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英雄伝説  作者: かなたみ
一章
4/57

友達

「いよっし! 逃げ切った! 逃げ切った!」

 結果的に栄治となーちゃんの二人を囮にしてまなかはグッとガッツポーズする。

 手を引かれて一緒に逃げてきたイマナは息切れを起こしていた。

「はぁ……っ。つ、疲れました……」

「こんなんで? まだ一キロも走ってないよ?」

「私は文系なの! そっちみたいに年がら年中走り回ってるわけじゃないのよ!」

 ぜーはー、と息を大きく吸い込みながら反論する。

「貧弱だなぁ」

まなかは一言そう呟き、そのままイマナが息を整えるまで口をつぐんだ。

「……ねぇ、愛瀬さん」

「何?」

 呼吸が次第に整ってきた頃、イマナはまなかに尋ねる。

「心配じゃないの? その……一緒にいた男の子のこと……」

「栄治のこと? んーん。全然気にしてないよ。あいつは強いし」

「そう、なんだ」

 イマナにはなーちゃんに投げられたという所しか印象に残っていないため、まなかが言っていることがにわかに信じ難かった。

 イマナが少しだけしかめっ面をしていると、今度はまなかがイマナに尋ねる。

「それよりさ、あなた良い髪の毛の色だね! ハーフか何かなの? 似合ってるよ!」

「えっ!? えっと、これは……」

 まなかの唐突な質問に、イマナは言葉に詰まる。そして、今までのトラウマが蘇ってくる。

「えっと、その……」

「目も真っ赤だね! まるでうさぎさんだ!」

 考えればイマナは同級生とまともに話すのなんてなーちゃんだけで、他の人とはロクに話もしなかった。

 ずっと、自分の病気で虐められていたのだから。

「そ、その……」

 先ほどまでは唐突の連続で勢いに任せて喋れていたが、我に返ると一気に言葉が見当たらなくなる。そして、ひどい恐怖が全身を包まれる。

 早く何かを言わなければいけないという恐怖観念と、緊張により舌が回らなくなっていた。

 ようやくなーちゃんと言う友人を作ったのに、自分は何も変われていないということに気づかされてしまう。

 なーちゃんのいない自分は、また虐められてしまう。

 そう思うと一気に喉が乾いていくのを感じた。

 何かを言おうとするイマナを、まなかはじっと見つめた後、何かに気づいたようにはっとした表情を作った。

「……あー、もしかして言いにくい事情でもあった? それなら謝る」

「い、いや違うの!」

 イマナの心情を知らずに、まなかは地雷を踏んだのかと思い謝ってくる。

 それを見たイマナは、ようやく言葉を吐きだすことができた。そして立て続けに言葉を繋いでいく。

「わ、私……病気で白いの。アルビノっていう体から色素が抜ける病気で……」

「びょ、病気!? ご、ごめん。そうとは知らずに興味本位で聞いちゃって」

 それを聞いたまなかは驚愕した後、頭を下げる。

「べ、別に良いよ。日差しに当たらなきゃいいだけだし、体調がおかしくなる訳じゃないから……顔上げて?」

 イマナは諭すように優しくまなかに言う。しかし、まなかを頭を下げたままゆっくりと首を振った。

「いや。人が嫌がっていることなのに、無理に聞こうとしたあたしが悪かったの。ごめんなさい。あたしはあなたを傷つけた。それは正義の味方にあるまじきこと。お詫びの一つでもしないと気が済まない」

 お詫びしなくていいから、早く首を上げてほしいなあとイマナは思ったが、声には出さなかった。そんなこと言えば、きっと土下座までしようとする勢いだった。

 その姿は今まで伝聞で伝わった『口撃の女王』の二つ名に全くかけ離れたものであった。

「え、えっと……」

 さて、不良の集団から何とか逃げたと思うと、今度は『口撃の女王』に頭を下げられている。なーちゃんと出会ってからハプニングの連続である。しかも、今回は頼みのなーちゃんもいない。イマナを助けてくれる人物は誰もいない。

