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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第2章 ここは私の知らないゲームの世界
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3-4 戦勝記念パーティ

 華やかな戦勝記念パーティ会場の主役、ハンス・レガリウスは貴族達の賞賛の中、にこやかに歩いていた。

 私はと言えば、そんな主役を遠目に壁に寄り添って果実水を飲んでいる。

 私は公には討伐に参加していない事になっているのだから、当たり前と言ったら当たり前だ。


 ハンスが令嬢の近くを通るたびに悲鳴のような嬌声が聞こえてくる。

 あの性格のくせに人気があるのがムカつく。


「あの笑顔、絶対めんどくさいって思ってそう」

「僕も同意見」


 いつのまにかドミニクが片手にドリンクを持って立っていた。

 いつものゆるい作業着とは違って、今日はきちんと正装だ。ちなみにドミニクもご令嬢達から「あの方はどなた?」なんて言われている。

 公式にはアークリガリットがオブロン侯爵子息だと知られてはいないので、普通にドミニクは侯爵子息として食事を楽しんでいた。


「なんか、みんな人気だねぇ」

「アリアこそ、何言ってんの……?」


 ドミニクは呆れてこちらを見ている。

 何って、私はまだ9歳なのにチヤホヤされる方がおかしくないか……?


「カイネル皇太子殿下が参りました」


 レイがコソッと耳打ちしてくれた。

 そうだ、今日はお兄さまにガツンと一言言ってやるつもりだったのだ。


「ごめん、ドミニク。また後でね」


 ドミニクと別れて、お兄さまの方へと向かう。

 ちゃんとハンスが外に出したライデン(ぬいぐるみ)の中にあった録画水晶も証拠品として持参してきている。

 ここに……。

 ここに……あれ?


 ポケットの中にしまってたはずなのに、見つからない。


「姫様、隠蔽の魔法が使われた形跡があります」


 隠蔽の魔法?

 私の録画水晶が盗まれた?


「気付かずに申し訳ありません……。隠蔽の魔力の跡が薄く、中庭の方へと続いているようです」

「中庭ね。レイはここで待って。犯人が戻って来るかもしれないし」

「1人では危……かしこまりました」


 レイが何か言いかけて口をつぐむ。


「大丈夫! 前みたいなヘマしないし、すぐ戻るから!」


 心配しているレイに、笑って手を振る。

 レイも頷いて送り出してくれた。


 中庭に出ると、綺麗なお花が咲いている花園へと道が続いていた。


「さてさて〜、ハンスがヒントをくれたおかげでちょっと光明が見えたんだよねぇ」


 見るんじゃなくて、感じる。

 自分の魔力を。そして、その魔力を手がかりに外の気配を感じること。

 目を閉じて集中すると、後ろにあるパーティ会場の大勢の気配と、目の前の花園から感じる1人の気配があった。


「そこかっ!」


 水塊を瞬時に発生させて、感じた気配のする場所へと落とす。


「……あれ?」


 近づいて確認すると、お花が萎れているだけで人はいなかった。

 デコイ……?


「うぎゃ!」


 後ろから何者かの突進を受けて倒れてしまった。

 ぐ、痛い……。


「姫さま、だいじょうぶー?」


 私の上に覆い被さっていたのは、私と同い年くらいの紫紺の瞳を持つ男の子だった。


「ちょっと! 人に全速力でぶつかるなんて、危ないじゃない!」

「えー? 避けれないのー?」


 イラっ。

 なんか悔しい。

 私と同年代の子に遅れを取る……だと?


「ふふ、ふふふ。教育的指導が必要みたいね」


「しどー? 押し倒されてるのにー? どうやってー?」


 少年がにんまりと丸い録画水晶を見せつけてくる。

 くっ、こいつは悪戯っ子に違いない!


「ねーね、俺とあそんでよー? 勝てたらコレ、返してあげるよー?」


 べーっと舌を出してそう言った少年の舌には、ピアスが光っていた。

 

「……私に勝てると思ってるの? 今だって、君の腕を吹き飛ばして水晶を取り返すことだってできるんだからね?」

「姫さまそんなことしないでしょー? じゃ、かくれんぼ開始〜! 姫さまが負けたら俺とキスしてねー?」


 腕を掴もうとしたらまた消えてしまった。


「はぁ、よりにもよってかくれんぼか……」


 姿を消すことにおいてはかなり先を越されてる。

 しかも分身も作れるとは。

 かなり骨が折れそうなかくれんぼになりそうだな……。

 ひとまず、レイに報告してからにしよう。


 中庭に出てきていたレイに、今しがたあったことを伝える。


「多分貴族の子だろうけど、紺色の髪に紫紺の眼の舌ピって言ったら誰だかわかる……?」

「ルヴィア・パールメント公爵子息ですね……。パールメント公爵家はリンルード出身なのですが、少々変わっておりまして。説明は後で致しますが、どうなさいますか?」


 さすレイ。歩く人物辞典だ。


「私が直接お仕置きするから、もう少しだけ待っててね」

 

