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君が好きだと言わなきゃ始まらない!

作者: イブ

文章の練習です。


考えていた物語ですが長編にするより短編にしました。


読んだ方が少しの時間楽しめましたら嬉しいです。

先輩はいつも自分の世界にいる。先輩の世界では私は脇役モブでしかない。



……知っているよ。私って地味だからさ。



先輩は簡単に好きの一言を強請ねだるけど女の子にとっては大切で勇気のいる言葉なんだよ。



ねぇ先輩、私たちは目の前にいるよ?


ねぇ先輩、私たちは触れ合える距離にいるよ?


ねぇ先輩、私たちはなんで噛み合わないの?



先輩にとって私はどうでもいい存在なんだろうけど私を先輩の世界に巻き込んだのだから責任取ってくださいね?













目立たないように生きていた私の人生は高校入ると共に全てがガラリと変わった。


それは学校生活に慣れてきた頃の事だ。

いつも騒がしいクラスが急に静まったのがことの始まりだった。

私もどうしたのだろうと気になり、視線を元凶に向けると意外な人物が堂々と教室に入る姿が映り、思わず目を見開いてしまった。



その乱入者は入学した時から目立つ容姿と目立つ行動で新入生の間でも噂になっていた。爽やかな甘いフェイスの彼は黙っていたら学校一のイケメンなのだが近づいてはいけない変わり者として有名だ。

見てるだけなら害の無いと言われており、女生徒のあだ名は観賞用だ。

しかし、変わり者にも実は種類があり、一概に一括りにしてしまうと他の変わり者たちに失礼になるので初めに言っておく。



この先輩の属性は電波だ。



観賞用イケメンである残念な先輩が私を見て手を上げて「やぁ」なんて言いながら私の席の前に立つのだから、私まで注目の的になるハメになった。

何の接点も無い私にとっては急に声をかけられ戸惑ってしまう。


何故目の前に立っているの?とかクラスメイトも注目せずに助けて欲しいなど考えていた時だった。


初対面の先輩が微笑みかけて初めて口にした第一声がーー



「なんで俺に告白しないの?」



だった。

スッと私を中心に周りの気温が下がる。さも当たり前のように聞いてきたので私は何かの聞き間違いではないかと考えたがこの距離で聞き間違いはまず無い。


いや、この人はカッコイイけど好きじゃないし。


私の第一印象は何この勘違いクズです。


流石の私も怒りと羞恥心で逆に無表情になり、先輩と目を合わせる。何を勘違いをしたのかウィンクまでキメて更に話し始めた。



「やっぱり女の子は勇気が足りないんだと思う。だから、告白するのにずるずると長引いちゃうんだ。まだ君がこの学校に入って1カ月、されど1カ月だ。待ち過ぎたから俺から来てあげたよ。さぁ今なら告白受けるよ!」



シーンとする教室、両手を広げる先輩、唖然とする私。


噂の電波具合は順調のようだ。


成る程、皆が言う通りこのキ○とは関わらずに学校生活を過ごすのが吉のようだ。


公開処刑みたいな辱しめを受けて、横にかけている鞄をぶつけたくなる気持ちが溢れるのを抑えて、まずは言葉の意図を探る。



「えっと、ですね。あの……先輩とは関わりがないですし初対面ですよね?私が友人に先輩の事を好きだと言った覚えは無いのですが……その話をすると進まないので隅に置いときます。先輩が告白を待っているって事は私の事を好きって事ですか?」



告白を待っていたと言っているし、この電波な先輩に脈が合ったとは自分でも驚きだ。

私の容姿って地味だと思っていたけど人に好かれるのは素直に嬉しい。

何が決め手だったのか気になる。



「え、ん?あぁ、別に君の事は好きでは無いぞ。だって初めて見たし」



……はい、一瞬でも舞い上がった自分はバカだった。

そして、この先輩に対しての怒りの沸点がヤバいことになっている。

そんな事を知らずに先輩は話を続ける。



「勿論ちゃんと告白されても断るよ!後腐れなくね!だから安心して告白をぶふぇらっ⁉︎」



話の途中でついに限界が超えてしまい、無意識のうちに机の横にかけていた教科書入りの鞄を手にする。そして、一回転しながら遠心力を味方につけ、先輩の顎を鋭く振り抜く!