 自分でどうするか、決めるしかないのだ。

(もし小説を書いている時にこんなことが起こったらどうしよう……)

 一瞬、そんな考えが頭をよぎったが、それを振り払うかのように大きく首を振る。

(私はキャラクターじゃない。イマナというキャラの思考をしてどうするんだ)

 キザッたらしい言葉も、明るく振舞っている言葉も、根暗な言葉も、全て違う。

 自分の言葉を見つけないといけないのだ。でないと、今目の前で頭を下げている少女に失礼だからだ。

(お詫び……か)

 お詫び。悪い事をした相手に対する誠意の見せ方の一つ。

 そんなことをしなくてもいいと思うが、この調子ではきっと彼女は許さないだろう。

 ならば考えなくては、自分が利益になり、相手も不満を持たないモノを。

「あっ」

 その時、天啓がイマナに舞い降りる。というより、それしか見つからなかった。

(いいのかなぁ……)

 とも思うが、それでお詫びになると思ってくれるなら、それが一番いい手段だった。

「じゃ、じゃあ! お詫びしてくれるんですね?」

「うん。うぬの命だぁっ! とか以外なら」

「言わないよ!」

 少し前から思っていたが、このまなかという少女はアニメの見すぎじゃないだろうか。それも、勧善懲悪物。

「それじゃあ、言います」

 まなかはゆっくりと顔を上げ、ごくりと唾を飲み込む。

 イマナはまなかにゆっくりと手を差し出し、

「と、友達になっひぇ!」


 噛んだ。

 めっさ噛んだ。

 噛んじゃいけないとこで噛んじゃった。


「…………」

「…………」

 二人の間をさだまさしの『北の国から~遥かなる大地より~』が流れていく。

「……友達になってください」

 永久凍土のツンドラ地帯の中で、イマナは再チャレンジする。

「…………」

 まなかは黙ったままだった。

(失敗した……!)

 この恐ろしい空気の中でイマナは自分のミスを呪う。雪山に七人で遭難して、六人分の食料しかなければきっと最初の犠牲者は自分だろうと思った。

 しばしの沈黙の後、まなかが口を開く。

「……そんだけ?」

「……はい。そんだけです」

 全く声に覇気がないが、今のイマナに元気を出せというのが酷である。

「……もっかい考えてくんない?」

「えっ!? お友達無理っ!?」


 驚愕の返答だった。まさかのお友達拒否。お詫びですら嫌なのだろうか。

「いや、さ。お詫びってもっと別のものじゃない? 物とか要求していいのよ? 五百円までだけど」

 思ったよりケチなお詫びだった。まさかの金額指定。

「それに、さ。友達ってそういう風になるもんじゃないでしょ? 自然と出来るものじゃない?」

「それは……難しいです」

 いつの間にか普通に立ち上がっていたまなかの言葉に、イマナは首を振る。

 イマナには自然と出来るように対応できない。

 今まで仲間に入れてもらえなかったイマナはいつの間にか、自らグループに入ろうとしなくなっていた。

「怖いんです、人が。皆が私を笑っているようで――」

 自分が自分の居場所を否定する。なーちゃんと付き合い始めたイマナは、そんなことを最近思い始めていた。

 だから、なーちゃんのそばしか居場所が無いように感じた。いや、なーちゃんは笑っていないという事実が欲しかった。だからそばにいようとした。

 監視して、自分が笑われない場所を確保していたかった。

「自分すら、私を嘲っているようで……」

「だから、友達は契約なんです」

 出来るのではく、作る。

 自分を笑わない友達を。

 その言葉を聞いてまなかは、

「その考え方はおかしいよ」

 真っ向から、否定した。

「っつ!」

 まるでカッターナイフで切られたかのような痛みが胸に突き刺さる。

「そんなの友達じゃない。ストーカーとアイドルだよ。知ってる? アイドルはね、いつでもどこでも誰かに監視されているの。ファンっていうね、自称アイドル好きの奴に。でね、ファンはね良いファンと悪いファンに分かれるの。良いファンは純粋にアイドルのことを応援する人のこと。悪いファンはね、アイドルが自分の理想のままかを確認するためにプライベートに介入をするの。そして理想じゃなきゃ、壊すか、脅して理想を強制させようとするか。狂ってるね。少なくともあたしは狂っていると思うよ。そして、君の考えはまさにそれ。部屋に入ってくるGとおんなじだよ。ガンダムじゃないよ。ゴキブリだよ」

