30.馬車に揺られて
まんまとエリオットに寝かしつけられたわたしはガタンと言う馬車の振動音で目が覚めた。
「…………ん?」
目を開けると何故かエリオットの麗しい顔が真上に……?
頭には何か少し硬めの枕が……?
ん?…………………………………
へ?…………………………………
ギャーーーーーーーーーーーーーーーー!
わたしったら、わたしったら、完璧な男エリオットの膝枕で熟睡街道まっしぐらしてたの!
余りのショックに起き上がれず膝枕状態のままアワアワと慌てていると、エリオットが満面の笑みを浮かべて見つめていた。
「やぁ、お姫様はお目覚めかな?」
ピンチです。
ある意味あの襲撃事件よりピンチです。
心臓がドクンドクンと鈍い音を立てています。
起きがけのエリオットは余りにも眩くて目が潰れそうです。
どうしよう、どうしよう。
そうだ!また寝よう!
そっと瞼を閉じようとすると、顔面に陰が出来て、ヤダヤダ、エリオットの顔が近づいて来るんですけど!
「キャン!」
思いきり体を捻りながら腹筋を使い起き上がる。
「くっくっく」
どうもエリオットの笑いのツボになってしまったわたし。
「キャンって鳴いた、ぷっ」
暫くエリオットと口を聞くのはやめようと自主規制を敷いたわたしです。
「ロージー、まだ怒っているのか?」
「………(絶対口をきくものか!)」
「笑ったのは悪かった。
だが余りにも可愛くて我慢出来なかった」
「……(いいえ、完全にバカにしてたよね)」
「ロージーが仔犬みたいで微笑ましかった」
「……(何良いものを見たみたいに悦にいってるわけ?)」
「くくく、いや失礼」
「……(まだ笑ってる!)」
「…不思議だな。こんな殺伐とした状況でもロージーと居ると幸せな気持ちになれる」
「なっ!」
思わず声をあげるとエリオットは手を伸ばし優しく頭を撫でる。
「やっと口をきいてくれた」
「違うでしょ!思わず声をあげただけでしょ!」
エリオットがにっこり笑う。
やられた。
いつもこうやってあしらわれてしまう。
大体こんなに話すエリオットなんておかしいもの。
ううん、違う。
最近のエリオットはわたしによく話しかける。
それは小説のエリオットやロージーの幼馴染のエリオットとは違うエリオット。
いつからこんなに変わったの。
「エリオット、いつからこんなに喋るようになった?」
意外な質問に「ん?」と少し首を傾げるのは反則技です!
一発レッドです。
「やっと婚約出来てふたりきりになれる様になったからな」
「?」
「くくく、またそんなおやつを隠されて途方に暮れる仔犬みたいな仕草、くくく」
しまった!また口を半開きにして小首をこてんと傾げてしまった!
「また笑う!」
「ごめん、ごめんロージー、本当に可愛い」
「なっ!もう揶揄うのはやめて。
大体ふたりきりになった事なんて今まで沢山あったでしょ。なのに今さら」
「…いや、ないよ。
ふたりきりになれたのは婚約してからだ。
よく思い出してごらん、小さな頃からいつも君の周りには必ずスタンリーかデュラン、そしてギルが居た。
アイツらが居ない時はシモンズ夫妻やうちの母が居ただろう」
そう言われればそうかもしれない。
いつも誰かが側に居た。
小さい頃は寝る時すらスタンリーやデュランと一緒だった。
あれ?
エリオットとふたりきりって無かったの?
「みんなで君を守っていたからね。
ふたりきりになんかならなかった。
特にスタンリーとデュランは俺たちをふたりきりにさせないようにしていたからな」
どういう事?
「スタンリーとデュランはそんな意地悪しないよ」
「うーん、意地悪じゃ無くて心配とか、やきもちかな」
「やきもち?
それって妹を取られたくない、みたいな?」
エリオットはすごく残念な子を見る目つきで呟いた。
「全然心配しなくても良さそうだけどね」
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