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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第2章 ここは私の知らないゲームの世界
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4-8 吊り橋効果

 ルヴィアが攫われて1日が経過した。

 ドミニク達は夜通しでルヴィアの居場所を探していた。


「バーバリーって宗教施設多すぎ。資金の流れも全部宗教関連だしほんとめんどくさいんだけど……」


「申し訳ありません。私の監督不足であり、此度の件は私にも責任があります」


 バーバリー領主であるリビリア・コルダ前教皇は、ドミニク達から旅の途中に姫様が攫われたと連絡を受け、大聖堂から急遽領主の館へと戻ってきていた。


「だいたいわかったからもういいや。兵士だけ貸してくれる? あとはクランツェフトから処分の連絡を待ってて」


「はい……」


 今回ドミニクは、リーブスから宰相代理の権限をもらっており、リビリアはドミニクに逆らえなかった。

 言う通りに兵に指示を出すために部屋を出る。


 入れ違いでレイとリーンが領主の部屋に入ってきた。

 

「ドミニク様、ルヴィア様の居場所はわかりましたか?」


「目星はついてる。1番怪しいのはレイモンド枢機卿だね」


「ありがとうございます。もし強者が出てきましたら私にお任せください」


 準備が整い、兵士と共にドミニク達は移動した。

 レイモンドの屋敷に到着し、屋敷の中を捜索する。


 レイと別行動をしているドミニクは一段と騒がしい部屋があることに気付き、その部屋を恐る恐る開けてみた。


「あ、ドミニクやっときた。遅くないー? まぁこれ食べなよ」


 そう言って渡された骨付きチキンを受け取ったドミニクは、この状況に唖然とした。


「……バカなの?」


 レイモンド枢機卿と見られる人物が、少女に叩かれながら肩車をして食堂を走り回っていた。

 そして、食卓には豪勢な食事と飲み物、ぐちゃぐちゃに散らばったお菓子類。

 すでにルヴィアはパーティを始めていた。


「あ、そうそう。これ見て。」


 ドミニクはルヴィアから渡された紙を見て驚いた。


「これ……クランツェフト、リンルードにも造反組がいるのか……急いでクランツェフト戻らないとな……」


 ドミニクは、紙に書かれた氏名を見ただけで組織の全容が見えてきていた。


「それだけー? 俺結構頑張ったんだけど」


「いや。まぁ確かにすごいけどさ……僕の予想の遥か上を行く行動に言葉も出ないって言うか」


 救出作戦のはずが、敵地でパーティをしている。

 よくわからないが、ルヴィアはもっと早く帰ってこれたんじゃないかとドミニクは呆れていた。


「ドミニク様。目当ての人物がいなかったので、私とリーンはこれよりドワーフ地下帝国へ向かいます」


 他の場所を捜索していたレイが戻ってきた。


「うん、僕はルヴィアを連れて一旦クランツェフトに戻るから、アリアをよろしく」


「かしこまりました」

 

