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治療法はこんな感じで

何時もお読み頂きありがとうございます。

 前話の皇太后様の部分を上皇様に修正いたしました。

 宜しくお願い致します。

第五十七話



   治療方はこんな感じで



 ナハリ領主館の会議室に漁村の代表者達が集まっている。

 会議の冒頭ナハリ代官であるストーキンが王都からエルルが転移で連れてきたアルクに

 「アルク忙しい所悪いね、」

「なにストーキン、エルルが連れて来てくれるから問題はない、

 で今日は新しい調味料の事業の企画

だったな、」

「ああ、魚から作った魚醤と言う調味料なんだアルクの知っている醤油の様な物だねエルル君、」

「はい、醤油は豆から出来ていて魚醤は魚から作ったもので別物なのですが、用途は似ていてどちらも優秀な調味料です、」

「醤油はファーセルで生産が始まったと聞いたがこの国に出回る様になるのはもう少し先になるのだったなエルル、」

「はい、ファーセルでは国を挙げて醤油や味噌の生産に入っているのですが

 エルフの方達の中で爆発的な人気になり生産が全く間に合っていないそうです、」

 ストーキンがエルルの話を引き継ぐ様に、

 「アルクそこで魚醤なんだよ、

 話は以前エルル君と漁村の者達が食事をした時にエルル君が使った醤油が始まりなんだ、

 後日村長からエルル君が食事の時に使った調味料を教えて欲しいと頼まれたのだけれど未だ醤油は貴重でなかなか手に入らないと聞いていたからその事を村長に伝えたらとても残念がっていてね、

 でその話をエルル君がこちらに来た時に話をしたら魚醤の事を聞かせてくれたんだよ、」

 漁村の村長が、 

 「領主様、エルル様は私達の村まで足を運んで下さり魚醤の作り方を指導して下さったのです、

 魚醤は作るのに本当だったら三か月以上時間がかかるそうなのですが、

 今回はエルル様が特別に魔法をかけて下さりまして通常より早く作る事が出来ました、

 勿論どの村もギルドから魚醤の商売用の特許の使用許可を頂いています、

 今日はその魚醤を領主様に見て頂き海苔や乾燥昆布と共に新しい村の産物にしようと思いまして各漁村の代表が来ております、」

 と村長がアルクに報告をしているとルチアがメイド達を連れ部屋に入って来てメイド達はアルクの前に魚醤を使った料理を並べて行った。

 ルチアが最後に小瓶に入った魚醤を置く。

 「アルク様領主館の料理人が作った魚醤を使った料理ですわ、」

アルクはルチアの置いた小瓶を手に取り、

 「見た目は醤油に似ているな、では食べてみるとするか、」

と料理を少しずつ食べて行き、

 「うむ、エルル醤油とは別物だな、

 香りに少しクセがあるのと醤油より塩辛さを感じるが旨味を感じるぞ、」

「流石は主人様、魚醤は醤油の様に直接付けたりかけたりするのでは無く、

 煮たり焼いたりして火を通す事でクセのある香りが少なくなり食材の旨味をます事が出来る調味料です、」

エルル達の話を聞いていた漁村の村長達が顔をを寄せ合いボソボソ話しをしていると、

 「村長達どうしたんだい?」

 とストーキンが声を掛ける。

 「いえ、浜の者達はみな魚に魚醤をかけ美味い美味いと食べていまして、

 特に若い衆はエルル様に教えて頂いた海鮮丼なる食べ方が大人気でして、」

エルルは村長達の話を聞いて、

 そう言えば漁村の夫人方が漁師さん達の味付けはとても塩辛いと聞いていたなと思い出し、

 「村長さん漁村の皆さんに魚醤のかけ過ぎはダメですよと伝えて下さい塩分の取り過ぎは身体に悪いです!」

「はい、分かりましたエルル様のお言葉必ず皆に守らせます!」

皆の話を聞きながら魚醤がかかった太刀魚の焼き魚を食べていたアルクが、

 「これは美味い!この柑橘の実に似た果物を絞った物を垂らすと絶品だな、」

「だろ!だろ!アルク!その太刀魚の食べ方をエルル君に教えて貰ったうちの料理人も絶賛しているんだ!その柑橘の実は隣りの領地の特産のボカスだよ、」

 「エルルこれは充分商売になるのではないか?」

「はい!魚醤は昆布ととても相性が良く煮物や汁物に使えば格段に美味しくなりますよ、」

「じゃあアルク各漁村で作った魚醤は一度公爵家が買取り、それを商業ギルドを通じて市場に流すって事で良いかい?

