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うちの妹ってS.Mになっちゃうんだよね

『雅楽再解放部』の部室を後にし、私は『よろず部』の部室に戻ってきた。

 部室には三春がいた。机にプリントを広げ、右手で計算機をポチポチ叩いている。


「ただいまー」

「ああ、おかえり。なんかわかった?」


 三春は手を止め、こちらを見て尋ねる。笛の件をすでに彼女に話していた。


「ううん。あそこの人たちにもよくわからないって。それどころかさ、部長さんでも、音を出すもできないんだよ? やっぱりこれってなんかあるよ」


 私は三春の向かいの席に腰を下ろした。

 そんな中、三春は再び手を動かし始める。


「じゃあもう、オカルト系の部にでも行ってみた方がいいんじゃない? 『SF部』ってそういう部じゃないの?」

「いや、あそこのあれはSmall Factoryの略で、実質工作部だよ」

「……じゃあ工作部でいいじゃん。なんでそんなややこしい名前なの?」

「創部した人の名前が佐藤二三男(ふみお)だったからだとか」

「イニシャルかよ」

「イニシャルと言えば、うちの妹ってS.Mになっちゃうんだよね~」

「うわぁ、超どうでもいい」


 本当に心底どうでもよさそうな顔で呟く三春の手元を、私はそっと覗いた。


「署名、どのくらい集まった?」

「今400人弱かな」

「そんなに⁉」

「やっぱり各部の部長が動くと強いね。特に樫井部長なんか、一人で百人分くらい持って来てくれたし」


 署名というのは、『よろず部』廃部に反対する署名である。これを集めて『審問会』で生徒会に見せつけるのだ。

 昨日、私のもとに謝りに来た部長さん方に、私がお願いしたのはそれだった。

 私の今の一番の願いは、『よろず部』がこれからも残り続けることだ。


「うちの学校が全部で千人くらいだから……ええと、何人分くらい集めればいいのかな?」

「ちゃんと決まってるわけじゃないけど、半分集まればもう十分でしょ。『美丘部(略)』なんてしょっちゅう『審問会』にかけられてるけど、いつもこの署名で男子票全部集めて廃部逃れまくってるし」

「顧問の権田浦先生が何かしてるっていう噂もあるけど」

「何かって何よ」

「うーん、それは知らんけど。うちの部無くしたらいてこまっそ的な?」

「えー、さすがにそこまではしないでしょ」

「うん。でも……」


 私は一つのことを思いつき、身を乗り出す。


「どっちにしろ味方は多い方がいいよね。生徒教師問わず!」

「それはそうだけど……ちょっと待ってあんたまさか」

「そのまさかさ」


 私はやおら立ち上がり、こともなげに言った。


「権田浦先生を味方につけよう!」


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