目紛しい変化
伝令は上杉景勝からだった。
「上杉様から状況確認を命じられました。何名かは内藤様と秋山様のところへ向かっております」
「ご苦労。その2人は死んだ。敵の様子だが…………」
伝令はこの3人の活躍に驚きながらも冷静に状況を確認したのち、
「上杉様はご出陣されすぐそこまできております。状況により合流されたしとの事でございます」
跡部は驚いた。そうか、機を逃さないのはさすが上杉だ。とはいえ、あの前面の敵はどうしたのか?まあ我らが抜けれたのだからできるではあろうが誰かがあそこを守っていなければできぬ話だ。
出城を抑えている敵は二万、それを欺いて出陣とは。居残りが上杉の出陣に気付かれないようにしているのだろうが、まさかそれが真田の小倅だとは思いもせず。だが今は考えている時間が無かった。
「わかった。まずは上杉様へいまの話を」
伝令は走って戻っていく。話を聞いていた真田の兵、海野景光は跡部に囁いた。跡部の目が輝く。
跡部の兵が下がり始めた。福島正則はそれを聞いて、
「動いた方が負け。それを敵もわかっていて動いた。恐らく今引かねば清正と挟み討ちに合うと考えたのであろう。ならば」
正則は、焦らずに追うように指示した。ゆっくり追えば清正と挟み討ちにできる。袋の鼠にしてやる。
跡部の兵はそれを見て走るように引き始めた。それは慌てて逃げているように見えた。正則の兵はそれを見て絶好機と思った。逃げる敵は追いかけたくなるものだ。追う正則の兵に矢が降ってきて何人かが倒れた。逃げながらも攻撃をしてきたのだ。それを
「そんな攻撃は続かない。敵は瀕死だ。ゆっくりと攻めかけよ」
侍大将がけしかけた。敵の攻撃はさっきの矢が精一杯に見えた。ゆっくりとと確かに指示はしたが、兵からすれば少しはいいところを見せたいという思いがある。実際今まで大した成果が挙げられていない。
敵の攻撃は止まり逃げ出していく。それを追いかける。すると敵が再び反転して攻撃を仕掛けてきた。敵の大半は大急ぎで引いていく。このままでは本隊に逃げられてしまう。指示通りゆっくりとはできなくなった。
徐々に攻め側の足が早くなっていく。足留めと思われた兵も早足で逃げていく。逃げながらも矢が飛んでくるので厄介だ。兵のイライラが溜まりどんどん攻め足が早くなる。ここは山道、どうしても人は縦長になる。それを後ろから見ていた正則は、
「焦らずともいいものを。まあいい、もう清正達が来る。袋の鼠だ」
その清正達の物見が進軍方向に大軍を発見した。しかも上杉だという。数は一万とも二万とも。近づいた物見は帰ってこれず全貌がわからないという。こちらの兵力より多いとは思えぬがこちらは負傷者入れて二万強、福島正則と挟み討ちにするしかない。清正は籠に乗っている黒田官兵衛に相談する事にした。
「黒田様、ゆっくりとはしておられませんが軍議を」
島津の意見は戻るだった。何度も伏兵が現れてこちらの損害が大きく亀山を攻める事は難しい。一度下がり立て直しを図るべきという意見だ。ここで上杉が出てくるという事は亀山の抑えの二万もどうなっていることか。
官兵衛は、下がるのではなくここから大阪、姫路までの敵を排除して拠点とし居座り亀山を改めて攻める、ただ将軍がいつまでも亀山にいるとは思えん。この機はどっちに向いているのか?と冷静に話す。官兵衛はあくまでもこの軍の大将は清正なので強い発言はしない。決定権は清正にあるのだ。
確かにこのまま亀山に攻め上がるのは無理がある。だがここで上杉と戦ってみたい。しかし上杉は勝てると見込んだからこそ出てきたとみるべきだ。
「仕方あるまい。黒田様のご意見が尤もと存ずる。正則に伝令を!」
清正は大阪城への使者に飛龍を選んだ。こいつなら思った以上に悪く言うだろう。
その飛龍はつまらんと思いながら大阪へ向かい始めた。途中で地龍に会い話を聞き驚いたが地龍とともに大阪へ戻っていった。
福島正則への伝令は上杉の忍びに捕らえられ伝わる事はなかった。そしてその正則の軍は跡部を追いかけて上杉とぶつかった。その様子は清正にしばらくしてから届いた。清正は新たに伝令を飛ばして正則を下がらせたが大きく消耗してしまった。上杉、福島とも二千の兵が死傷した。
清正、正則は丹波の摂津、播磨側を制圧して拠点を作った。その動きを察した結城信平は八上城を捨てて亀山へ向かった。上杉と跡部は元の上杉出城を抑えている加藤勢に戦を仕掛けた。
まだ信平は井伊直政の死を知らない。