手ごたえのある一撃を顔で受け止めてくれた先輩が隣の席も巻き沿いに吹っ飛びクラスメイトと一緒に沈黙する。


うん、アレだ。バッティングセンターに行く女子の気持ちを今理解した。こうスカッとするね!


今まで生きてきてここまでブチ切れた事は無かったよ。


私は転がっている先輩を見下ろし、一瞥して怯えるクラスメイトに道を譲って貰いながら今日は帰った。



ただ不良のレッテルを貼られないかだけが不安だった。












これで私と先輩の関係は終わり、明日からまた普通の日常が来ると思っていた。


……そう、思っていたのだ。



「ねぇ?そろそろ俺に好きって言ってくれても良いんだよ?」



「一回!一回だけで良いから俺に好きって言って欲しい!一生のお願い!」



「大丈夫だ!ちゃんと断るから好きって一言でいいからお願い!だって君が好きだって言わなきゃ始まらないんだ!」



アレから先輩は毎日欠かさずに私のクラスに顔を出してくる。


顔だけは超かっこいい先輩に対して、何も知らない無垢な後輩の一年生女子諸君は初めの内はキャーキャー騒いでいたがここ最近では女性の敵と認識されている。


だけど、電波な先輩は周りの評価などそんな事は気にせず私の元へ性懲りも無く今日もやって来る。


先輩と出会ってから3か月が過ぎ、あと数日で夏休みになると待ち遠しくなるそんなある日だった。



「おっと、もう少しで鬼の風紀委員長様が来る時間だから帰るね!あっ、今日はバイト休みだからカラオケ行こう!俺が奢るからさ!」



先輩は凄くが良い方だ。

そう言って先輩は前のドアから去っていく。


そのタイミングで後ろのドアがバーンと大きな音をたて開く。


振り向くと腕には風紀の紋章をつけた三白眼の美人な先輩が我が教室にズカズカと入ってくる。

彼女の音楽が流れるとしたらテーマソングはゴットファーザーのアレだ。


右にギンッ!左をギンッ!と鋭く睨みを利かせた顔を振る姿はさながら獲物を探す猛獣の様だ。


勿論、仔羊である我がクラスは速やかに統率のとれた動きで自分の席に戻り、教科書やノートを机の上に取り出して復習や予習をしている擬態に専念する。



……おぉ学友よ、怖気ついてしまうとは情けない。



三白眼は伊達では無いとアピールするかの如く、ジロッと見終わったあと凄く悔しそうな表情を浮かべる。


その表情を横目で見た者はきっと「ぶっ殺してやる!」と言葉が脳裏に浮かんだろう。だって私も浮かんだんだもん。



しかし、彼女はそんな言葉を使わない。

見た目と違って優しいのだ。

縁が無ければその優しさに気付かないまま私も仔羊と化していただろう。



「おい、大丈夫か?アイツがまた来たと聞いて駆けつけたのだが遅かったか」



ほら、ちゃんと出来の良い後輩わたしを心配をしてくれている。決して仔羊たちを定期的に脅しに来ている訳じゃないんだよ。だから、擬態を続けているクラスメイト達よ。もうそろそろ風紀委員長様に怯えるのは止めなさい。慣れなさい。



