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15 腹ペコガール、混乱する

ジャー、ジャー。


『娘、この野菜の盛りつけはこれで良いか?』


コクリ。


ジャー。


『洗い物、終わったわ。次は何をすれば良い?』


ジャージャー。

『ビッ』


『ふん。放っておいても勝手に乾くだろ? それをわざわざ……。』


フルフル。

『ビッ。』


『わ、わかったわ……。拭けばいいんでしょ、拭けば!』


コクリ。




いやーーー、楽しいーーーー!

私がしゃべったり念話とやらが出来ないからコミュニケーションに難はあるけど、こうして料理に集中できるのは本当に楽しい!



はい、厭らしいボンキュッボンこと女王イリスさんの専属料理人となりました、スカルウィザードのアヤカさんでございます。


ちなみに野菜の盛り付けをせっせと行ったのは、私の専属助手へと昇格しました元上司、黒ドクロお化けさんこと主任です。

昇格なのか降格なのかいまいち分からんポジションよね。


あと、文句をブータレながらも洗い物をして布巾でせっせと食器を拭いているのは、私がいずれ進化の果てで目指そうというお姿! グールバンパイアのメイドさんです。


そして!

今私が作っているのは今夜のイリスさんのゴハン。

ワイルドボア? とかいう豚肉そっくりのお肉を使って作るなんちゃって香草焼きです!


キッチンにある謎水槽こそ大型貯蔵冷蔵庫の中の食材やら調味料、ハーブなんかも調べてみたんだけど、まぁ、出るわ出るわ。どんだけ入っているのよ! ってくらい大量の食材たち!

国民的青色猫型ロボット顔負けの容量!


メイドさん曰く、魔王であるイリスさんはそれなりに食事を摂る必要があるみたいで、メイドさんともう一人、グールウィッチと呼ばれるロリメイドちゃんの2人で手分けしてあちこちからかき集めてきているみたいです。


それで度肝抜かれた事件があったんだけど……。


メイドさんが、黄金ドクロお化けさんこと王様くらいのサイズがあるんじゃないかってくらい、巨大な猪を狩ってきたといって、ここまで運んできたのよ!


まさかのジビエ!?

しかもそのまま!?


いくらアヤカさんにジビエ料理の経験があっても、解体処理は出来ませんよ!?

わたわたと慌てる私を尻目に、メイドさんはその巨大猪をそのまま、謎水槽へ突っ込みましたよ。


ええ、ズリュッて。

あの巨体が吸い込まれるように入るのは圧巻でした。


って、ええええ!? そのまま入れるの?

言っておくけど、私マジで解体は出来ないからね!?


そりゃあ、魚やカモとかの鳥は捌けるけど(って話をハナちゃん達にしたら、ドン引かれたっけな)、さすがに猪とか鹿とかの解体経験は無い。


ええー、あれ使う時、私が捌くのー?

無理無理。銀ちゃんに斬ってもらおうよー。


って思っていたら……。


何と、謎水槽の中で肉、骨、内臓が分別されるとのこと!

何その、神仕様は!!

勝手に解体処理OKって、マジで青猫機械の不思議道具じゃない!?



そんなわけで、今焼いているポークはその巨大猪のお肉。

メイドさんの言う通りしっかり解体された状態だったけど、それだけじゃなくて血抜きも完璧。精肉店で売っているお肉と同レベルって、さすがファンタジーワールドよね。


さぁ、完成だ!

“巨大猪の香草焼き ~謎水槽ちゃんが解体しました~”


そして、『野菜あんまり好きじゃない』とワガママぶっこむ肉食系ボンキュッボンこと、イリスさんの美容と健康と嫌がらせのために用意したサラダも添えております。


これに新鮮卵と油や何やらで作ったアヤカ特製マヨネーズソースをかけて召し上がれ♩





「また、野菜か……。」


香草焼きで目を輝かせた次の瞬間、ちょっとガックリと項垂れるイリスさん。


ちょちょちょーい。

美味しいから食べてごらんよ?


