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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第2章 ここは私の知らないゲームの世界
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4-6 缶詰と圧力

 リーンはハンスを見て腰を抜かしていた。

 

 アリアーデに言われて変装して街に出たものの、ものの数秒でハンスに見つかってしまっていた。

 もう少し長くアリアーデの役に立ちたかったのに、リーンは自分の知らないうちにハンスに苦手意識を持ってしまっていて、顔を見ただけで拒否反応が出てバレたのだった。


「その見た目で誤魔化せると思っているんですか?」


 アリアーデからは顔を伏せて歩けと言われていたのに、大通りに人が多すぎて難しかった。


「わ、わたしのせいです……」


「ハンス様、やはりリーンに何かいたしましたか? あれから様子がおかしいのですが」


 レイはリーンの異変に気付いていたが、どうすることも出来ないでいた。


「ああ、放っておけば治りますよ。私への恐怖心はなくならないでしょうが」


「レイさん、私は大丈夫です……」


 あまりハンスと長居したくないリーンは、無理をして気丈に振る舞った。

 

「では、今行っているアリア様との勝負の内容を教えて下さい」


「それは殿下から直接聞けばいいだけだと思いますよ? それとも、既に見限られてしまいましたかねぇ」


 ハンスはクスクスと笑ってレイ達を見下す。

 アリアーデが単独行動をする理由に、レイ達の行動が関係していないと言えば嘘になる。

 けれど、これはアリアーデのためなのだ。


「……我々には協力していただけないと言うことですか」


「私は私の渇求を満たしたいだけですから。では失礼します」


 そう言い放ち、ハンスの分身は消えてしまった。

 それと同時に街に複数いた分身達も一斉に姿を消した。


「もしや。リーン急ぎますよ。姫様が危険です」


「はい……」


 ピロン。

 ドミニクから連絡が来た。

 レイは苛立ちながらも応じる。

 

「こんなときに、なんですか?」


『ルヴィアが……攫われた……』



 ルヴィアとドミニク達はこの状況を楽しんでいた。


「すごい完成度だよね」


「そうでしょー? 俺のアリアは世界一だし」


 ルヴィアの姿は変身によってアリアそっくりだった。

 ドミニク達はリーン達の宿屋とは違う場所で撹乱を行う予定で、今はバーバリー大聖堂まで来ていた。


「その喋り方をどうにかした方がもっとアリアに似せれると思うけど」


 そうドミニクに言われたルヴィアはさっそく話し方を変えてみた。


「一緒にデートしてるみたいだね」


「……そうだね」

  