 と言っても魚醤が漁村から入って来るのはもう少し先になるけどね、」

「ああ!ルチア後はまかせるよ、

 悪いがこの後エルルは王都で用事があってな詳しくは話せないが直ぐに王都へ戻らないといけないんだ、

 漁村の皆も新しい特産品作りを頑張ってくれ!」

「分かりましたわアルク様、」

「何だいアルク!ルチアじゃ無くて僕に言ってくれよ!」

と憤慨するストーキンに部屋にいた皆がぷっ!とふきだした。



 

 公爵家のマリーの部屋に手隙のメイド達が集まり優雅に紅茶を飲むマリーに侍女長マチルダが、

 「で奥様エルルの家はどうでしたか?」

と興味津々に問いかけるとマリーは自慢気に、

 「そうねぇ、何時もエルルが言っている様にお屋敷と呼べる大きさでは無かったわ、

 作りは新しく出来た別館の様な感じだったわね、

 でも家以外にも変わった建物もあったわね、

 何より中庭に池の様に見える露天風呂があって温泉なのよ!アルクが入って最高だったと言っていたわよ、」

ソフィアがマリーのカップに紅茶を注ぎ足しながら、

 「奥様は温泉に入られなかったのですか?」

「ええ、私はリリル様や義母様、それにユユちゃんとプールで泳いでいたのよ、」

「プール?泳ぐ?奥様は泳げるのですか?って何処で?」

 「ごめんなさいちゃんと説明するわね、

 先ずプールと言うのはエルルの家の庭にある泳ぐ事の出来る施設よ、

 建物の中に別館の大浴場を大きく深くした泳げる所があると言ったら分り易いかしら、

 でリリル様とは皆も夜会の時に見かけた黒髪の女性でエルルの伯母に当る方ね、

 あとユユちゃんと言うのはエルルの家で暮らしている白竜様よ未だ赤ちゃんでとても可愛いいのよ、」

「奥様!白竜様って女神様のお遣いと言われているあの白竜様ですか?」

「ええ私も白竜様を抱かせて頂けて女神様の祝福が貰えるわと喜んだらエルルにユユちゃんは未だ赤ちゃんだからちょっとだけ良い事があるかも位といわれたわ、そんな事より貴女達!」

とマリーはいきなり話を聞いているメイド達を見渡し、

 「貴女達身体のラインには自信がある?って貴女達は鍛錬している子も多いからお腹周りや足回りにお肉は付いてないのかしら?

 私は彼方でリリル様や義母様を見て驚いたのよ!

 リリル様はとにかく義母様の美しい身体のラインに!

 私は未だ泳げないからプールの中で浮き輪と言う浮く物に捕まって浮いていたのだけど、私のお腹にも浮き輪みたいなお肉が付いているのよ!

 姿見に映る水着姿を見て倒れそうになったわ!そこでこれよ!」

とマリーは自身の机の引き出しからエルルの所から借りて来た水泳ダイエットの本を取り出しテーブルの上に並べる、

 メイド達は机の上に出された本に集まり、

 「奥様先日別館のお仕事を覚える時にエルルから配られた絵物語とはまた違った本のようですね、

 挿絵がとても精密で美しい異国の女性が載っていますがこの子の衣装は下着というか恥ずかしくないのかしら?」

 「奥様!此処に泳ぐ事で美しい身体を手に入れると書かれていますが泳ぐ事で本当にこの女性の様な身体のラインになるのですか?」

 「皆いっぺんに聞かれても困ってしまうわ、

 義母様も最初は私のお腹の様に弛んだお肉が何段も付いていたそうなのよ、

 だけど水泳を始めてからみるみるお腹がへっこんで足が細くなったそうよ、

あとこの姿絵の女の子が着ているのはワンピースタイプの水着なんですって、この本が水着の見本絵よ、」

 とマリーは水着カタログを見せる。

 メイド達はカタログを見ながら、

 「奥様これは下着なのでは?