「女王陛下のお口には合わない、と何度も伝えたのですが、この娘は頑なに生野菜を使うのです。」


ジロッと睨んでくるメイドさん。

あーあーあー、知るかーい。

野菜食わないと、いやーな病気になりまっせー。


って、イリスさんが何か病気になるイメージ湧かないんだけどね。

むしろ、毒食っても平気そうな?


だって、あの黒焦げ肉を好んで食っていたんでしょ!

毒食わせたって平気だわ、このボンキュッボン。


「まぁ、娘が作り出す料理は苦手な野菜も美味しくいただけますからね。今日も期待しているわよ?」


艶やかに目配せして、香草焼きから口にするイリスさん。



その結果、本日も「おいしぃー!」を頂きました!





「で、貴様は何を作っているのだ?」


厨房にて調理器具やお皿を片付けるメイドさんが、またもやジロリと私を睨んできました。

てかさー、こっちは喋れないのに何で聞いてくるの? 答えられないってば。


それでも反応しない訳にはいかず(だって超怖いし!)顔を上げてコクコクと頷いてみる。


私が今作っているのは、ずばり『塩麹』と『日本酒』

これがあると、料理の幅がグッと広がるのだ。


塩麹の作り方は簡単!

米麹に塩を万遍なく混ぜて、水に漬けるだけ!

出来上がるまで10日くらいかかるけど、毎日1回水を足しながら混ぜるだけで出来上がるから超簡単。


ちなみに麹はもちろん私の手作り。

専属料理人に任命されたその日から仕込んで、すでに大量に作りました。


いやね、謎水槽ちゃん内には塩や胡椒、香辛料やハーブ類は結構大量に収められていたんですよ。


だけど、調味料類は皆無!

こりゃあ、美味しい料理が出来るわけがない。


そこでイリスさんの料理を作る傍ら、調味料の量産も目指しているわけです。

作れる料理の幅を広げるってのもあるけど……。


ほら、いつか私がメイドさんのようなグールバンパイアに進化した暁には、色々食べたいじゃない! そのための準備を、今から抜かりなく進めているって寸法よ!


あとお米があったのには驚いた!

しかもさすがは謎水槽ちゃん。きっちり精米状態。

それと何故か、「出でよ、玄米!」って念じながら取り出すと玄米もあった。何故か。


で、ダメ元で「種麹!」って念じながら探ったら……あったのよ。流石ファンタジーワールド。都合良過ぎー!




専属料理人に配属されてすでに5日目。

このガイコツボディは眠る必要が無いので、ひたすら料理と調味料づくりに精を出しています。


いやー便利だわ、このボディ。

……ゴハンが食べられないという超絶デメリットを除けば、かなり便利。


すでにマヨネーズ、ブイヨン、ドレッシングなどなど生み出しています。

で、塩麹を作る傍ら、アヤカさんも初となる日本酒作りにチャレンジしているわけです。


いやー、日本酒含めお酒を自家製造は法律的にアウトなので今まで挑戦した事はないのですが、ここは謎のファンタジーワールド! 日本の法律なんて無い!


…… 無い、よね?

………… 大丈夫、よね??


うん、大丈夫だ。うんうん。


日本酒も原料はお米と米麹。

作り方は省略しちゃうけど、蒸したり混ぜたり濾したりすれば完成! 問題は、時間と手間がめっちゃ掛かるってこと。


こればっかりは仕方ないし、トライアンドエラー。

まぁ、色々試してみよう。


出来上がったらイリスさんに御馳走しよう。

決して毒味じゃない。ないったらない。


『何か良からぬ事を考えていないか、娘?』


おおっと! ここに来て勘が良くなった主任からツッコミが!

私はフルフルと首を横に振るが、何故かジト目で睨まれている気分。

ええー、アヤカさん何のことだかワカンナイナー。


その時。


「お姉様ぁ!!」


メイド服を着たロリガール……じゃなかった、イリスさんの側近の一人、グールウィッチちゃんが慌てて厨房に飛び込んできました。


身長は120cmくらい。小学1年生くらいかな?