「チチ先輩チィッース!」



優しき先輩に挨拶をする。私は出来る後輩だからね。



「……後輩よ、その呼び方はどうにかならんのか?」



風紀委員長はギロッと私を見下ろして睨むと隣の男子生徒がひぃっと小さく悲鳴をあげる。



「やましい言葉ではないと思うんすけどチチ先輩はちょっとエッチィからおっぱいとかそう連想しちゃうんスね!分かります!」



ゴットファーザーの父から取ったのだが名前も近いし反応が面白くて言い続けている。だが先輩的には恥ずかしいようだ。


私の言葉に顔を真っ赤にして恥ずかしがっているが三白眼が邪魔して先輩を知らない人から見たら見えないドスを構えて今にでも飛びかかってきそうな感じだろう。


現にクラスメイト達が横目でちらちらと私のやり取りに怯えている。



「っな⁉︎そそそそんな連想なんてしてないぞ!全く風紀委員の私がハレンチな事を考える訳がないだろう!」



風紀委員長は弄ると可愛らしい反応をするので更に追い討ちをかける。



「チチ先輩はけしからんおっぱいの持ち主です。そのおっぱいで自ら風紀を乱して行くスタイルなんて流石っス」



私の言葉に赤面して胸を強ちょ……ではなく恥ずかしさで手で抑えて隠そうとしているその行動が煩悩多だんしせいとき者の視線を集めているのに気が付かない風紀委員長は涙目になり抗議する。




「みぃー!もうからかわないでくれ!好きでこの様な胸になった訳ではないんだ」



風紀委員長は自分の胸にコンプレックスを持っている。

他にも先輩達・・・は知っていた。その情報のおかげで初めて遭った日からずっと仲良くして貰っている。


鬼の風紀委員長と呼ばれ、誰からも恐れられている先輩だが本当は不器用で同じように些細な悩みを持つ可愛らしい女子生徒だ。



「チチ先輩、人ならば男女問わずに誰もがおっぱいを持っているんすよ。……だってほら、ウチたちは哺乳類だからっス。だから、やましくないっス。そして、先輩のそのおっぱいは選ばれた者のみ与えられる領域っス。先輩はもっと自分に自信を持つっス。恐い顔ばかりしていたら先輩可愛いのにもったいないっス。おっと、ウチはノン気なので勘違いしないで欲しいっス」



私は力説が逆効果だっみたいで風紀委員長は顔が真っ赤にして恨めしそうに睨んでくる。

今のネタはアウトだったようだ。只でさえ恐いのに本当に睨まれたらガクブルものだ。



「ふふっ、今日もみぃーちゃんとちぃは楽しそうだね」



そこで天の救いが来た。



「生徒会長チィッス!恐い風紀委員が幼気な生徒を睨んでくるっス。助けて下さい」



そう言って私は席から離れやって来た生徒会長の背後に隠れると風紀委員長はガーンと効果音が付きそうな程落ち込んでしまった。



「あらあら、まぁまぁ。幼気な後輩を虐めたら、めっよ?」



会長は私と風紀委員長を見てから頬に手を当て微笑みを浮かべ、可愛く叱ったフリをする。



「違う!虐められているのは私だ!あと私は男勝りかも知れないがゴットファーザーでは無い!やはり、改名を要求する!」



「え〜、でもウチはチチ先輩で定着してるっすからね。それにゴットファーザーの雰囲気ってだけで男に似ているとは言ってないっス。男勝りだとも思った事無いっスよ。寧ろチチ先輩は可愛らしいっス。それなら今度一緒にファンシーショップ行きましょう!きっとチチ先輩に合うコウデしてあげるっス」



「か、かかか可愛いものなど私には似合わぬっ!」



顔を真っ赤にして可愛いに反応して、ニヤけたまま早足で逃げ出してしまった。

私と会長は廊下で去っていくのを手を振って見送った。



「あらあら、ちぃが逃げちゃったわ。みぃーちゃんの前では可愛らしい女の子に変身するから不思議ね。みぃーちゃんの弄り方が上手いのかしら?今度、鬼の風紀委員の弄り方のマニュアル聞いても良いかしら?」



「ふっふー、仕方ありませんね。ちぃ先輩の可愛らしいお顔が見れるマニュアルを何部作りましょうか?ウチにお任せあれっス!」



「ふふ冗談よ、ちぃは良い子だけど融通が利かないし、顔つきが綺麗なだけあって笑わないし恐いでしょ?だから、鬼の風紀委員なんて呼ばれ初めてからクラスでも浮いていたわ。知っていたけど私も学年が違うから現状を助けてあげられなかったの。後輩が出来ても絶対に恐がられたままになってしまうかもと思っていたら一年生のみぃーちゃんが弄るおかげでここ数ヶ月で自分たちのクラスにも風紀委員内でも、ちぃは少しだけ輪に入れたみたいで楽しそうにしているわ。ありがとうね、みぃーちゃん」



お礼を言う生徒会長に対して私は作り笑いをする。

その言葉を素直に喜べない。

だって本当に感謝されるべきは私ではない。

人には知られたく無い出来事や悲しみ、トラウマの事を私は一方的に知っているのだから。


あの先輩は変わり者だ。


良く分からない事を口走る。

だけどそれは私には必要ない話だから理解出来ないだけだったら?