 冷静に、冷徹に、イマナを叩き割る。

 気が付けばまなかのいた場所には、テンションが少し高いちびっ子の姿は無く、

『口撃の女王』という異名を持った人物が立ちふさがっていた。

「う、あ……」

 イマナは今度こそ、言葉を失う。

「ごめんね。お詫びをするって言いながらこんなこと言われるなんて誰も思わないね。けれど言うよ。その友達の定義の根本がねじ曲がっている君に言うよ。それは友達じゃないよ。依存だよ。友達はそんな強迫観念を持って付き合うものじゃないよ。居心地いい場所が友達じゃないよ。契約じゃないよ。契約して魔法少女になったって、理想は無かったんだから」

 まるで真綿で、思い切り締め付けられているような感じだった。

 優しく語りかけるように言われているのに、言葉はバラの棘のように突き刺さっていく。

 以前呼び出されて、ノートを破られた時よりも、違う痛み。真っ向から存在を否定するイマナにとっての悪意。

「苦しい?」

「…………っ」

「苦しいね。ごめんね、君は何も悪い事はしていないのにね。けれど、何もしないのも悪なんだよ」

「……じゃあ、どうすればよかったんですか」

「…………」

「傷つくのを承知で、輪に入ろうとすればよかったんですか? 気味悪がられているのに。輪に入っても何も出来ないのに。外にもロクに出られないのに。普通以下なのに」

「そんな言い方は、駄目」

「あなたが言ったんです。あなたの正論が、そうさせた」

 既にイマナの中で、『口撃の女王』は敵と認識されていた。

「あなたは正しいです。真っ直ぐです。きっとその発言同様に動くことも出来るんですね。羨ましいです」

「…………」

「強いです。私ではどうしようもないほど高みに立っています」

「弱いよ」

 『口撃の女王』は噤んでいた口を開く。

「あたしはすごく弱い。腕っ節は貧弱だし、背もそこまで高くない。みんなを見上げている」

「そんなのは関係ない」

「関係あるよ。あたしは弱い。正直、一人であいつらと対峙する時なんて足が震えっぱなしだもん。なんでこんな馬鹿なことをしているんだろうって、そう思う」

 けれどね、そう彼女は繋ぐ。

「あいつが、栄治が来てからはそれも思わなくなった」

 誇らしげに、彼女は胸を張る。

「あいつはどんな時にでも近くにいる。あたしを守ってくれている」

「……本当に?」

「本当よ。あたしはあいつを信じているから。どんな時でも、駆けつけてくれると信じているから。だからあたしは、ヒーローしてられる」

 何が、とかどうしてとかいう言葉は浮かばなかった。ただ、目を見ればわかる。

 輝いているのだ。疑心暗鬼とか、見下したような目ではない。心の底から、伊豆奈栄治という人物を信頼している目だった。

「まあ、たまーに喧嘩もしたりするけど……けれどさ、友達ってそういうものでしょ?」

「喧嘩するのが……友達?」

 日常モノが跋扈(ばっこ)する現代では、あまり見なくなった友情モノ。

 友人だった二人はすれ違いを起こして離れるが、あるきっかけを掴んで二人はまた仲直りし、より強固な友情へと進化する。

 イマナにはまだ理解できない。

「そ。あたしたちは人間だからね。栄治のことだって、たまにむかつくことあるし、あなたの連れの……なんて名前?」

「なー……」

 言いかけて、とふと気がつく。

 名前で彼女のことを呼んだことが無かったな、と。

「畠瀬……畠瀬(はたせ)なちって言うんだ」

「畠瀬さん……あの貞子みたいな奴、ずいぶんと普通に女の子の名前じゃない」

「あはは……」

 先ほどまで、少し険悪だった雰囲気が和らぐ。けれど、自分の敵だということを思い出し、少し気を引き締めた。