シックな黒色だけどフリフリのメイド服に、鮮やか金髪ツインテール。赤色の瞳に見え隠れする八重歯のような牙。そしてお人形さんみたいな色白美少女。


完全にアッチ系の御趣味をお持ちの大きなお友達を狙い撃ちにしているぜ! っていう完璧な装いですよ。(ミサキ)ちゃんが見たらきっと大喜びだろうなー。


グールウィッチって言いにくいので、心の中でロリっ子と呼んでいる。そんなロリっ子が慌てって飛び込んできたから、メイドさん、少しイラッとした感じだ。


「何よ、騒々しい。」


「女王陛下より火急の報せとのことです! お姉様始め、全員で来るです!」


ああー、可愛い~。

語尾に “です!” って絶対付くのがあどけないと言うか、あざといと言うか。あああ可愛い。


何て思っているのは私だけで、メイドさんも主任も神妙な感じだ。


「分かった、すぐに伺う。行くぞ、レイス。娘。」


……えっと、私はここで調味料づくりしていていい?

あ、ダメですよね。……はい、行きます。





「火急の報せとのことですが、ご用件は何でございましょうか。陛下。」


恭しく跪くメイドさんに倣って、主任、ロリっ子、私も膝を着く。

呼ばれたのは私たちだけじゃなく、王様に銀ちゃん、それにあんまり絡みが無いけどリッチとか呼ばれていた成金ドクロお化けさんこと現場監督も一緒だ。


つまり、イリスさんの軍勢を率いる幹部が勢揃い!

私以外ね!


やだよ私は。

だって専属料理人ですよ!? 場違いも甚だしじゃない。

あ、そういう意味では料理人補佐の主任も場違いだね。


まー、そんな余計な事を考えながらイリスさんを見てみると……。


いつもと違う、表情。

眉間に皺を寄せて溜息交じりに頬杖なんか付いている。


おーい、美人が台無しでっせー?


『女王陛下?』


王様も普段と違うイリスさんの様子が不思議に思ったらしく、声を掛けた。するとイリスさん、また溜息を吐き出した。



「……憤怒のレヴァスが、目覚めた。」



その一言。

“場が凍り付く” ってこの事を指すのね。


え、レヴァス?

何か、どこかで聞いた名前だな?


「何と……彼奴が!」

『目覚めたとなると……レルヴィス大陸か!』


メイドさんも王様も、皆して驚いている。

だが、どこか何となく分かっていた、という感じもあるな。


「そうなると…… “色欲のマリーシャ” も復活したという事になりませんか?」


シキヨクのマリーシャ?

シキヨクって、色欲かな?

ええー、何その人。エッチな人? やだぁ。


「マリーシャが復活した波動は感じられない。だが、時間の問題でしょう。」


苦々しく告げるイリスさん。

どうやらこの感じ、レヴァスってのもマリーシャってのも、イリスさんにとって敵なのかもね。


確か、G軍団を率いるのが “強欲のガレオラ” って奴で、ドンパチしているって話だった。


おいおい、敵だらけだなボンキュッボン!



『ガレオラもマリーシャも、多く人類が住み付くレルヴィス大陸を根城としております。あそこには忌々しい召喚術(・・・)を扱う聖女……クロスフォード聖大国もありますな。』


え、人類!?

このファンタジーワールド、悪魔の国や魔界? とか思っていたけど、人も住んでいるの!? ちょっとちょっと、こんなガイコツボディじゃなく普通の人間にして欲しかったんだけど!


『おい、娘よ。うるさいぞ?』


ガチャガチャしていたらしく、銀ちゃんに怒られた!


って言うけどさ、銀ちゃーん!

元々人間、しかも貴重なJKブランド謳歌中のアヤカさんなんですよ? こんなスカスカなガイコツボディにしてくれたボンキュッボン、マジで許すまじ!!