では誰に必要か?

だから、私は電波な先輩の話を必要としている人たちに届ける手助けをし始めた。


何故なら、その話をしている先輩はいつも真面目だ。嘘つきではない。必ず誰かを想いやっている。優しさがある。


……だけど私には一度も向けてくれない。



「……会長、ウチは何もしてないっスよ。ただ面白い先輩と仲良くなりたかっただけで感謝される事はしてないっス」



私は生徒会長に対してぶっきら棒に答えてしまう。



「それでも私が言いたかっただけよ。それに本当のみぃーちゃんとも仲良くなりたいって私は思っているのよ」



生徒会長は私の態度にも大らかに対応してくれる。

彼女は私の情報なんて知らないのにきっと気づいているのだろう。



「本当のウチと言われてもウチは仲良くしているつもりっスけどね」



私は面倒くさがり屋で私を理解してくれる親友ひとりがいればそれで良い。


……だけどあの電波な先輩と関わって私の全てが変わった。



「あらそう?ウチとかその口調も普段のみぃーちゃんではないでしょう?処世術的な……でもまぁ、いいわ。私はみぃーちゃんを気に入ったからゆっくりと親睦を深めましょうね」



会長はそれ以上言わずに去って行った。


会長が去ったので教室に戻ろうとしたらに袖を掴まれ中に入るのを止められたので振り向く。



「みぃー、大丈夫だった?毎日あのおかしな先輩に追いかけ回されているのでしょう?しかもチラッと見てしまったけどカラオケ誘われていたし密室って危険だよ」



私を引き止めたのは不安そうな表情を浮かべた中学からの親友だ。クラスは別々だが仲が良い。

親友には大丈夫だよと話をする。



「サイフ先輩から1時間好き放題遊んで良いと言われただけだから心配しなさんな、マイフレンドよ」



そう伝えると親友は可愛らしく頬を膨らませる。



「それが心配なのよ!みぃーがどんどん悪い男に引っかかって悪女になっていかないか不安なの!高校入って言葉遣いもおかしくなったし、中学は私だけしか友達作らなかったのに高校じゃ沢山居るし、私とも遊ぶ時間少なくなったもん!しかもいつの間にか学校の有名人になっちゃったんだもん!」



親友から聞き捨てならないワードが聞こえた気がする。



「マイフレンドよ、ウチが有名人?その話……詳しく!」



そう聞くと予鈴が鳴り親友はごめんと謝り教室へ戻った。


……酷い。放置プレイだよ。私なんで有名になってるの?


心当たりが多過ぎて何て言われているのか特定出来ないのが怖い。

モヤモヤした気持ちのまま先輩と遊ぶ放課後になった。














「ねぇ?俺の事好きになった?」



いつも通り、遊びの途中で雰囲気も無く聞いてくる先輩に対して、ため息しか出ない。



「そんな事ばかり言うからモテないんスよ」



私がジト目で見ると2人きりだからか珍しく先輩は怒られた子犬みたいにシュンとする。



「そんなのは知っている。俺は顔だけで俺自身にモテる要素がないのなんて俺が一番分かっている。だから、俺は攻略に頼るしかない」



いつもの私なら怒っていたと思う。先輩も私からの攻撃に備えていたし、呆然と立つ私の表情に先輩はハッとしている。



「……先輩はやっぱり何も分かってない。もういい、今日は帰る。やっぱり先輩なんて嫌いだ」



私は先輩を置いてカラオケから出て行った。出て行く時の先輩の顔は見てないからどんな顔していたか分からない。



先輩の言葉を借りるなら私を踏み台にして先輩の理想のヒロインと恋をしたい。


私はアレですか?

チュートリアル系女子ですか?


