35.ジレンマ
デュランがラーズでの処理を副官等数人に任せたので、わたしたちは帰路に着く。
捕縛した破落戸達はラーズの憲兵団から借り受けた護送馬車に乗せたので、結構仰々しい一団となってしまった。
エリオットとわたしが乗って来た馬車には、可愛い3人の女の子たちが同乗する事になって。
「エリオットさまは、どんなじょせいがすきですか?」
「エリオットさま、すてき!」
「エリオットさま、こわかったのであたまなでてください」
うーん、何だろう?
この幼女ハーレムは。
馬車に乗り込んだ時も席取り合戦が勃発し、一瞬血の雨が降りそうだった。
エリオットは知らぬ間に魅了の魔法でも使っているのだろうか。
それにしても、誰ひとりわたしの横に座らないのはちょっと凹みました、はい。
結局、見かねたエリオットがわたしの横に座る事になったんだけど、女の子達の視線が怖い。
そして、ハニーブロンドのミリーちゃんが遠慮なく言葉の暴力を振るう。
「エリオットさま、ロージーさまとはどういうかんけいですか?」
うっ!
密かにダメージを受けるわたしを横目にルーちゃんが小さな声で諌める。
「ロージーさまはこんやくしゃだって」
「えっ!うそ、うそ、やだーー!」
「こじいんへきてくれたときにいってたでしょ?」
「きいてなーい!」
やだ、とか、聞いてない、とか。
自由だ。
「ロージーは私にとって何よりも大切なひとだ。だから結婚するんだよ」
エリオットの惚気みたいな言葉に女の子たちが動揺する。
「やだやだやだ!」
「あたしとけっこんして!」
「…………」
ミリーとジェシカが大騒ぎする中、ルーちゃんはひとり黙り込む。
「ルーちゃん?」
ルーちゃんはわたしをじっと見つめて涙目になる。
「ど、どうしたの?
また、怖い事思い出した?」
ルーちゃんは頭を振る。
「ちがうの。
ロージーさまはいのちがけでわたしたちをたすけにきてくれたでしょ。
だから、やっぱり、ロージーさまはエリオットさまにふさわしいひと、」
そこまで言ってルーちゃんは大泣きになる。
「えーんえんえん」
エリオットはふっと微笑み、優しくルーちゃんの頭を撫でる。
「ルーは俺とロージーがお似合いだと認めてくれたんだよ」
それを聞いたミリーとジェシカも盛大に泣き出す。
「あーんあんあん」
「うっうっうっ」
3人の女の子たちの初恋に終止符が打たれた。
泣き疲れて眠った女の子たち。
「眠ったね」
「ああ」
「……ヘルミナはこれからどうなるの?」
「操られていた事は魔法鑑定で容易にわかるだろうから、極刑にはならないだろう。
おそらく、何処かの修道院送りで済むと思う」
幼女誘拐だけでも本来なら極刑なのだから、修道院送りは無難と言えるのかもしれない。
「マーフィー伯爵はきちんと処罰されるよね?」
その後ろにいる黒幕はまだしも、マーフィー伯爵だけはきちんと処罰して欲しい。
「いや、操られていたヘルミナの証言だけでは不十分だろう。
魔法鑑定でマーフィー伯爵の関与が証明出来れば良いが、恐らく手は打たれているに違いない」
「それって、捕まえられないって事?」
「あの廃屋から何か証拠が出て来れば良いが、彼処は一時的な拠点に過ぎない様子だったからな」
確かに何か実験や魔法が使われた形跡は無かったけれど。
「じゃあ、マーフィー伯爵は野放しって事?」
余りの理不尽さに声が大きくなる。
「しぃー、ロージー。
子どもたちが起きてしまう」
エリオットはわたしの肩をそっと抱き寄せる。
「もちろん、重要参考人として取り調べる。
今回の事件も公表する。
そうなれば、奴等も大分身動きが取りづらくなるだろう」
そんな。
「兎に角、子どもたちを救う事が第一だった。それ以外はこれからだ」
そうだ。
子どもたちが無事だった事、それこそがいちばん大切な事だ。
「でも、こんな事をした卑劣な犯人を絶対に許さないし、きちんと裁きを受けさせないと!」
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