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転生皇女はヤンデレ達と遊びたい  作者: 池田ショコラ
第2章 ここは私の知らないゲームの世界
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3-2 再会

「アリア。作戦は覚えてるね?」

「はい、皇宮魔道士達が帰ってくるのは明日です。ウルヴァが動かなければそのまま。もし動けば、交代しながら氷や植物魔法での足止めですね」

「いい子だ。止めれないと判断したら炎で焼き始めるけど、今回の人員では魔力が足りない。恐らく焼き殺す前に魔力が尽きて、ウルヴァが自己回復を始めるだろうが、朝までは動けなくなるだろう」


 ここはウルヴァから1km以上は離れているけど、ビル20階くらいの大きさの魔物だからかなり近く感じる。

 

 後ろは平原を挟んで市民街だから、これ以上進まれるわけにはいかない。

 4足歩行の毛が生えた恐竜みたいな姿をしているが、動きは遅いみたいだった。

  

 メンバーは私たち皇族とその護衛、皇城に残っていた魔導士と騎士、そして傭兵の編成になっている。

 攻撃系の魔法を高い技術で扱える者は少なく、魔力が多い人も珍しいからあんまり人が集らなかったのだ。

 ちなみに傭兵で一番人口が多いのは身体強化魔法を使った戦士だったりする。


「悔しいけれど、あれは都市一つ落とせる魔力量を持ったハンスか、皇宮魔道士達全員でないと難しいだろうね。なんでこんな時期に現れるんだ……」


 大型の魔物がやってくるのは100年に一度らしいけど、まだ来るには早いらしい。

 こんなレイドイベントならあと10年後にきて欲しかったなぁ。

 そしたら私もハンスよりも強くなって、あんな化け物すぐに倒せたのに。


「前足で殴られただけで軽く死ねそうですね」

「アリアは俺が守ってあげるから心配いらないよ」


 お兄さまがさりげなく私の肩に手を置こうとして、お姉さまに払われている。

 

「あらぁ? お兄様は防御魔法が苦手でしょぉ?」

「攻撃は最大の防御だ」


 またお姉さまとお兄さまが喧嘩し始めた。

 これで何回目だろう……。

 

「私の身は私で守りますから、大丈夫です」


 と、9歳の私が腰に手を当てて言ったところで信用してもらえなさそうだけど。

 動きもなさそうだし、少しテントで休んでようかな。



 満月が空高く上がった深夜。

 ゴゴゴゴ……と音がして、ウルヴァがついに動き出した。


「動き始めたな。皆を呼んでこい!」


 お兄さまの声が外から聞こえてきて、私も急いでテントから出る。

 と言っても、お兄さまは最前線で見学することしか許してはくれなかった。

 足の1本くらいだったら氷で固められるかもしれないから、加勢したいのに。


「まず、俺がウルヴァの前を飛んで注意を集める。その隙に、皆は後ろ足から固めてくれ」


 ふわっと、お兄さまが浮き上がる。

 これは、重力の魔法?

 体重を軽くして風を出して方向を安定させているみたいだった。


「盲点だった……」


 ずっと戦闘訓練ばかりレイとしていて、空を飛ぶ人も身近にいなかったから練習すらしていなかった。

 制空権取れた方が有利じゃん!

 帰ったら練習しなくちゃ!

 


 お兄さまが先行して、ウルヴァの前まで飛んでいった。

 私達はウルヴァの進行方向を避けて左右に散開した。


「あの、皇女殿下。あまり近くに行かれては危険です」


 あ、護衛も付いてきてるんだった……。


「えっと、あれだよ! ウルヴァの姿を見ながら位置を適宜変えた方が安全だよ?」

「一理ありますが……。もしや、攻撃しようと思っていませんか?」


 ギクッ。


「後ろ足を凍らせるだけだよ? ちょびっとだけ! ちょびっとだけだから!」

「いけません。さぁ、こちらです」


 2人の護衛が私の腕を片方ずつ持ってずるずると引きずる。


「はぁ、アリアちゃん、走るのが早くなったわねぇ……ふぅ」


 お姉さまがやっと追いついたみたいで息を切らしている。まだ本気で走ってないんだけどなぁ。

 

 戦況はと言うと、お兄さまが上手く引き付けてるから他の魔術師達が足を凍らせ始めてる。

 ウルヴァも暴れ出したけど、地面から生える巨大なツタで動きを封じられてる。

 ここからは、交代で魔力を回復させながらの持久戦だ。

 お兄さまも凍らせる組に加勢し始めた。

 

 やることがなくて、私は少し離れて体育座りでじーっと魔物を見ていた。

 今日は月明かりがあってよく見える。

 大きな目と大きな口。

 体内だったら物理攻撃も効きそうなんだけど。

 ってあれ?


 ……なにか違和感がある。

 どうして、吠えないんだろう?