「あいつは、むかつくわね。人のことちび扱いしやがって……あー、いらいらする。けれどさ、これって単なる第一印象な訳なのよ」

「……?」

「次に会った時はもっと別の印象を抱くかもしれないってこと。良くもなれば、悪くもなる。もしかしたら、気が合うかもしれないのに第一印象だけで決めちゃうのって、すごく損な気がするんだ」

 そう言って、まなかは笑う。

 そうだ。この顔が私に思わせるのだ。イマナは思う。

純粋で、どこまでも自分には届かない場所。

『口撃の女王』ではなく、愛瀬まなかの強さ。

「作るとかさ、そんな悲しいことは言わないで」

「あなたにとって悲しくても、事実です」

「そんなことないよ。ほら」

 そう言って、まなかはイマナに手を差し伸べる。

「友達になろう?」

 簡単に。いとも簡単に彼女はやってのける。

 振り払いたくて、掴みたくて。

 イマナは視線を落とす。

 自分が最初に発言した言葉なのに、いざ自分に言われると何も言えなくなってしまう。

 何か裏があるのではないのか、そう勘繰ってしまう。

「大丈夫だよ」

 まなかは言う。

「あたしは、あなたを信じるから」

 どうしてそんなに平気な顔であなたは言えるの?

 信じるなんて、そんなに、簡単に……。

「掴みなよ」

 その時、背後から聞こえ慣れた声がした。

 振り返ると、そこには二人いた。

 なーちゃんこと、畠瀬なちと囮役だった伊豆奈栄治の二人だ。

「少なくとも、私よりはまだそっちの方がましだよ」

「っ! そんな言い方!」

「あっ、そこの貞子。あんたもあたしの友達だから」

「……はぁっ!?」


 一拍置いた後、なちは驚愕の声を上げた。

「うぇ!?」


 隣にいた栄治もなちの声で驚いた。

「この子と付き合うってことは、どーせあんたとも長い付き合いになりそうだし、友達になっておいた方がいいなと思って」

「おい! 別に私は……」

「なーちゃん……」

「うっ……」

 イマナは少しだけ寂しそうに顔を落とす。

 なちがたじろぐ。

 それを見た瞬間、イマナは気付く。

(可愛そうだったから)

 なちがイマナを見る目はまさにそれだった。

 要は、二人は友達でなく、単なる知り合いというだけで、たまたまそばにいて、たまたま一緒にいただけなのだ。

 イマナはそこが居心地が良く、

 なちはどうでも良かったのだ。ただ悲しげな顔を見たくないだけで。

 イマナは瞼を閉じる。

「愛瀬さん」

「うん?」

「なれるかな? 友達に」

「あなたが望めば。簡単にね」

「そっか」

 瞼を開く。そして、伸ばされた手をゆっくりと取った。

「ありがとう。これからよろしくね」

「うん。よろしく、井美さん」

 言い終えたイマナはまなかから手を離し、にっこりと笑顔を作った。

「やっぱり可愛いよ井美さんは。その髪に似合っている」

「愛瀬さんだって、可愛いよ」

「それはちびっこいから? ちびっこ補正?」

 まなかの顔が一瞬不機嫌そうに曇る。

「違うって」

 イマナは少し苦笑しながら、まなかからなちへと視線を移す。

「畠瀬さん」

「……何? イマ」

 今までなーちゃんとしか呼ばなかったイマナに、少しだけ驚きの表情を見せる。

「井美でいいよ。まだ、私たちはそこまでの仲じゃないから」

「……そうか、わかったよ井美」

 なちは、ゆっくりと口元に寂しげな笑みを浮かべる。するとすかさずイマナは大きくはっきりとした声でしゃべり始めた。

「さて、そんな畠瀬さんに聞きたいことがあります!」

「えっ? あ、うん……何?」

「私と、友達になっていただけないでしょうか!?