 奥様もこの様な水着を着けて泳がれたのですか?」

「侍女長だから私は水着を着た自身の身体に驚愕したのよ、

 気付かないうちにこんなに弛んだ身体になっていた自分に!」

「奥様!奥様!別館の大浴場なら無理すれば泳げるのでは?」

「ナルゼ位なら泳げるかも知れないけどそれは大丈夫よ、

 エルルにプールを作ってくれる様お願いしてあるの別館の隣りに建つ予定よ、」

「それは本当ですか奥様!もしそのプールと言う施設が出来たら私達も利用してもよろしいのでしょうか?」

「貴女達には掃除などの管理を頼むから私達の使わない時にお休みの子達が清掃と共に使うのは構わないわよ、」

マリーの許可にメイド達から歓声が上がり、

 「奥様この姿絵が着ている水着は下着の様にエルルが売ってくれるのですか?」

「ええ、でも水着の上に羽織る可愛らしい衣装とかもあるからまとめて買えば結構なお値段になるのではないかしら、

 それとプールが出来るのはもうちょっと先になりそうよ、」

 マリーの話を聞いたメイド達は心の中でそれまでに絶対お金を貯めようと決意するのであった。




 公爵屋敷の正門前に転移して来たパオラとロッティは正門横にある詰所の前に立つ騎士に向かい、

 「騎士様私の名前はパオラ、

 本日はこちらにいらっしゃるロッティ様と共に公爵閣下の弟君様にご指導して頂く為訪問させて頂きました、」

騎士は騎士の礼を取り同僚を使いに出すと、

 「伺っておりますシスター様、

 ご案内致しますのでこちらへ、」

とパオラ達を屋敷まで案内する。

 玄関先にはペレスが立っていて歩いて来たパオラ達に、

 「お待ちしておりましたシスター様、」

と頭を下げればパオラが、

 「お世話になります、

 こちらは先代聖女のロッティ様です、」

ペレスは驚くと同時に両膝を付いて手を組み深々と頭を下げ、

 「ようこそ公爵家へ聖女様、」

「執事殿、今の私は一シスターですわそんなにかしこまらないで下さいね、」

とロッティは小さな手をペレスの組む手に触れ祈りの言葉をかけた後ペレスを立たせる。

 ペレスはもう一度深く頭を下げ、

 「では此方へ、」

とパオラ達を連れ屋敷の中へ入っていった。

 

 屋敷のホールに案内されたパオラはホールに入るのが二度目と言う事もあり驚く事もなく待っていたメイドに案内された席に着いたが、

 ロッティは部屋に入った途端見た事の無い様式の部屋や壁一面のガラスに驚き立ったまま外の庭を眺めている、そんなロッティにパオラが、

 「ロッティ様座って待たせて頂きましょう、」

とパオラは洒落な子供用に座る様に勧め、

 メイドに手伝われ椅子に座ったロッティがありがとうと礼を伝える、

 メイドは一礼して下がりパオラにロッティが小声で、

 「パオラこのお部屋を見てなんとも思わないの?」

 「私はこのお部屋に入るのが二度目ですから、」

などと小声で話している所にペレスが、 

 「聖女様、主人とエルルは今外に出ておりまして、

 お約束のお時間迄には戻ると思いますのでお茶でもお飲みになりお待ち下さいませ、」

「お気になさらず執事殿、我々が少々早く来てしまいました、」

ペレスが頭を下げメイドがお茶の用意をしながらパオラ達に小冊子を渡たす。

 小冊子を開いた二人は中に描かれていたケーキの見本絵に釘付けになる、

 お茶を用意していたメイドが、

 「ご希望のケーキが決まりましたらお伝え下さい、直ぐにご用意いたします、」

と言ってホールの端の厨房のカウンターの所まで下がって行く、

 「ロッティ様見て下さいこの見本絵

 これが噂の公爵家のケーキですよ!」

と普段は冷静なパオラのはしゃぐ姿にロッティはくすっと笑い少し自慢気に、

 「パオラ実は私は大使館で公爵家のケーキを頂いたのよ!