先輩は私が告白したらモテ期が到来すると本気で思っているみたいだ。


いや、モテ期以前に今までの行動や態度が先輩の好感度を下げていることに良い加減に気づいたらどうかと思う。


だから、先輩には私の気持ちなんて一つも伝わらない。


先輩は私を見ている様でその先しか見えていない。先輩の世界では私は単なる脇役モブでしかない。




外に出ると予報外れの通り雨で早歩きで帰る人が多い。


傘を持ち合わせていない私は丁度良いとそのままゆっくりと歩き出す。


本当に何をやっているんだろう。収拾のつかない気持ちと自己嫌悪に駆られてしまう。


雨に打たれながら曇った空を見上げて、今までの先輩との時間が自然と思い出す。


……おかしいな?

頬に自然と滴が流れる。

これは雨の所為で視界が水びたしになっているから流れてしまったんだ。


きっと空も私の惨めさに同情してくれたんだと思う。


行き交う人々の視線を気にせずに私は家に歩き出した。
















本当は分かっていたんだ。


私のこの気持ちが先輩の求めるものだって事ぐらい。


でも認めたくなかった。


だってデリカシーも無く告白を強請ったり人の事を考えずに色々話しだすし、ずっと付き纏ってくるし、良い事なんて何も無かった。


そう無いはずなんだ。



なんでだろう?



ふと目が無意識のうちに合わさるとドキっとしたり、純粋に笑う姿に惹かれたり、何気無い行動にも目がいつの間にか行ってしまう。

見つけたく無いのに先輩の初めてを見つけてしまう。


この気持ちを認めたくない。


私に会う目的があれだし、毎日鬱陶しいのに傍にいるから居ないと目で探してしまう。


認めたくないと思えば思うほど先輩の良い所を見つけては膨らんでいくこの気持ち。


私から気持ちを伝えれば終わる関係。


いつからこの気持ちが芽生えたの?



気づかなければ良かった。

知らなければ良かった。



あんな可笑しな先輩で出会いなんか最悪だった。関わっても良い所なんてない。


……そう、無いはずなんだ。


でも、一生懸命に頑張ったり、人を思いやる優しさもある。ただ、私に向いてないだけだ。

それに嫉妬していた。


認めるよ。


私は先輩を知って、好きになった。

嫌な所も含めてだ。













私は次の日から先輩から距離を置いた。

先輩が声をかけてきそうになったら風紀委員長様の元に向かって適度に弄ってから休み時間を過ごしていた。



そんな生活を1週間が過ぎた頃だった。

日直で放課後まで残り、1人でプリント作成をして、先生に渡して今日も一日が終わるそんな時だった。

教室に先輩が待っていた。


私と先輩だけしかいない教室。



「本当にすまなかった!」



先輩は深々と頭を下げた。



「君に避けられる事がこんなにも辛かったなんて気がつかなかった。俺ってバカだから君を傷付けた原因が分からない。直すから教えてくれないか?」



本当にこの先輩は鈍感でクズだ。だけど真っ直ぐな人だ。

ずっと怒っていたのに目の前にすると怒る気力も湧かない。


そのまま先輩に近づくとビクッ強張る。そんな先輩を私は優しく抱き締めた。



「……先輩、ウチの心臓の音が聞こえるっスか?早いでしょう?先輩と触れ合っているからっスよ」



急に抱き締められた先輩が戸惑っているのが伝わり面白い。


だけど流石に自分の行動に恥ずかしくなって、離すと先輩から名残惜しそうに声を漏れる。

しかし、離したのは束の間で私はネクタイを掴み顔を引き寄せて、口と口が触れ合いそうな距離まで互いの顔を近づけ、本当・・の私の言葉で話す。



「先輩、私だって女の子ですよ?私を襲いたいと思いませんか?」



私の雰囲気を変えて見つめると先輩がゴクリと唾を飲むのが伝わった。

そのまま数十秒にも満たない長い時間の中で、これ以上見つめられると雰囲気に流されそうなので元に戻り戯ける。



「冗談っスよ。でも、ウチが欲しいなら先輩から告白して下さいね」



私は呆然とする先輩に悪戯が成功した子供の様に笑い八重歯を見せた。



だって、貴方が好きだと言わなきゃ始まらないのだから。

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