第七十七話 冒険者ギルドにて3
デュランタさんから冒険者ギルドへの登録が完了した証である、半分に割れたギルドタグを受け取った後、一休みする前に買い取りのことについて尋ねることにした。
「登録し終わってからすぐのお尋ねですみません。
近いうちに素材の買い取りをお願いしたいと思っていまして、冒険者ギルドの方で買い取りが出来ることを聞いたのですが⋯」
「当ギルドでも素材の買い取りは常時行われております。しかし、売却される素材によっては他ギルドの方が良い価格で売却出来ることがあります。
もしもエニカさんのお時間がありましたら、素材によっては一度見積もりを取られてみてもよろしいかと思います」
なるほど。素材によっては買い取り先を検討した方が良いってことだね。
冒険者ギルドで買い取りしてもらうつもりでいたけど、一度コロに相談し直しても良いかも。
少しでも高く売りたいと思うし。
「それは良いことを伺いました。教えて頂いてありがとうございます」
「ご質問がありましたらいつでもお尋ね下さい」
冒険者ギルドへの登録のためとはいえ、長い時間拘束してしまったのに最後まで丁寧に対応してくれるなんて、本当に良い職員さんに当たって良かったよ。
「登録も終わったから、みんな一旦休憩しようか」
最初は冒険者ギルドに来たついでに買い取りも行う予定だったけど、みんなを待たせたし、さっきのデュランタさんの買い取りに関する情報を聞いてコロとも相談したいと思ったから、一度外に出て休憩を挟むことにした。
――――――
「とりあえずは登録が出来て本当に良かったぁ⋯」
一旦冒険者ギルドの外に出てから、人通りのほとんどない通りを見つけたため、そこで思わずホッと溜め息をついた。
『お疲れ様ですエニカ様。慣れない環境や他人種との交流にお疲れになられたでしょう。
コロが代わって対応して差し上げられないことが本当に悔やまれます⋯!』
コロも魔法を使わずに小声で話しかけてくれた。
コロが話しかけてきたということは、近くに他人種(この世界では人という言葉の代わりに自分以外の人種は他人種と呼んでいるそうだ)はいないみたいだ。
「コロには今も十分に助けてもらってるよ。本当にありがとうね」
『エニカ様⋯!』
「ソイルとヒサメもありがとう。街に入ってから好きに話したり動けないから不便かけちゃって悪いね」
「ピギャギャ!」
「気にすることは無いよ。目立たないようにすることで、エニカ姉様に興味関心を持って近付こうとする輩を少しでも減らせるなら、いくらでも我慢出来るよ」
首を横に振るソイルと笑顔で答えるヒサメ。
ギルドにいた時より二人ともリラックスしている様子だけど、二人とも森で過ごしていたから不特定多数の人達に囲まれる状況は多少なりともストレスがかかっていたように思える。
現にヒサメは一部の冒険者達の視線に気付いて少しイライラしていたように見えたしね。
うーん⋯本当は私の都合で、みんなにあまり我慢ばかりさせないようにしてあげたいんだけどなぁ⋯
「あ、でも狼獣人の門番と緑人種の受付がいやらしい目つきでエニカ姉様を見ていたのは正直我慢ならないと思ったよ。ついでにエニカ姉様に気安く触ってきた猪獣人の門番もね」
『それはごもっともです、ヒサメ。
私もエニカ様のお耳に徹するという大役が無ければ、その場で即始末したところでした』
「ピギャピギャ!」
「そこはみんなお願いだからそこは我慢して欲しい」
何でみんなしてローボルさんやデュランタさんのことを目の敵にするんだろう⋯しかもヒュースさんまで。
皆さん普通に接しただけだと思うんだけど、どうにも私と会話したことがある人への敵意がみんな強くなってる気がする。
慣れない環境で周囲を警戒している部分もあるだろうから、私もこれまで以上にみんなのことを気掛けて声を掛けたりするようにしたいと思った。
⋯目を離した隙に我慢の限界が来た誰かしらが、事案を起こすような予感もヒシヒシ感じ始めたしね。
「そういえばコロ。さっき聞いた買い取りの件なんだけど⋯」
話が不穏な方向へ流れる前に、コロに相談したかった買い取りの話へ話題転換を図ることにした。
――――――
「あら?貴女は先程登録された⋯」
休憩した後、再び冒険者ギルドに戻って掲示板を眺めていたらデュランタさんが声を掛けてくれた。
「先程は登録の件でお世話になりました」
「いえいえ、ご登録お疲れ様でした。
掲示板を見ていらっしゃったということは、もう依頼の方を受けて頂けるのですか?」
「いえ、実は今日、ファレスタに到着したばかりなのでどんな依頼があるか見て、自分に出来そうな依頼で急ぎのものが無ければ、明日以降依頼を受けられないかなって思っています。
それと素材採取の依頼で同じ物を持っていれば、買い取り前に出せないかなと思いまして⋯」
買い取り前の素材と依頼されたものが同じであれば出すことが出来ないかは休憩中、コロ達と話したことの一つだったのでデュランタさんにも話してみた。
「まあ、そうだったのですね。
依頼のことでも先程話されていた買い取りのことでも、お声掛けして頂ければご対応致しますね。
ただ、依頼対象の素材を持参されている場合、品質がどれ程のものかでも達成未達成が決まってしまいますので、一度見積もりとしてお見せ頂けた方がよろしいかと思います」
「なるほどですね⋯素材の品質は気付いていなかったです。そこまで気に掛けて頂けるなんて、本当にありがとうございます」
「いえいえ。それと、もし始めて依頼を受けるとなれば、薬師の薬草畑の土を耕して欲しいとか、食材の保存や保管を手伝ってもらいたいなど、主に力仕事ですがアイアンランクやブロンズランク辺りだと街中での活動依頼があることもありますので、そこから依頼に慣れていくのも一つの方法かと思われますよ」
「なるほど⋯よく確認して見てみますね」
「ええ、またご不明な点などございましたら、いつでもお声掛け下さい。
依頼を受ける場合は、依頼書となる掲示板の羊皮紙を剥がして受付までご持参して頂ければ受理致しますね」
具体的な助言を一通りすると、一つお辞儀をしてデュランタさんは去っていった。
依頼にも色々あるし、気を付けなければいけない点も沢山ありそうだから慎重に見てみないとだね。