 私は姪が一押しだと言うこのレアチーズケーキを頂こうかしら、」

「私は此処におすすめと書いてあるガトーショコラと言うケーキを頂きます、」

そして二人は出されたケーキを食べながら至福の時を過ごしていると部屋にアルクとエルルが入って来て、

 「お待たせ致しましたなシスター様、」

と言って頭を下げるアルクとエルルにパオラが席から立ち上がり、

 「いえ公爵様、我々がお約束よりも早く伺ってしまいました。

 公爵様此方はロッティ様先代の聖女様です、」

 アルクとエルルは驚き、

 「大使殿から国で一番優秀な治療師の方がいらっしゃると伺っていましたが我が家に聖女様をお招きする事が出来るとは、」

と言いながらアルクはエルルと共にロッティの前に両膝を付き手を組み頭を軽く下げた。

 そんな2人にロッティは椅子からするりと滑り降り、

 「公爵閣下今の私はただのシスターですわ、

 それに本日は私達が教えを乞う身、

 そちらの美しい方が閣下の弟君様ですね、

 ザビエス枢機卿が姫様と誤解なさるのが分かりますわ、

お名前をお聞きしても?」

エルルは頭をもう一度さげ顔を上げると目をキラキラさせながら、

 「ご挨拶が遅れました、私はエルル・ルコルと申します聖女様、」

ロッティは笑顔で、

 「今日は宜しくお願いしますね、可愛らしい弟君様、」

「聖女様私の事はエルルとお呼び下さい今日は大使様からガラス職人病の治療法の説明をと伺っています、」

「ええ、ゴースロでは国民病とまで言われ鍛治師病と言っていますわ、

 国では昔から鍛治師病には治癒魔法が効かないと言われていて私の治癒魔法も殆ど効果が無かったわ、

 だから皇太子の目が治ったと聞いた時は信じられなかったのよ、」

 

 話し込みそうなエルルとロッティにアルクが、

 「それでは専門的なお話になる様なので私は失礼させて頂きます聖女様、

 お気が済むまで弟をこき使ってやって下さい、

 ペレス私は下がるので何かあれば私の執務室に来る様に、」

とロッティとパオラに頭を下げ部屋から出て行こうとすれば、シスターは二人揃って手を組みアルクに、

 「閣下に感謝を、」

と告げた。


 

 オーライドの王城の迎賓の間にゴースロの近衛に守られたゴースロ王に妃の他三人の側室が入室すると長テーブルの向かいで待っていたジュリアスとローザンヌが立ち上がり、

 「ようこそおいで下さったゴースロ殿、妃殿、」

 「お招き感謝しますぞオーライド殿、」

「ささ、立ち話もなんですので座ってくつろいで下さい、」

とジュリアスが進めれば妃がゴースロ王の手を取り侍従が引いて待っている椅子に座らせる、

 ゴースロ王はかなり度のきつい眼鏡を掛けていて部屋に入って来た時も近衛の者が手を引いていた。

 「ゴースロ殿目の病がかなりお辛そうですな、そうと知っていれば先に甥子に見せましたに、」

「なにオーライド殿今その甥子殿に国の者が治療法の教えを乞うているそうです、

 儂の目など民草の目を治してからで良いのだ、

 オーライド殿儂の事はドルトカトフと呼んで下され、」

 「分かりましたドルトカトフ殿では私の事はオラリウスで、」

「承った!オラリウス殿、」

 

 それぞれが挨拶を済ますと侍従や女官がグラスを用意しローザンヌが王妃に、

 「私達はお酒でない物に致しませんか?

