74.砂煙
軍は騎馬隊を先頭に粛々と進軍していく。
わたしは流石に馬車で向かう。
エリオットとスタンリーが両脇を固めて座っている。
「前回拐かされてるからね」
うん、痛い所突かれた。
簡単にマーフィー伯爵に拉致されちゃって、ロイくんが居なかったら大変な事になっていたな。
ん?さっきそう言えば騎士団長らしき方が五銃士とか言っていなかった?
王太子、エリオット、スタンリー、デュラン……………ロイくん?
「ね、ねぇ、まさかとは思うけど、ロイくんまで参戦してるなんて、そんな事無いよね」
「いや、その、実はロイはデュランに連れられ先陣に参加しているんだ、でも、デュランがついているから大丈夫だ」
スタンリーが申し訳なさそうにポツリポツリと話す。
「ロイくん、まだ幼いのに、どうして連れてっちゃうのよ」
また、別の心配が出て来てしまった。
早く先陣に追いつかなければ。
反乱軍は王都の北隣にあるギッテンス公爵の領地から王都に向かって進軍していた。
公爵家だけあって王都に近い立地の良い領地だが、王都に近い分、侵攻されるスピードも速いので、応戦する正規軍の準備も整わない内に対戦しなくてはならず、些か不利だ。
「見えて来たぞ!」
王都とギッテンス領の境に差し掛かると、馬車の窓から進行方向を覗いていたスタンリーが
呟いた。
わたしも覗くと先には大量の砂煙で視界が遮られている。
「土魔法か」
嫌な予感がする。
砂煙ならデュランの水魔法で無効化出来る筈。
先陣は何処にいる?
「馬車から降りよう」
エリオットに促され、わたしとスタンリーも馬車を降りると、砂嵐の様に濛々と吹き荒れる砂煙がギッテンス領を覆っていた。
先に到着していた騎馬隊やジェンキンスのおじさま達も呆然と砂煙を見ている。
「この密度の濃い砂煙の中に入ったら間違いなく目をやられ鼻が塞がれ、呼吸が出来なくなり、下手をすれば死ぬな」
騎士団長さんらしき方が呟くとジェンキンスのおじさまが眉間に皺を寄せている。
そうだ、おじさまもわかっているのだ。
デュランの水魔法ならこの砂煙を消し去れた筈。
先陣は何処に?
「ウォルター」
ジェンキンスのおじさまが呼びかけると、アンバーの横に居たウォルターが駆け寄って来る。
「はい」
一言答えるとウォルターは右手を上げてゴォーーと膨大な風魔法で砂煙を吹き飛ばす。
「えっ」
そんな事したら、中に人がいたら吹き飛ばされちゃうんじゃない?
しかし吹き飛ばされたのは砂煙だけで、現れた空間には広大な草地が広がり、其処には多くの人が重なり合って倒れていた。
「ギル?デュラン?ロイくん?」
思わず駆け出そうとするわたしの腕をエリオットがぎゅっと掴んだ。
「駄目だ、ロージー、前を見ろ」
言われた通りに倒れている人たちの先を見ると、其処には夥しい数の人影が見える。
「あれは反乱軍?」
「どうやらそのようだ。
そして嫌な事に此方へ進軍している」
このまま進軍されたら、倒れている皆んなはどうなるの?
駄目だ!
助けに行かなければ!
「エリオット、放して。
皆んなを助けないと!」
「聖女とはいえ、一人で立ち向かっても殺されるだけだ。
頭を冷やせ!」
掴まれた腕を振り解こうとしても、かえって引き寄せられ抱きすくまれてしまった。
どうしたらいいの。
涙が一筋溢れる。
「敵方には土魔法師が居るようだ。
その対応はウォルターに任せる。
スタンリーは土魔法で敵方との間に壁を造り足止めを頼む。
その間にアンバー、倒れている兵達の状況確認を!
状況によって兵達をどうやって撤収させるか考えよう」
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