 レイは部屋の中の騒動を一瞥して、顔を少し顰めて立ち去った。


♢♢♢


 ラビットは、自身の神と別れてからハンスの分身と戦っていた。

 そうすることで神のお役に立てると信じていた。


 ラビットの剣には迷いがない。

 単調だった剣は、正確無比の剣へと進化を遂げていた。

 1人、また1人とハンスの分身を消していく。


「一皮剥けましたね、ラビット君」


「神は私に強くなれとおっしゃいました。貴方にも負ける気はありません」


「いい傾向です。もっと励みましょう」


 さらに5体倒したところで、ハンスの分身が全て消えてしまった。


「神が次なる段階へと進まれた」


 神とハンスの勝負が終わったことを察したラビットは、ドワーフ地下帝国へと最短で移動した。


 洞窟の中へ辿り着くと、迷わずに小さい穴の中を進んでいった。

 匍匐前進でしか進めない通路も、神速のラビットにかかればあっと言う間に進んでいく。


「ニンゲン、オマエ、ナニモノダ?」


 1人のドワーフが道を塞いでいた。


「私は神の下僕。それ以外の何者でもありません」


「オマエノカミ、バーバリー、テキ」


「私の神はバーバリーのルナ神ではありません。実存する偉大なお方です」


 ドワーフは銃の引き金を引きかけていた指を止めて、ラビットをじっと見た。


「オマエノカミ、コレツカウ」


 そう言って銃を見せてきたドワーフに、ラビットは頷く。


「私の神はその武器を愛しておられる」


「オマエ、ナカマ」


 ドワーフも頷き、ラビットを案内し始めた。

 穴を抜けて、ラビットでもしゃがめるくらいの広場に出た。


「私の神はここへこられたと思うのですが……」


「ニンゲンキタ。ズットマエ。カミハキタ、ズットズットマエ」


「よくわかりませんが、貴方達の街に案内していただけますか?」


 ドワーフは頷くと、また別の小さい穴へと入っていった。


♢♢♢


 私は今、泣きそうになっている。

 それもそのはず、同じ道をぐるぐると回っていたからだった。

 出口がない。

 いや、正確にはあったのに目の前で崩落した。


 ……私達は完全に遭難していた。


 何日経ったかわからないけど、ずっと苔の生えた広場にいる。

 

「ハンスのせいだ。缶詰もうなくなっちゃったよ! 食べるもの、何もないんだから!!」


 ハンスは広場に寝転がって目を閉じている。


「何とか言ったらどうなの!? くっ! この! 長いまつ毛だな!」


 寝たふりなのか、寝ているのか、死んでいるのか。

 私は懐中電灯をハンスの顔に向けてパチパチと点けたり消したりしていた。


「遭難した時は、あまり動かない方がいいですよ」


「起きてんじゃん! ……そういう生活の知恵みたいなのいらないから。何か良いアイデアないの?」


 いまだに目を閉じてじっとしているハンスの顔をじーっと覗き込む。

 顔が整ってて、非の打ち所がないのがさらにムカつく。


「殿下、あまりじろじろと見ないでください。言いたいことはたくさんありますよ。例えば殿下が食料をもっと多く作っておくべきだった、とか。水中洞窟ではなくドワーフが使っている穴を行くべきだった、とか」


「それを言うならハンスもでしょ!? 結局やったことと言えば私の缶詰食べただけじゃん!」


「あれは美味しかったですね。なくなってしまったのが悔やまれます」


 ……。

 だめだ、何を言っても無意味だ。


「……ハンスは死ぬのが怖くないの?」


「人はいつか死ぬものです」


「じゃあ、何に恐怖を感じるの?」


「……」


 珍しく考えてる。

 いつもなら適当なこと言って誤魔化すのに。


「恐怖を感じたことはありません」


「え……? それは最強だからってこと?」


「なぜでしょう。私にもわかりません」


 声に少し憂いが混ざってる気がした。

 ハンスにも意外な弱点があるのかも?


「ふーん。あ、そういえばごめん、ハンスのこと化け物って言って」


「それは謝ることなのですか?」


「えっ、そうだよ。多分。……違うのかな」


 もし私がゲーム中に誰もできない神プレイをして、それで化け物だって言われたら嬉しいかも。


「うーん、私は嬉しいから実は褒め言葉だった……?」


「ククク……殿下は不思議です。よくこのような、たわいもない会話を思いつきますね」


 いつのまにかハンスは目を開いて私を見ていた。


「ちょっと、それ何気に私のこと貶してない?」


「いえいえ、褒めているんですよ。私が人間から話しかけられる時は、だいたい何か思惑があることが多いですから」


「それは……そっか……」


 ハンスはずっと1人だったんだろうな。

 同じレベルの人もいなくて、ただ強さだけを搾取される……。

 寂しいのかな?

 それとももう、何も感じなくなったのかな。


「……私は絶対強くなるよ。だから安心して? 大陸最強の座を奪ってやるんだからっ!」


 ハンスは起き上がって私と同じ目線になった。

 じっと見透かすように見つめてきて、そして、今まで見た笑顔の中で1番優しく微笑んだ。


「おやおや、何を言い出すかと思えば。殿下の妄言は……なかなかに面白い」


「妄言じゃないってばぁ! 私にとって時間は味方だし、どんなに強い人でも何回か戦えば癖とか思考とか読めてくるんだよ?」


「それは私にも言えることですよ。殿下の癖、思考、魔力の色、魂の形、全てが私の手中にあります」


「そ、それは言い過ぎじゃない?」


「そうでしょうか?」


 クスクスと、からかうように笑われた。


 やっぱり、早く洞窟から抜け出さないと。

 私の不整脈が酷くならないうちに。

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