「……へ?」

「髪もちょっと人とは違う色だし、日差しには入れない上に性格も捻くれているけれど、私は! あなたと友達になりたいです!」

 そう言い終えるとイマナは、まるでプロポーズかのように、右手を差し出し、頭を下げた。

 それを見たなちは、一瞬だけきょとんとし、

「……ふっ、ふふっ。なるほど、そうだね。確かにそこまでの仲じゃなかったみたいだ」

 前髪をかきあげて、静かにはにかんだ。

群青は優しくイマナを見つめていた。



「ね? 簡単だったでしょ?」

 まなかが、イマナの後ろから顔を出して自慢げに言う。

「ということで貞子、お前もあたしの友達だから」

「井戸に引き込むぞ。クソチビ」

 何が悪かったのか、なちとまなかは口々に罵り合う。

「やれやれ……まなかさんが、あんなこと言うってことは何かあったみたいだね」

 イマナの隣に、先ほどまで黙り込んでいた栄治が並ぶ。

「何か無かった方が、よかったですか?」

 主に自分のことを話していたイマナは、少しだけ口をとがらす。

「そんなことはないよ。まなかさんのやることはきっと、いいことだから」

「……どうして信じられるんです?」

 他人なのに。その言葉は飲み込んでイマナは尋ねる。

「まなかさんが、正義の味方だからよ」

「正義の、味方?」

 うん、と臆面もなく栄治はうなずく。

「いつもあの人たちに追いかけられてばかりだけど、まなかさんはいつも自分が正しいと思った道を歩き続けてるよ。やり方は様々だけどね」

「それが、間違った道でも?」

「少なくとも今はまだ間違えてないなぁ」

 栄治は苦笑して、目を細める。

「もし間違えたら?」

「その時は全力で止めるよ」

 即答。栄治の言葉には迷いが見当たらなかった。

 それを聞いたとき、イマナはまなかが言っていたことをなんとなく理解した。

「あなたも、正義の味方に?」

「違うよ」

 これも即答だった。

「僕は、そんな崇高なものにはなれない」

「そう、ですか……」

 ちらり、と栄治の表情を見るが、そこからは何も読み取れなかった。

「ただ」

「ただ?」

「あの人なら、きっとなれるよ。」

 正義の味方に。そう彼は断言する。

「正義の味方は知らないけれど、私も英雄なら知ってますよ」

「そうなんだ」

「はい」

 正義の味方(自称)と英雄(他称)は、まだ罵り合いを続けていた。



「それじゃあまたねー!」

 イマナたち四人は、一緒に帰り道を行こうとしたが、校門前の分かれ道ですぐに別れてしまった。

「ちょうど反対側とは……」

「清々する」

 なちの存外としたセリフに少し苦笑しながら、イマナは残念そうにまなかと栄治の後姿を眺めながら、日傘を回した。

「仲、良さそうだね、なーちゃん」

「まあ、一緒に馬鹿してる仲だからなぁ」

 まなかの明るい笑顔と、栄治の苦笑いを見ていると、それだけで二人の関係の一端が垣間見えた気がした。

「てか、なーちゃん止めたんじゃなかったのか?」

「もう友達だからいいのです」

 ふふん、と少し胸をそらすイマナ。

「そうなのかねぇ」

 はぁ、と軽くため息をつきながら、イマナに追従するなち。

「なーちゃん」

「何、イマ?」

「私、初めて友達が出来たよ」

「ああ。そうだな」


 イマナにとっての初めての友人との帰り道は、

 英雄にとってもは初めての道だった。





「……英雄」

 そんな二人を、じっと監視する一つの目があった。

 淡々と、干渉もせず一言だけ呟き、にっと唇を釣り上げる。

「ようやく対等になった……あなたと」


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