 あと私の事はローザンヌとお呼び下さい、側妃のみなさんもそう呼んて下さいな、」

「ではローザンヌ様私の事はクリスティンで、

 あとお酒て無ければお任せしますわ、

 貴女達も良いでしょう、」

と側妃達に聞けば側妃達もはいと答えた。


 ジュリアスとドルトカトフの前にはロックグラスが置かれ中には丸い大きな氷が入っている。

 ジュリアスは少しだけ自慢気に、

 「以前子息殿と酒を一緒しましてその時子息殿はこの酒を大変気に入られましてな、」

と言いながら侍従に目配せをすれば、

 侍従は優雅な仕草で美しい緑のボトルの栓を抜く、

 すると部屋の中に香水花の香りが広がり女性陣もその香りに顔を綻ばせる。

 「ほう!これは良い香りじゃ、

 これが息子が自慢しておった酒か!なるほど我慢出来ん香りじゃ!」

そして2人が注がれた酒に手を付けようとすればグラスはさっと引かれ、 

 ジュリアスのグラスは侍従長が、ドルトカトフのグラスは近衛の手の中で、

 「なっ!何をするのじゃ!」

と怒鳴るドルトカトフに近衛が冷静に、

 「陛下、他国での飲食にお毒みは当然です!」

と近衛はグラスを回し香りを確かめながらくいっと一飲み、

 そして目を見開きもう一飲み、

 それを見たドルトカトフが、

 「一飲みすれば十分じゃろう!ああ!半分以上飲みおって!」

と近衛からグラスを奪い取り、ぐびぐびと口の中に流し込めば、

 「すっ!素晴らしいの!火酒の様じゃが香りと甘味が有り堪らんの!」

ジュリアスも侍従長に、

 「じい!其方普段は毒味などせんであろ!」

とこれまた半分以上飲まれたグラスを奪い取り一飲みすれば顔を綻ばせ、

 「これだ!この酒だ!気に入って頂けましたかなドルトカトフ殿、」

既にグラスを空にしたドルトカトフが、

 「オラリウス殿!是非この酒を譲って頂けぬか?」

そんなドルトカトフにジュリアスが残念そうに、

 「ドルトカトフ殿残念ながら私もこの一本しか持ってないのですよ、

 大変貴重な酒らしくせっかくなのでドルトカトフ殿と楽しもうと思いまして、」

「なんと!それ程貴重な酒をなんと嬉しいことか!良ければもう一杯、」

とグラスを給仕している侍従の前に出す。

 侍従がグラスに酒を注げば近衛が当然の様にグラスに手を伸ばす、

 ドルトカトフは近衛の手を払い退け、

 「毒味などいらぬ!これ以上この至高の酒を飲まれてたまるか!」

とグラスを煽りまた幸せそうな顔をした。


 

 「あら貴女毒味など少し舐めれば良いでしょう!

 あっ!アイスをそんなに!女官長貴女は毒味役ではないでしょう、」

と怒るローザンヌの向かいではこれまたゴースロの王妃付きの女官が自身の前にクリームソーダを四つ並べ順に食べて行く、 

 「貴女早くそのグラスをよこしなさい!

 毒味など要らないわ!」

と幸せそうにクリームソーダを毒味する女官にクリスティンが告げれば、

 「王妃殿下これは私の大切なお仕事でございます、

 あっ!こちらのグラスのこの白い物はまだ食べていませんね、」

と用意された柄の長いスプーンてクリームをすくい口の中に入れ頬を抑える、

  

 クリスティンは女官からグラスを奪い取るとローザンヌに、

 「ローザンヌ様こちらの飲み物はどの様に頂くのでしょう?

 この様な飲み物は初めてで、」

「クリスティン様、皆様こちらはクリームソーダと言う飲み物で先ずはグラスに刺してある棒に口を付け軽く吸って見て下さい、

 ただこの色の付いた飲み物は口の中で弾けますので慣れる迄はゆっくり吸って下さいね、

 後はこちらの柄の長いスプーンでグラスの上に乗っている氷菓子の様な物をすくって食べて見て下さい、

 冷たくてとても美味しいですのよ、」

 と言われクリスティンは恐る恐るストローを軽く吸う、

 「こっ、これは弾ける舌に尻桃の味がしますわ!エールの舌触りに似ていますが断然こちらの方が美味しいですわ!

 って貴女達なに先に氷菓子から食べているのよ!」

側妃達がクリスティンの方を見る事もなくアイスクリームを口にしながら、

 「クリス様!この乳の氷菓子堪りませんわ!なんたる美味!