 牙で氷を砕いたりもしてない。

 普通、敵が目の前にいたら噛みつくと思うんだけど……。

 たしか、魔物図鑑には噛み付く攻撃が危険って書いてあったような。


 もしかして口の中に何かある……?

 もしあるとしたら何がある?

 いや、何かいる……?


「アリアちゃん?」


 自然と立ち上がっていた。

 "魔王に供物を集める魔物"だとしたら、口の中には魔王がいるんじゃ?


「みんな気付いてない……!」


 急いで脚の契約魔具から杖を出して身体強化魔法をかけて走り出す。

 お姉さまと護衛の人達には悪いけど、全力で振り切らせてもらおう。

 私しか魔力が万全で戦える人はいない。私が確かめないと!

 

「アリアちゃん! ま、待って!」

「殿下! お待ちください……! ッ追いつかない。レミー! お前はカイネル殿下に報告しろ。私は引き続き追う!」

「かしこまりました!」


 木々の間を駆け抜けて、ウルヴァの前足をジャンプしながら登る。

 体が小さいからか、暗闇に紛れているからか、足を凍らせている人からは気付かれなかった。


「らいげき……!! ッナイス!」


 雷で目を潰して口を開かそうと思ったが、遠くから銃声が聞こえて、ウルヴァの目が潰れていた。

 レイの魔弾による遠距離狙撃だ。


「レイ、ありがとう!」


 グアアアァ!!

 ウルヴァの顔が歪み、大きな咆哮が聞こえた。


 このチャンスは逃さない。

 迷わず口の中に飛び込むと、人影が舌の上で寝ていた。


「やっぱりいた。あなた、魔王ね?」


 魔王が立ち上がった所にレイの2射目が魔王に命中したが、傷がついていない。


「はぁ……いやだいやだ」


 うそ!?

 まったく効いていないどころか、レイの方を見もしない。


「眠れないし、まだ力も戻らない。それで、何の用?」

「……このデカブツを引っ込めるか海の中に沈めてほしいんだけど」

「はぁ? コレは俺の移動手段だけど。じゃあ代わりに魂集めて来てよ。なんなら君が死ぬ?」


 コンコンと魔王はウルヴァを足で蹴る。

 ウルヴァの口が閉じて、真っ暗になってしまった。

 

 杖に光を集めて周りを見ると、目の前の魔王がいなくなっていた。

 とっさに風の刃を全方向に放つも、手ごたえがない。


「私はまだ死ねない。この世界で一番強くなるまでは、死ぬ気はないから!」

「ふーん。じゃあいずれ俺と戦うんだ」

「私の前に立ちはだかるなら、誰であっても容赦しない」


 沈黙が流れる。

 ウルヴァの口の中だからか、暑くて汗が止まらない。

 なぜか外から肉の焼けた臭いがする。


「もうそろそろ時間か。まぁ、奴に勝てるなら考えないでもないね」

「誰のこと?」

「大きくなったら、俺のところに来なよ。可愛がってあげる」


 背後に気配を感じて振り向こうとすると、首筋に鋭い痛みを感じた。


「痛ッ」

「バイバイ。その呪いは18歳になると死ぬように出来てるから、また会いにきなよ」


 そう言い残して魔王は消えてしまった。


「だ、だめだ……」


 立っていられない。

 体に力が入らない……。

 


 焼け焦げた臭いが辺りに漂う中、ハンスはウルヴァの口を無理やりこじ開けて覗き込む。


「間に合いましたか? 殿下、もしかして殉職されました?」

 

 さらりと黒髪が流れて目にかかるが、この男はそんなことは気にしない。


「怪我ですか? 痛そうですね。死んでいないならいいんですよ。間違って焼き殺したとなると処理が面倒ですから」

「ハンス……」

「ああ、失礼しました。魔王にも逃げられるとは、殿下は相変わらず弱いですねぇ」


 首筋から血が大量に流れて意識がボヤけてきた。


 数年ぶりに会ったこの男は、相変わらず人を馬鹿にして、そして何よりも強かった。


 ハンスは愛用のステッキをウルヴァの上顎に差し込んで、動けなくなった私を抱き上げると躊躇なく口の中から飛び降りた。


「ハンス・レガリウス。俺のアリアから手を離せ。もしもアリアに何かあれば許さないからな」


 お兄さまが、見たこともない恐い顔で捲し立てる。


「おや? 姫殿下より機転が効かない皇太子殿下が何を仰っているのですか? 貴方が気付いていれば、このような事にはならなかったのですが……」


 あからさまに見下した顔で、ハンスはお兄さまを一瞥して通り過ぎる。


「おにぃ……さま……」

 

 お兄さま、私は大丈夫です。と言いたいのに舌がもつれて言葉が出ない。

 ハンスがそんな私を見て、にっこりと微笑み魔法をかけて眠らせた。

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