表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/57

雪夜の決別-俺は光と生きる

遂にクリストファーは決断します。

深夜前。

雪景色のオスロの夜に、ヘリの音が響いた。


病院近くまで飛行したヘリは、そのまま救急車へと患者を引き継ぐ。


救急隊員たちは必死に声を張り上げていた。

「社長! しっかりしてください!」


クリストファーは、その様子を見つめることしか出来なかった。


世の夫ならば、妻の手を握り、励ますのだろうが…



自分は、エヴェリーナを危険に晒した。

それだけではない。

子供まで——。


クリストファーは、組んだ手を額へ押し当てたまま、ただ俯いていた。


その時だった。


「あんた! 社長の旦那なのか!?」


救急隊員の厳しい声が飛ぶ。


「なんで手も握ってやらないんだ! なんで社長がこんな危険な状態なのに、俯くだけなんだ! 自分のことしか考えてないのか!?」


その言葉が、深く突き刺さった。


自分が苦しまないようにと、妊娠を隠していた。

仮に伝えられたとしても、自分が受け入れられたとは到底思えない。


だが、その間も彼女は会社を切り盛りし、奉仕活動を続け、自分の世話まで焼いていた。


お陰で、自分は苦しみよりも穏やかな時間を過ごすことが多くなっていた。


その代わりに——彼女が苦しんでいたことにも気づかずに。


救急車が病院へ到着すると、エヴェリーナはすぐ処置室へ運ばれていった。


その頃になって、執事たちも慌ただしく駆け込んでくる。


「お前たちも……知らなかったのか……」


クリストファーは呻くように尋ねた。


執事たちは悔しそうに頭を下げる。

「私どもも、まったく存じ上げませんでした……。冬場は毎年体調を崩されますので……今年もいつものことかと…」


「それに最近は、クリストファー様とお過ごしになる以外は、書斎で仕事をされながらお食事を取られていましたので……体調の変化にも気づけず……申し訳ありません。」


クリストファーは、しばらく黙り込んでいた。

やがて、低く口を開く。


「……頼みがある」


「なんなりと。」


「DMCに伝えろ。俺は、すべての役職と権限を放棄する」


執事たちは息を呑んだ。


「……何ですと?」


「DMCホールディングスに、俺は不要だ。それに——」


クリストファーはゆっくり顔を上げる。


「いつまでも、DMCの名の影で生きていたくはない」


「それで……どうなさるおつもりですか。」


短い沈黙。


そして、クリストファーは静かに答えた。


「俺は……エヴェリーナと生きる」


執事たちは、驚きに目を見開いた。


その時、処置室の扉が開き、医師が姿を現した。


「先生! 社長のご容態は!」


執事たちが一斉に駆け寄る。


医師は険しい表情のまま答えた。

「お子さんは何とか無事です。しかし、社長はまだ危険な状態です。救急隊から聞きました。妊娠を誰も把握していなかったそうですね」


「申し訳ありません……」


「酷い過労状態です。その上、妊娠中にも関わらず無理を重ねていた。危うく肺炎になるところでした」


医師は厳しい口調のまま続ける。


「このままでは、また母子ともに危険な状態になりかねません。仕事を休まれることを医師として強くお勧めします。」


誰かを責めるわけでもなく、ただ医師として当然の言葉を告げると、そのまま静かに去っていった。


クリストファーは目を閉じた。

そして、執事へ視線を向ける。


「エヴェリーナの秘書に連絡を取れ。仕事のスケジュールをすべて確認する」


「かしこまりました」


「朝になったら、俺がオフィスへ向かう」


その声には、迷いがなかった。



その夜。


DMC新執行部は騒然としていた。


「副社長が権限と役職を放棄するですと!?」


「後継者不在のまま再建を進めるなど、正気ではありません!」


怒号が飛び交う執務室で、マーカス・ブラッドフォードは静かにメッセージを読み返していた。


やがて、穏やかに口を開く。


「DMCの影で生きていたくないのだろう。すべてを放棄すれば、ただのブラッドフォードだからな」


取締役の一人が慌てて詰め寄る。

「まさか、お認めになるおつもりで!?」


「条件付きで認めた」


「条件……?」


マーカスは静かに微笑んだ。


「ブラッドフォードの名で生きるなら、その名で成果を上げてこい、と伝えた」


「成果……?」


「魔王としてではない」


窓の外では、雪が降り始めていた。


「光を運ぶ者としてだ」


「光を運ぶ者?」


「クリストファー——その名の意味だ」


ロンドンの夜空に雪が舞い落ちる。

ビッグベンはの光は、雪に滲んでいった。

この後、クリストファーはエヴェリーナ不在のPreceptで本領を発揮します


引き続きお楽しみください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