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76.雨

 


 魔力だけが虚しく虚空へ昇っていくのを茫然と眺めながら、それでも祈り続ける。


 全くの無駄足かもしれない。

 でも、今のわたしに出来る精一杯の事を、仮令チカラ尽きてもやるしかない。


 やがて視界が暗くなってくる。

 これはもしかして魔力が尽きて来たのかもしれない。

 魔力が枯渇すれば生命に関わる、それは知っている。


 だけど、今のわたしに出来る事はこれだけ。

 譲れない!


 わたしを愛してくれる人たちがいる。


 わたしを見守り続けてくれた人たちがいる。


 わたしが愛した人たちがいる。


 そう、わたしが護りたい人たちがいるのだ。



 体がフラフラして、目眩や頭痛がする。

 周りの声も遠くなる。



 これ、ヤバいかも。



 意識を手離しかけたその刹那、倒れかけた体が抱きすくめられ、身体に温かい魔力が入り込んで来る。

 薄目を開けるとエリオットがわたしを抱きしめて自分の魔力を分け与えてくれていた。


「負けるな!ロージー!」


 身体にチカラが戻ってくる。


「ありがとう、エリオット」


 エリオットの魔力に助けられて、わたしは再び虚空へと浄化の祈りを続けた。

 すると、左手を優しく握られ、エリオットとは別の温かい魔力が身体に入り込んで来た。


「ジェンキンスのおじさま」


「魔力のある者は聖女に少しずつ魔力を分けてくれ」


 ジェンキンスのおじさまの号令の元、次々と代わる代わる魔法師の皆んながわたしに魔力を投入してくれている。


 ありがとう。



 こんなに尊いチカラをわたしは知らない。



 だから、お願い。

 皆んなを助けて!




 祈りは虚しく虚空へ散り、浄化魔法は発現しない。


 ポツリ、ポツリ、



 それどころか、とうとう雨が降り始めた。


 駄目、ダメだよ。

 砂に侵された体で雨にあたれば命は尽きる!



「ダメーーーーーーーーーーーーーー!」


 わたしの声に呼応したように、雨は本格的に降り始める。

 決して強くは無いが、地面を打つ雨音が辺りを包む。


「どうして」


 何も出来なかった。

 皆んなに助けて貰ったのに。


 膝から崩折れたその刹那。


 目の前に倒れていた騎士が目を開け此方を見つめた。


「!!」


 騎士は上半身を起こし聞いた。


「俺は?

 ああ、砂煙に巻かれ意識を失ったのか」


 雨に濡れた騎士の体からは光の粒子がキラキラと輝いている。

 ハッと見回せば、倒れた一万の騎士たち全てから光の粒子がキラキラと輝き、一面が光の海の様に見えた。


「こ、これは?」


 気付くと次々と騎士たちの意識が戻っている。


「慈雨」


 ジェンキンスのおじさまが手の平に雨を受けながら呟いた。


 立ち上がった騎士を調べていたアンバーが大声で叫んだ。


「凄い!凄いぞ!!

 浄化されて身体が回復したぞ!

 それどころか魔力まで回復している。

 奇跡だ!」







お読みいただきありがとうございます。

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