「ここダクラシア大陸に住む人類は極僅か。だからこそ、グリードの軍勢としのぎを削りながら我らと我ら軍勢もまた増強せねばならない。前回の順位(・・・・・)がたまたま、私とガレオラが次席と六席だったからいち早く目覚める事が出来たのも僥倖ではあります。」


銀ちゃんに叱られた私を無視しながら、イリスさんは続ける。

あ、結構真面目な話なんですね。スンマセン。


「恐らくガレオラも気付いているでしょう。今まで以上に攻勢を強めてくるかもしれません。」

「戦況はどうだ?」


メイドさんの言葉に頷き、イリスさんは銀ちゃんに尋ねる。

『はっ!』と深く頭を下げる銀ちゃんだ。


『こちらがやや優勢というところです。以前、娘がマンティスブレイブのネームドを屠ったのが影響しているのでしょう、我らスカルナイトの師団が著しい活躍を見せ、徐々に彼奴めの城へと近づいております。』


おっ! いいね銀ちゃん。

そうよ、このアヤカさんがあのルコスなんちゃらっていう、でっかいカマキリお化けを倒したんだから! そのおかげよね~。


「くねくねするな、娘。気持ち悪い。」


ムキッ!

“やや優勢” の立役者に何たる言い草!

ちょっとイリスさーん、メイドさんの教育が成っていませんよー?


「そう。油断ならないですね。ネームドを封印してまで隠し持っていた臆病者だ。他に隠し玉があるかもしれない。」


『そう見るのが正しいかもしれません。』


つまり、ルコスなんちゃらのようなバケモノが他にもいるかもしれないって事ねー。うわぁ、やだやだ。

まー、でも、私は女王サマの専属料理人なので関係ない話よねー。


『そこで。』


ん? なんで銀ちゃん、私を見るの?



『明日、娘をお借りしてもよろしいでしょうか?』



はああああいっ!?

私!?


「ほう。何故だ?」


『他の魔王が目覚めたとなれば、グリードの軍勢もまた攻勢を強めてくるのも容易に想像できます。そこを迎え撃ち、明日、一気に包囲網を固めてしまうのも一興かと。そのために、ネームドを屠った娘の力を今一度お借りしたい。』


ちょちょちょーい!

待って、ねぇ銀ちゃん待って。

私、料理人! リョウリニン!


「ふむ。」


えー、そこ考えるところ?

イリスさーん、美味しいゴハン食べられなくなりますよ!?



《ポンッ》



ふぇっ!?

この音は……。



《称号『半身の相関』より干渉》



ちょっと、唐突に何よ。謎ボイスちゃん!



《レジスト不可。干渉を許可》



待って。

ねぇ待って。何が何だか分かんないんだけど?

説明プリーズ!


「どうした。娘?」


いやイリスさん、私が聞きたいわ!



《魂の称号より受託》

《受託措置開始》


《称号『半身の相関』受理》


《称号『渇望なる者』スキル、“鑑定眼” 発現》

《称号『渇望なる者』スキル、“探知” 発現》


《ポンッ》


《称号『半身の相関』発現スキル上限達成》


《上位称号『渇望なる者』より称号進化を打診》



え。本当に意味が分かんないんだけど……。

打診って、何を!?



《称号『半身の相関』所持者、“ミサキ・シンセイ” 受理。称号『半身の絆』発現。『半身の相関』抹消》



ミサ……キ!?

今、ミサキって言った!?


どういう事っ!?



《ジジッ ザーーー》



『―― お姉っ!?』



ミサキッ!?


今、ミサキの、声っ……。



「どうした娘!?」

『しっかりせんか!』


え……。

メイドさんに、銀ちゃん……。


今、今ねっ。

妹の声が、ミサキの声が、聞こえたの!!


どうして、何で、どうして!?


まさか……。

ミサキも、この、世界に??


嘘、嘘嘘嘘。

信じない。絶対、信じない!



「何か様子が可笑しいわね。……スカルジェネラルよ。」


『はっ!』


「先ほどの話は保留だ。娘が落ち着いたところで本人の意思を確認する。後手にならぬよう、守りを固めグリードの軍勢を迎え撃て。」


『御意。』



嫌だ……。

信じないっ。ミサキが……こんな気持ち悪い世界に来てしまっているなんて、私は信じない。


そうよ。

ミサキは絶対、元の世界で元気にやっている。


相変わらずモテモテで。

相変わらずクールを気取って。

相変わらずマコっちと一緒にボーイズラブを妄想してグヒヒデヘヘと涎を垂らしているはず。


……あ、何か冷静になった。

そうよ。あの病的オタクのミサキが、こんな世界に居るはずが無いじゃん!

