり考えこみ始めたし。
「おーい姫ー」
反応なし。
「ひいいめえええええ」
姫の顔の前で手をぶんぶん振り回す。
だんだん焦点が合ってきた。
「はっ、ごめんごめん!
でもそれ以外だったら何があるって言うのよ。
自分が能力を使う感覚を知ってないとだめなのに。」
「感覚かぁ…………。 中…二…‥病?」
「なによそれ。」
「なーんでもないよー。 あはは」
笑ってごまかして紅茶を一気飲みする。
程よく冷めてきておいしいなぁ。
それにしても今のは危なかった。
知られる必要がないことを教えてしまうとこだったよ。
でも、今までの話だと実際これが一番可能性たかいと思うんだよねー。
誰に話しても笑われてきたけど、物心ついた時から何百回空飛ぶ夢を見てきたことか、だよ!
だからその感覚とか知り尽くしてる。
今まで何回も飛ぼうとして、高いところから飛び降りては怪我してた。
それでも本気でいつかは空飛べると思ってるし。
いや実際はもう昨日から飛べるようになってるのか。
ま、半半中二病くらいだねっっ
「よし、わかったわ!」
ドドンっとドヤ顔で立ち上がる姫たん。
おかげであんまり飲まれてなかった姫の紅茶が盛大にこぼれた。
「今日からできる限りあんたと一緒にいて謎を暴いてやるわ!!」
「え、なに? それって美少女に監視されるご褒美ツールですか?!」
「ぜんっぜん私的理由なんかなくて、担任としてなんだから変な妄想しないことね!」
「照れんなよー」
「ばっ、そんなわけないでしょっっ!!」
手で必死に赤くなった顔を仰ぎ始めた。
気温的には全然暑くないから図星ってことだよね?
かわいいなー。 むふふ。
「とにかく!
能力の制御は練習しないと出来ないから、授業が始まるまでは絶対に使わないこと。
授業では隔離空間っていう、そこで起きたことはその外には影響を与えずに済むっていう空間を使うから。
隔離空間の作り方は別の授業で教えるわ。」
「そんな空間作れるんすか!?」
「能力者になった時点で一般人にはできないことも出来るようになったりしてるのよ。
あと、今のあんたなら能力の名前をつぶやくだけでも能力が使えちゃうから気をつけなさいね。」
ってことは、『フルーク』は禁句だね。
「イェッサル!!
ついでに次回の呼び出しは、姫がいきなり服を脱ぎだして私を誘惑してくるってルートでよろしく!!」
「ーーーーーっっ!!!! 」
クールダウンしてきた顔に再び火がつく。
「ばああかあああああ!!!!!!!」
パンッパンッパンッパンッパンッーーーー
何が起きたかはお察しを。
往復ピンタ的なものですわよねー。 ホホホ