「ドミニク、私のことどう思う?」


 ルヴィアとわかっていても、ドミニクはいつもより素直に気持ちを吐露した。


「僕はアリアには感謝してるんだ。アリアがいなかったらずっと屋敷に籠っていたし、父さんとも分かり合えなかったから」


「それ、私がいるときにちゃんと言ってよね! ドミニクの臆病者!」


「そんなこと、アリアは言わないんだけど……」


 違和感のあるセリフにドミニクは眉をしかめる。


「それにしても、よくアリアはあんな奴と戦えるよなー」


 あんな奴とはハンスの事で、大抵の人は目が合っただけでも恐ろしいと思ってしまう。

 それでもその容姿から、令嬢達が集まるパーティではとても人気である。


「たしかに。挑もうとすら思わないね」


「強いアリアもいいけど、弱いところも見てみたいよねー」


 人に弱味を見せないアリアは、いったいどんな事で泣いて、どんなことで驚くのか。

 ルヴィアの行動の一端はそこから来ている。


「僕は絶対ゲームで泣かせてやろうと思ってる」


「えー、じゃあ俺は何にしよーかな……うわ!」


 大聖堂前の長い階段で喋り込んでいた2人は、アリアの容姿がどれだけ一目につくかを考慮していなかった。

 そして、アリアに扮するルヴィアは2人組の男達に連れ去られてしまった。


「ルヴィア! ま、まて! そいつは男だぞ!!」


 早く変身を解け! とドミニクが叫ぶも、ルヴィアは驚きすぎて魔法を解除できないまま路地に消えてしまった。


「はぁ……?」


 ドミニクはバーバリーの修道院が立ち並ぶ神聖な風景の中、あまりに場違いな出来事に1人立ち尽くしてしまった。



 ぴちょん。

 額に滴が落ちてきて目が覚めた。


「いたた……私、生きてる……!」


 起き上がって、怪我がないか確認する。

 魔法は……。


「使えないじゃん……」


 ため息をつきながら、ひとまず濡れた服を着替えていく。

 洞窟の中は風があるので恐らくどこかには繋がっているはず。

 湿度が高かったら濡れた体も乾かなかっただろうけど、そんなことはなさそうで安心した。


「ほんと私グッジョブ。防水リュックにしててよかったぁ〜」


 ここには、ところどころに光るキノコが生えていて、きちんと視界も見通せる。


「と言うか……ハンス次会ったら殴る!!」


「おや、なぜ私は殴られるのですか?」


 後ろからぬるっと現れたハンスに悲鳴をあげそうになるも、なんとか堪えた。


「そりゃ……だって、あんなの聞いた事ないし、何より直前の行動が不自然だったもん! つんつんしても動かなかったからいかにも怪しいでしょ?」


「それだけですか? そもそもなぜ私がそんなことをしなければいけないのですか?」


 証拠はない。

 だからこそハンスはこんなに強気なのかもしれない。


「私を苦しめるため? 動機はしらないけどさ、じゃあなんで今になって出て来たの?」


「殿下の着替えを覗く趣味はありませんから」


 でも、私の持ち物について念押ししてたし……。


「こうなること知ってたでしょ?」


「もちろん。ですが、それを言う必要がありましたか? 言ったはずですよ、私は見物に来たのだと」


「……じゃあ、これはハンスのせいじゃなくて他が原因で、私が困るだろうから見に来たってこと?」


「先ほどからそう申し上げているつもりでしたが、ようやく理解できましたか? ちなみに私も魔法が使えない状況ですのであしからず」


 ……性格悪っ。

 はぁ、それにしても最近いろいろありすぎて疑心暗鬼になってるかも。


「それはごめん……」


「いえいえ」


 あれ? でもおかしい。

 なんでハンスの服は濡れてないの……?


「服、どうして濡れてないの?」


「ああ、それはこれですよ」


 そう言って見せてきたのは、青色の魔昌石だった。

 

「なるほど……ね」


 なんて贅沢な使い方。

 魔昌石にただの服魔法を仕込むとか、無駄遣いすぎる……。


「てか、魔昌石は使えるんだ」


「魔法発動の原理が違いますからね。殿下の持っている魔昌石も使用できますよ。使えたらですが」


 レイからはもうそろそろ発動できるはず、とお墨付きをもらってるから、多分できそうな気がするんだけどね。


「まだ試してないだけだし。それに、発動出来たとして何の魔法が入ってるかわからない以上安易に使えないでしょ?」


「そうですねぇ。その中の魔法は便利ですよ。危ない時に使う方がいいと思います」


 ハンスのことだから爆発とかしそうで怖いんだよね。

 ピンチなんでしょう? 助かってよかったですね、とか言ってこっちも瀕死とかありそう。


「ふーん。安全な魔法だと良いけどね」


 先が思いやられるなぁ。

 とにかく先に進むしかないか。


 今の私の武器は契約魔具に収納されてるナイフぐらいだ。

 ドワーフと会って銃で撃たれたら、正直避ける自信はない。

 ということは、なるべく戦闘を避けつつ魔法が使えない理由を探る必要があるね。



 洞窟の中を2時間ほど歩いて、崖になっている場所まで来た。

 下を覗くと広場になっていて、わずかに苔が生えていた。


「苔が生えてるってことは、ここ日が当たるのかな?」


 でも今はキノコの光しかなくて薄暗い。

 時間がわからないけど、夜になったのかもしれない。


「今日はここで休も」


 ひとまず崖から降りて、平らな場所に移動する。

ここまで無言でついてきているハンスを無視して、私はリュックからタオルを出してお尻に敷いて座った。

 さらに缶詰を出して食べようとした。


「私の分はないんですか?」


 こ、こいつ……私からたかろうとしている!?

 アドバイスは何もしないのに!?


「……あるの思うの?」


「ないんですか?」


「……あると……本気で……思ってる?」


「ないんですか?」


 え、ループ入ってる?

 渡すまで終わらないの?


 ……無言の圧力が怖い。

 私は恐る恐る缶詰を開けると、ハンスは1歩だけ私に近づいた。


 スプーンで焼き鳥をひと匙すくうと、ハンスは今まで立っていたのにしゃがんで目線を合わせてきた。


 見ない、気にしない、私はこの焼き鳥を食べるんだ!!


 ……でも気になる。

 ちらっとハンスを見たら、お預けを食らった犬みたいな顔をしていた。


 なんか可愛いかも。

 ……もう一度チラ見したら、今度はにっこり笑いかけてきた。


 圧力。

 可愛くなかった。

 カツアゲだわ。


「これ、あげる」


 仕方ないので焼き鳥缶ではなく、鯖の味噌煮缶をあげた。

 どちらも私が前世の記憶を頼りに魔法で作ったものだから、ハンスは食べた事ないはず。


「ありがとうございます。これからは私の分もお願いしますね」


「……絶対明日にはここから抜け出してやる」

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