私からゴハンを取り上げるレベルで、ゲームに漫画、特にボーイズラブをあの子から取り上げるのは酷い話なんだからね!


お姉ちゃんは心配だよ、色んな意味で!


……ミサキ、大丈夫かな。


ん?



《鑑定眼、発動》



ふぇっ?



―――――


鑑定眼(Lv1/10)


■固有名 イリス・エンペラス・エンヴィ

■種 族 嫉妬の魔王(ユニーク種)


―――――



え、なにこれ?

何か、イリスさんの前にボヤッと文字が……。


「無礼者っ!!!」


ぎゃあああああっ!?

何々!? ちょっと、待って!


怒鳴るメイドさん。

いきなり、死神が持つような大鎌で私の首元にーー!


ちょっと、マジで待って、待ってぇ!?


『貴様っ! 女王陛下の御前ぞ!』


ええええっ!

何で王様も激オコなの!?

何、魔法杖から魔法陣出しているのぉ!?


「待て!!」


「『陛下っ!?』」


「良い! 恐らく、本人も理解していないと見た。」


イリスさんの言葉で、メイドさんも王様も殺気を押さえて跪く……。けど、めっちゃ怒っているのがビリビリ伝わってきまっせー!

怖い怖い怖い怖い怖いっ!


「陛下……よろしいのですか!? 断りも無く、陛下の御前で鑑定眼を発動させるなど……。」


ん? 鑑定眼……。

あ、さっき謎ボイスちゃんが “発現” とか言っていた、スキル?


イリスさんの正面に謎の文字列が並んだけど、そのこと?



「良い。どう見ても、娘も混乱している。元より所持していたのか、何かのきっかけでスキルが発現したのか……。気になる現象ではありますが、どうやら意図せず発動したようだ。そうだろ、娘?」


コクコクコク!

力強く、何度も頷きますよ!


ふむ、とイリスさんが目を細める。

……収めてくれたけど、ちょっとオコ?


「娘。知能と自我がある前提で伝える。今お前が発動させた “鑑定眼” を敵対者以外に断りも無く発動させることは “敵対行為” に該当する。しかもここは私が控える女王の間。私以外、例外無くこの場で鑑定眼を使用することは極刑に処する重罪よ?」


ええええええっ!? マジ?


「……だが、お前の様子からしてみて、何かのはずみで発動したと考えられる。そうでなければ、こんな場面で使うなど到底考えられない。そうでしょ?」


コクコクコク!


「ならば、有能なお前(・・・・・)だからこそ、今回に限り不問とします。次はありませんから、気を付けるのよ?」


はーい!

本当にすみませんでしたー!


って、謎ボイスちゃあああん!

よくもやってくれたなー!?


有能な私(ここ重要! テストに出るよ?)だからこそ許されたんだからね。


……それにしても、私が鑑定眼使ったってこと、すぐ分かるんだなー。

何でなんだろ?


「まぁ、鑑定眼が扱えるという事は、やはりこの娘は只者ではない。ますます、その身に宿す称号が何か気になりますね。」


『確かに……。我ら魔物の身ではよほどイレギュラーな称号を所持しない限り、あり得ません。』


「そうよ。それこそ本来は序列2位(・・・・)まで辿り着かなければ発現が許されない領域。かく言う私も、未だ発現が許されていないのよ? だから……。」


イリスさんが、足を組みなおしてニヤリと笑う。

ああ、その笑顔。



「これからも有用に使いましょう。」



ムキー!

やっぱこのボンキュッボン、嫌いだ!


「ああ。早く念話が発現されないかしら? 念話さえ取得すれば……グリードの軍勢どころか、ガレオラの力量すら把握できる。ガレオラさえ吸着出来れば……。」


厭らしい笑みを浮かべ、立ち上がるイリスさん。



「その次は……忌々しいあの国よ。」





―― この時、私は命が無事だった安堵感と、不意に聞こえたミサキの声で頭がこんがらがっていた。


イリスが伝えた、ガレオラを倒した次の狙い。

……それが、ミサキ達が召喚されたクロスフォード聖大国を指し示していたなんて、人類を狙おうという魂胆だったなんて、分からなかった。



それは、遠いようで、近い話であったことも。

知る由も、無かった。

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