82.温室
「それで本題なんだが、ロージー。
陛下が君を聖女として正式に国内外に知らしめたいとおっしゃっている」
聖女。
聖魔法が発現した時に言われていたけど、ただ浄化が出来るだけだし。
「えっと、聖女として?
わたし、確かに聖魔法は遣えるけど、聖女とかそんな大したものじゃないから無理、じゃないかな」
モゴモゴと言い訳してみる。
ちょこっと聖魔法が遣えるだけで聖女を名乗るのは烏滸がましいし、ましてや聖女となったらいろいろと面倒事に巻き込まれそう。
かと言って、陛下の思し召しなら逆らうのは不敬だし。
ドヨーンと一気に落ち込むわたしを見て、王太子が慌てて取りなしてくれる。
「いや、ロージーが嫌なら無理強いはしない。
王家としては、ロージーに幸せな気持ちで居て貰う事が一番大事だから」
良かったーーー。
聖女様なんてガラでもないし、ましてや周りから崇められでもしたら、恥ずかしくて死ぬよ。
うん?まさかわたしの新たな殺害計画か!
「そう言うと思っていたよ。
だから陛下にも進言しておいた」
おお、ギル、ナイスフォロー!
良い仕事してる!
「聖女ではなく『王国の薔薇』としてその名を広めようと!」
ハイ?
何故そんなに誇らしげなの?
王国の薔薇?
そんな大それた二つ名要らないって!
「あ、あの、ギル?
わたしはそんな大それた二つ名は、ちょっと遠慮したいな、なんて」
「そうか?
それでは仕方ない、陛下の仰る通り『聖女』になるか」
「へっ?」
何何?
二者択一なの?
『聖女』か『王国の薔薇』の?
「どうする?ロージー」
いやいや、ギルバート王太子殿下、選ばないって選択肢は無いですか?
無い、ですね。
無言で固まるわたしを見て王太子は何か思いついたように立ち上がった。
「良いものを見せよう」
良いもの?
そう言って王太子はわたしを促すので、仕方なくロイくんを膝から起こし、手を繋いで立ち上がり、ついていく事にした。
ゾロゾロと五銃士と共に回廊を歩み進めると、広い中庭に着く。
中庭の真ん中には聖女を模した像の手から水が出る仕組みの大きな噴水が置いてあった。
午前の温かい太陽の光でキラキラと水面が輝き、周りの花々や草木とのコントラストがえもいわれぬほど美しい。
「キレイ」
確かにこれは良いものだ。
素晴らしい空間。
思わず口にすると、王太子はニコリと笑う。
「このもっと奥だ」
この美しい中庭より良いものが有るのだろうか。
首を傾げながら進むと辺り一面から芳しい薔薇の香りが漂って来た。
見渡すとその先は色とりどりの薔薇が咲き誇る薔薇園だった。
どれだけの種類と色が有るのだろう?
その全てが計算された造形美となり、完成された一枚の絵画のようだ。
薔薇園に造られた小さな石畳の道を感動しながら歩いていくと、その先には小さな硝子の温室が佇んでいた。
温室?
これはもしかして?
問いかけるようにギルを見上げると、頷きながら
温室の扉を開けてくれた。
何という芳しい香り!
「ようこそ、ロージー。
我が王国の秘宝の薔薇をお見せしよう」
恐る恐る温室に入ると、其処には黄金に輝く大輪の薔薇が温室中に咲き誇っていた。
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