セスカファミリーのゆくえ
その日の晩、俺たちは王都の冒険者ギルドに初めて入った。中は大ホールになっており、家具はほとんど置かれていない。テーブルは書き物に必要な数台のみだ。クエストの掲示板はレベルごとに七つに分かれている。そこでは、待ち合わせ・各種申し込み・報酬の受け取り等に何十人という冒険者がうろうろしている。
俺たちは個別相談カウンターに入った。以前と同じ顔のNPCさんがいる。データの使い回しか。
俺はセスカに教えてもらったセリフどおりにしゃべる。
「レベルを調べてもらいたいんだけど」
「いらっしゃいませ、こんにちは。レベルの確認ですね。まず実力をはかるために、この石板に利き手を当ててください」
俺は石板に右手を当てながら「キャッシュをクリアして、すべてのレベルをカウントし直してください」と言った。NPCは「了解いたしました。キャッシュをクリアし、すべてのレベルをカウントし直します」と返答した。
そして注目の結果は!
「ファイターレベル:1
マジックユーザーレベル:0
プリーストレベル:0
シーフレベル:16777215」
セスカは驚いている。
「本当のホントに千六百万レベルなの?」
「本当らしい。やろうとは思わないけど銀行強盗ができるかもしれない。王都にやってきていつも気になっていたんだ。そこらじゅうのドアや金庫の鍵。ほとんどが既製品で全部ニ秒以内に開けられる。魔法の鍵やトラップも、ちょっと集中するだけで発見できるし、解除の方法もわかってる。千六百万レベルっていうのはそういうことなんだと思う。そして、こう……」
俺は話しながらセスカの肩に右手を置いた。
「そして、これ」
今度は左手からセスカの財布を出した。セスカはいかにもあきれたといった声を出した。
「また? こんどはいつやったの?」
「今セスカの肩に触れた瞬間だよ」
「本当に? まるで見えなかったわよ」
「そう。普通の人には見えないような速さでのスリが可能だ」
セスカは若干引いているようだ。
「まるで魔術ね……」
「俺にこの能力を与えたのが誰なのかはわからない。与えられたのがなぜこの能力なのかもわからない。盗みたいものも特にない。セスカはどう思う? セスカファミリーとして、この能力を何に使いたい?」
「ちょっと待って、今考える……」
「銀行強盗はだめだよ。貨幣はかさばりすぎるし、そう何度もやれるもんじゃない。宝飾品もだめだ。簡単に足がつく。強力なマジックアイテムも無理だ。もし盗んでも自分で使うほかないだろう」
「うーん。考えている途中にあれこれ言わないでちょうだい」
セスカは目を閉じて両手の人差し指をこめかみにつけている。
「詐欺をやりましょう」
俺はちょっと驚いた。セスカもこの力を持て余してしまうと思っていたからだ。無意識に「使い道がない」という答えを期待していたんだろう。
「なるほど。それは誰を相手にして何を奪うんだい?」
「この国の王位を狙ってみない?」
「そんなことが出来るのか? そんなだいそれたこと、漁村の小悪党ができることなのか?」
「漁村の小悪党とは言ってくれるわね。私も具体的な方法までは思いついてはいないけどね。盗むなら一番大きいものを狙わない?」
「いいかもしれないね。セスカが望むならそれに従うよ」
「よし! じゃぁ、明日は大図書館に行って王家の事を勉強しましょう」
「え、そっからなん?」




