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それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: chamoまる


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4/7

進路変更 ― 待ち受ける大帝国 ―

海は、静かに見えている時ほど油断ができない。


見えるものよりも、

見えないもののほうが、ずっと厄介だ。


進路は、自分で決めているつもりでも——

それが本当に選んだ道かどうかは、分からない。

得体の知れない恐怖が、ブリッジに残っていた。


 


その静けさを切るように、通信が入る。


 


「本社、運航管理部より」


 


栗栖が読み上げた。


 


「現在、喜望峰付近に中心気圧960ヘクトパスカルの低気圧が発達中。最低気圧は950、あるいはそれ以下になる見込み」


 


一瞬で、空気が張り詰める。


 


「……やばいですね」


 


三井が小さく呟く。


 


谷屋が即座に言った。


 


「巻き込まれたら終わるぞ。このサイズで950まで落ちたら、船体が持っていかれる」


 


誰も否定しない。


 


 


リヒトはモニターを見たまま、短く言った。


 


「本社」


 


「はい」


 


数秒後、回線が開く。


 


「クリスタニア、ヴァルナーだ。喜望峰ルートは取らない。ポートサイドに入る。入港手配を依頼する」


 


わずかな間。


 


「ポートサイドなら情報収集は可能だが、どう判断する」


 


短い沈黙。


 


本社の声が返る。


 


「クリスタニアはポートサイドにて待機。運航指示があるまで動くな。情報は逐一共有せよ」


 


それだけだった。


 


「了解」


 


通信が切れる。


 


 


三井が小さく言う。


 


「……つまり、そこで集めろってことっすね」


 


「そうだ」


 


リヒトは視線を外さない。


 


「周辺の船は?」


 


「はい」


 


栗栖がすぐに操作に入る。


 


数秒後。


 


「……ポートサイドに、クルーズ船一隻」


 


「どこだ」


 


「DMC所属、……Alluring」


 


一瞬、空気が止まる。


 


三井が目を見開く。


 


「え、あの……ヴィクトリア船長の?」


 


栗栖が続ける。


 


「現在、停泊中」


 


 


リヒトは何も言わなかった。


 


ただ、わずかに視線が落ちる。


 


 



 


その頃。


 


白い巨船は、静かに佇んでいた。


 


「待っているわ、ヴァルナー。……お祝いをしましょう?」


 


その声は、誰にも届かない。


 


ただ、確かにそこにあった。

嵐は、遠くからでも形が分かる。


だが、人が起こす波は見えない。


それでも確実に、近づいている。

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