 

 ♢


 姿を消す魔法はイメージが作りにくい。

 存在感を消す、自分自身が消えたいと願わないと姿を消すことはできない。


 目を閉じて気配を探る。

 大勢の気配と小さな気配。

 目を閉じたまま、私は気配を感じた方向へと水塊をいくつも飛ばしていく。


 人の気配は人それぞれみたいだから、多分部外者に当てることはない……と思う。

 ルヴィアはなんだか紫っぽい気配がする。


 身体強化魔法を発動しながら、この前見たお兄さまの空飛ぶ魔法を試してみる。

 上空から確認した方が手っ取り早い。


「うわっバランス難しっ!」


 これじゃあふんわりジャンプ程度にしかならないけど、今はこれでいい。


 落とした水塊の後には少年の姿はなかった。


「林の方かな……」


 花園の隣には林があり、身を隠すにはうってつけだった。

 仕方ないので歩いて向かうと、糸のようなものが木と木の間に張ってあった。

 ……もしかして罠?

 少し離れて風で切断すると、上からネットが落ちてきた。

 あっぶなー。気づいてよかった。

 これは、木の枝を飛び移って移動した方が良さそうだね。


 だけど罠があるってことは、近くで見ている可能性が高いな。

 あの性格の悪さだと、罠に引っかかったところを笑いに来そうだし。

 

 とりあえず、木の上に移って音を聞く。

 動く音は聞こえない。

 葉っぱが風に揺れる音がして心地いい。


「はぁ。見つかんないし、ちょっとお昼寝でもしよーかなー」


 わざと大きめの声で言って目を閉じる。

 しばらくすると、今私が乗ってる木が少し揺れた。

 登ってきたかな?


 よし、分身ばっかりで身体強化魔法は得意じゃないみたいだから、ここまで近寄って来てくれたら逃しようもないね。


 そのまま体を横にずらして、枝から落ちるように降りた。

 ふふ、いたぞ。


 植物魔法でツタを出して木と一緒にルヴィアを縛り上げる。


「つかまえた。水晶は返してもらうから……ってドミニク!? こんなところで何してるの!?」

「アリアが林の中に入ってくのが見えたから、追いかけてきたんだけど?」


 なるほど……?

 でも、ドミニクが近づいてきたら音でわかるはずだけどな。

 だってドミニクは戦闘に関しては素人だし。

 もしかして……。


「……ねぇ、ドミニク。私たち付き合って1年経つけど、もうそろそろ次の段階に進むべきじゃない?」

「えっ……あ、じゃあキスして?」

「はい、ダウト。連行しまーす」


 ツタを巻き直して連行できるようにした。


 相手がわかりやすい子供で良かったなー。

 やたらマセガキだし、絶対ひっかかると思ったんだよね。


「はぁ!? 俺のこと騙したのー!? ひどすぎー。俺の純粋な心を弄ぶんだー?」

「どーこが純粋なんだっ悪戯坊主めがっ! もう少し大きくなってから出直しておいで」


 それにしても、透明化、分身、変身と多才だなぁ。

 将来は有望だけど、使い道を誤ると普通に犯罪者コースになりそうでこわいな。


「お父さんとお母さんはどこにいるの?」

「そんなのパーティ会場に決まってるじゃん」


 くっ、ああいえばこういう……。


「というか、水晶返してよ」

「勝手に取ればー?」


 服をまさぐって探せと。

 はぁ、これめんどくさいやつだなー。

 仕方ないので、ボディチェックする。


「姫さま触らないでよ〜! だれかたすけて〜!」


 やっぱり、グチグチ言ってきた。

 けどもう慣れちゃったもんねー。

 外側から探して、水晶は内ポケットにあった。

 水晶を回収した私は、ルヴィアに少しお仕置きすることにした。


「ふん。本当の悪戯とはこういうものだ」


 ルヴィアのツタを解除して私に巻きつけた。


「キャー! 助けてー!!」


 先ほどのルヴィアよりも大きい声をだして、近くの衛兵に気づいてもらう。


「殿下の悲鳴がするぞ!!」


 遠くで衛兵たちの声が聞こえてきた。


「ちょ、何してるの姫さま!? か、かくれなきゃ!」


 おろおろと焦り出すルヴィアに、私は泣く演技をする。

 さらに焦るルヴィアは透明になろうとするも、焦るあまりに魔法の制御にまで影響が及び、なかなか透明になれないでいた。


 衛兵達が近くに来た時、私はツタを解除し、何事もなかったかのように振る舞う。


「殿下、大丈夫ですか!?」

「あ、ごめんなさい。大きい虫がいたもので……。ルヴィアさんが退治して下さいましたので、もう平気です」


 衛兵達は安堵して、私を林から連れ出してくれた。


「ルヴィアさん、ほら行きましょう?」


 未だ呆然としているルヴィアに、私は勝ち誇ったように声をかけた。

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