 そして氷菓子を食べながらこの水を吸うとこれまた堪りませんわ!」

と語る側妃達にローザンヌが、

 「あらあら、側妃の皆さんそれはこれから私がお伝えしようとした食べ方でしてよ、

 さあクリスティン様も試して下さいませ、」



「ドルトカトフ殿、この酒に合うつまみは如何ですかな、」

と侍従に目配せすれば侍従はブロック形のチョコレートが数個乗った小皿を二人の前にだす。

 先程の酒の時と違って毒味をしない侍従長にジュリアスが悪い顔をして、

 「侍従長つまみは毒味せんのか?」

「陛下、お毒みは済ませております、

 先程の酒はその場でお開けした物でしたので、」

「じい!上手いことを言いよる、

 おっ!失礼したドルトカトフ殿

 このつまみを食べながら酒を飲むと酒を更に美味く感じますよ、

 私は火酒に絶対合うと思いますよ、」

と言えばチョコレートの乗った小皿を近衛が素早く引き口の中に入れ暫くするともう一度皿に手を伸ばす、

 「もう毒味などよい!儂の皿に手を出すでない!

 ほう、これは丸薬の様に見えるなどれ一つ、」

とチョコレートをつまみ口に入れ暫くすれば半分以上髭て覆われた顔を綻ばせ酒をきゅっとあおる。

 「これは良いのお!オラリウス殿の言う通りじゃ!この菓子は我が国の火酒に絶対合うぞ!」

ドルトカトフの菓子と言う言葉にクリームソーダで盛り上がっていた女性陣の目がつまみを食べながら酒を飲む二人の方へ向く、

 ローザンヌがいきなりジュリアスの前の皿を自身の前に引き、

 「これチョコレートじゃない!」

と言うローザンヌにジュリアスが、

 「我が妃よ!お客人の前で失礼だぞ、」

「あなた!チョコレートがある事を黙っていたわね、

 このチョコレートは私が美味しく頂きますわ、」

「あっ!まて!それは予の、」

そんなやりとりを見ていたドルトカトフは自身の前に置いてある小皿をさりげなく腕で隠すと隣りの幼女にしか見えないクリスティンが、

 「あなた私にも食べさせて頂けないかしら?」

「まて妃よ、そう!これはそれ丸薬じゃ、

 其方の嫌いな薬の味がするぞい!」

「まぁ!本当ですのローザンヌ様?」

「多少の苦味がありますがそれがまた癖になる味ですのよ、」

 とローザンヌは自身の前に置いた小皿のチョコレートを口に入れとても幸せそうな顔をした。

 





 「ロッティ様、先生の仰っている事が理解出来ていますか?」

とパオラは手元に渡されたとても厚い資料の束を見ながら小声でロッティに問いかける、

 二人の前ではエルルがホワイトボードにあれこれ書きながら説明をしている、

 「私達に医学の専門的な事を言われてもと言うか異国の言葉を聞いているようよ、」

と二人でかおを寄せ合っているとエルルが笑顔で振り返り、

 「と、目の中はこの様な仕組みで見た物を写しているのです、」

と言えばシスター二人は、はぁーそうなんですかと返事をする。

 こりぁ駄目だなと悟ったエルルはナルゼ達に講義した時の様に簡単にと、

 「ではこのガラス玉を使って説明しますね、

 先ずこのガラス玉を目の玉だと思って下さい、

 この様にガラス玉を覗けばお二人が良く見えます、

 お二人も除いて見て下さい、」

と言われた二人もガラス玉越しにエルルを見て、

 「はい、しっかりと先生が見えます、」

「はい、これが正常に見えている状態です、

 では鍛治師の皆さんがお仕事の時に強い光を見続けていると目はこの様な状態になります、」

とエルルはガラス玉の一部を曇らせもう一度二人に渡す、

 「先生ぼやけて上手く見えません、」

「はい、鍛治師病を患っている方達の目はこの様な状態になっていると思って下さい、」

「なるほど、では弟君このガラス玉の様に目の奥で曇っている所を直す様なイメージで治癒魔法を掛ければ良いのかしら、」

と渡されたガラス玉に治癒魔法をかければガラス玉は光に包まれエルルが曇らせた所を見る見るうちに元に戻して行く。

 エルルは目の中を星の様に輝かせ、

 「聖女様の御技をこの目で見る事が出来るなんて感激です!

