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冬将軍の力

あと2話で完結します。今回は、冬将軍パウロ・パインウェイブの誕生と様子についてです。

パウロ・パインウェイブは、すぐに意識を取り戻しましたが、その目はすでに紫色をしていて、元の黒目とはかけ離れていました。

「目的地に行くぞ。」パウロは静かに不気味な笑みを浮かべていました。側近は、彼について寒さでいかれてしまったのだと思っていました。

目的地として尋ねたのは、トマン村と呼ばれる集落でした。

「パウロ様、何とかしてくだせぇ。」農民がすがりついていました。

「そなた、何があった。トマン村の新領主として民の思いとあらば、聞き入れようじゃないか。」

「実は、近頃、ウィーブパディの軍が攻めて来るのです。助けて下さい!」

「そなたの望み、聞き入れよう。この地に二度と攻め入って来られぬように、損害を与えようぞ。」


「トマン村よ!よく聞けー!速やかに投降すれば、金一封差し上げよう!だが逆らえば許さん!」ウィーブパディの軍が村の入口で叫びました。

「ウィーブパディの者、よく聞けよ。我は屈するつもりは無い。速やかにご退出願おう。」パウロはドスの利いた声で、威厳に満ちた様子でゆっくりと怒鳴りました。

「何だと?ウィーブパディを舐めんじゃねぇ。」指揮官が剣を抜いて攻めかかると同時に、パウロのイメージによる吹雪が軍隊を取り囲み、その凍傷能力によって次々と倒しました。

トマン村の人口、およそ100人に対して1000人の兵力でしたが全滅ということになりました。

レオナルド・ウィーブパディは最初怒りに震えましたが、すぐに恐怖を感じました。


その後、内戦状態にあった国内で、このトマン村だけが誰にも侵されないタブーな地域となりました。それからというものトマン村は平和な村でありますが、閉鎖された地域となりました。人々によってトマン村は人喰いの村だとかあらぬ真実が拡大され、近づくことが出来にくくなりました。


パウロの様子は、冬は問題がありませんでしたが、春になると動かなくなっていき、夏になると地下室に籠ることになりました。家来は、パウロの寿命は残り僅かだと思っていました。

「夏は好かん。あまりにも暑すぎるのでな。よく皆、夏を楽しそうに迎えているものよ。俺がもし外に行くことがあったら、蝉のように路上で死ぬであろうな。」彼は地下室にてそう言っていました。


彼の食べるご飯から湯気は立ちませんでした。湯気が立った味噌汁やご飯を出そうものならすぐに打ち首になりました。おかずは基本的に、刺身などの生物なまものが中心であり、パウロの住んでいる村長宅からは一切煙が立たないので、パウロは住んでいないのではないかと思われるほどでした。

風呂にも入らず、ただ香水を好んで纏っているのみでした。虱とかの心配をしていますか?とんでもない。彼の体は、マイナス三十度の体温であり寄生するものは何もありませんでした。


「この体でいれば細胞も傷つくことはありません。パウロ様の肉体は千代も乗り越えてゆくでしょう。」

「それはうれしいなあ。皆、末代まで仕えよ。一族郎党。我がカリスマ性によって永遠に治めるのだ。」

その国は150年ほどパウロによって治められてきました。

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