 聖女様宜しかったらこちらの色紙にサインして下さい!」

と色紙と特製マジックを出すエルルにロッティが目を丸くしていると、

 隣でパオラがくすくす笑い、

 「先生また公爵様にお目玉を頂きますよ、」

と言えばエルルは鼻の上に人差し指を当て、しぃーとしながらパオラの前にもちゃっかり色紙を取り出した。





「オラリウス殿世話になりましたな、」

「なにドルトカトフ殿大したもてなしも出来ず本来であれば一緒に食事でもと思っていましたが、

 なんでも甥子がパスカトフ殿に作って頂いた鍋を使って料理を披露したいといいましてな、

 ドルトカトフ殿達が羨ましいですな、

 なあ妃よ、」

「本当ですわ!あなた私達にもちゃんと陛下達と同じ物を作ってくれる様お願いして下さいませ、」

ドルトカトフは近衛に手を引かれながら席から立ち上がり驚いた顔をして、

 「オラリウス殿せがれが鍋を打ったと?」

「ええ、甥子の話ではなんでも特殊な鍋だとか、

 残念ながら我が国の鍛治師では作ることの出来ない鍋だそうですよ、

 城の料理人達も甥子からその鍋を使った新しい料理を教えて貰えるとよろこんでいましたよ、」

「ほほう、あの武器馬鹿のせがれに鍋を打たせる程の御人か、医術だけでなく料理迄とは、

 オラリウス殿の甥子殿は芸達者ですな今宵会うのが楽しみじゃ、」





「閣下お邪魔いたしましたわ、」

「とんでもございません聖女様、

 貴女様を我が家にお招き出来た事を誇らせて頂きます、」

「閣下今の私は聖女ではありませんわ、

 あと皆さんはよく誤解なさっているのですが聖女とはジオラフトでシスターを統括する役職の名前でしかありませんわ、」

「ロッティ様!」

と慌てるパオラに、

 「ごめんなさいパオラ、公爵閣下今の話はご内密に、」

とロッティは幼女らしい悪戯っぽいウインクをすればアルクは頭を下げ、

 「ペレス、聖女様方にお土産を、」

と言えばペレスは大きな箱を抱えた料理人を連れて来る、

 「聖女様公爵家の料理人が作ったケーキです、

 皆さんで召し上がって下さい、」

と言えば料理長カーンが二人に箱の中身を見せ、

 「こちらはホールケーキとなっていますので切り分けて皆さんで召し上がって頂けます、

 今はエルル様に氷結魔法をかけて頂いていますので氷室に保管して頂ければかなり日持ちするとおもいます、」

「閣下ありがとうございます、お噂のケーキをしかもこの様に大きなまま頂けるなんて、」

と手を組みシスターの礼をするロッティの隣でパオラも手を組みアルクに深々と頭を下げている、

 「ではエルルお二人の荷物をお運びしなさい、

あとあちらで粗相のないようにな、」

 エルルは一礼してお土産のケーキを収納すると、

 「承りました主人様、

 では聖女様宜しくお願いいたします、」

と言えばロッティはもう一度アルクに頭を下げエルルとパオラを連れてその場からすっと消えた。




 おまけ


 城からゴースロ大使館に戻る馬車の隊列の中、近衛の騎馬に守られた一際豪華な馬車の中ドルトカトフがクリスティンに、

 「のう妃よ、せがれが鍋を打ったなどにわかに信じられぬのう、

 またそれを他国の王に話すとは、」

「あなた良い事ですわ、

 国の収入の半分は日用品です、

 父上も常日頃から、高価な武器や防具より優れた日用品の方がこの国では重宝されよく売れると、」

「スカチフがその様な事をとな、」

「はい、それに楽しみではありませんかあの子が打った鍋の料理、

 それとオラリウス陛下があの様に自慢なさる甥子殿に私も興味が湧きましたわ、」

「せがれも童の事を気に入っておったな、

 情報局に調べさせてはおるが、

ギルガス前公爵の養子でエルル・ルコルと言うらしいの、」

「確か前公爵の夫人はオラリウス陛下の姉君でしたわね、」

 「確かに甥子に当たるがルコルと言えばブリネンにその姓を名乗る一族がおったな、」

「お亡くなりになったと噂のある皇太后様はブリネンのご出身何か関係があるのかも知れませんね、」

「どの様な童なのか今から今晩がたのしみじゃな、」

 



 

 

 




 

 

 


 

 

 


 

ありがとうございました。

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