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ようこそ我が家へ主人様

宜しくお願いします。


第五十六話

 

  ようこそ我が家へ主人様



 「ようこそおいでくださいましたロッティ様、」

 と大聖堂の客間でザビエスは向かいのソファーにちょこんと座る幼女にしか見えないロッティに挨拶をすれば、

「様付けは要らないわザビエス枢機卿、」

 と返すロッティにザビエスは静かに顔を横に振り、

「ロッティ様は先代の聖女様、様付けでお呼びするのは当然で御座います、」

ドワーフ族であり幼女の様な姿のロッティは小さな手でザビエスを制し、

 「先先代聖女のセレス様も私も今は女神の瞳の一シスターですよ、」

とザビエスに告げればロッティの背後に立っていたパオラが、

 「セレス様もロッティ様も女神の瞳の御相談役ではありませんか、

私たちとはお立場が違います、」

 「パオラまた貴女達は私達をお婆ちゃん扱いして!」

何時ものやり取りなのかパオラは、はいはいと答えた後に、

 「ロッティ様がオーライドにいらしたと言う事はゴースロ王の来日が近いのですね、」

「ええ、妃ヨウのや側室の方々と共に間もなくオーライドに入られると思うわ、」

 「お噂では目の治療の為にオーライドにお越しになるとお聞きしましたが、」

「ええ、鍛治師病と言われている目のご病気を例の姫に治療して貰う事ともう一つは私にその治療方を学んで欲しいと陛下にお願いされているのよ、

 ザビエス枢機卿 貴方はその姫にお会いした事があるのでしょう、」

「はい、シスターパオラと共に公爵家でお会いいたしました、

 この国では珍しい黒髪の美しい姫様でしたな、」

「大神官、姫様では無く公爵閣下の弟君ですよ、」

「シスターパオラそれは姫様の趣向なのですよ、

 あの様に美しい姫様が男に見えますか?きっとそう言うお年頃なのですよ、」

 「パオラその方は公爵家の姫様では無いの?」

「公爵家の執事の格好をしていらっしゃいまして閣下から弟君と確かに、」

二人のやり取りに小首を傾げていたロッティだったが思い出した様に小袋を取り出し、

 「ザビエス枢機卿忘れないうちに、

 これ頼まれていました火酒ですわ、」

と小袋に小さな手を突っ込むと大きな樽を引っ張っり出し、軽々と持ち上げ客間の空いているスペースにどんっ!と置けばザビエスが、

 「ありがとうございますロッティ様、

 信徒の皆様にお渡ししているお礼の菓子が大変好評でしてその菓子を作るのにこの火酒が必要なのです、」

「カヌレね、ジオラフトでも話題になっているわよ、

 ファーセルを除いた各国からシスター達が此処に研修に来ているそうね、

 うちの国の教会からも料理自慢のシスターが何人か来てるのでしょうパオラ、」

「はい、皆さん頑張っていらっしゃいますよ、

 既に本山から派遣されたシスター達は作り方をマスターして本山でもカヌレが作られています、」

「知っているわ、昨日も聖女様と共にお茶した時に頂きました、

 でもパオラ貴女が公爵家で食べたカヌレはもっと美味しかったそうじゃない!」

「はい、公爵家で頂いたカヌレは私達が作るカヌレとは別物と迄は言いませんが至高の美味しさでした、」

「教会で作ったカヌレも美味しいのにそれ以上とは私も一度食べてみたいわね、」

「ロッティ様カヌレだけでなく公爵家で出される菓子は王都の有名菓子店などとは比べ物にならない位の美味しさだとオーライドの貴族方の間で噂されています、

 あと確認が取れている訳ではありませんが、ゴースロの皇太子妃も公爵家の菓子に夢中だとか、」

「まぁ!丁度よいわ大使館に挨拶に行く次いでに殿下にも詳しくお話しを聞きましょう、」

 とロッティはぴょんとソファーから飛び降りるとザビエスが、

 「ロッティ様まだこちらにいらっしゃったばかりではありませんか、

 お部屋をご用意致しますので少しお休みになられては、」

「ありがとうザビエス枢機卿、

 大使館に顔を出したらまた戻って来ますわ、

 暫く厄介になりますのでお部屋をお願いします。」

 「承りましたロッティ様、」

とザビエスが返すとロッティは微笑みその場からすっと消えた。

 ザビエスがパオラに、

 「シスターパオラ貴女もロッティ様と共に姫様から治癒魔法の指導を受けて貰います、

 既に公爵閣下とゴースロの大使殿に話が付けてあります、」

 「分かりました大神官、

 あのお方からは沢山の事を学びたいと思っていました、

 そして学んだ事は全て本山にお伝えいたします。」

「頼みましたよシスターパオラ。」




 

 

 「そんな!父上達だけずるいですわ!」

「姉上の言う通りです!僕も叔父上の所に伺ってみたいです!」

 「私もです!」

と朝食を食べ終えた後のサロンで子供達に詰め寄られたアルクが、

 「マリーと私はエルルの家に遊びに行く訳では無いのだそ、

 それにお前達はこれから学園があるではないか!」

「父上はまたそうやって!」

とアルクをジト目で見るアイリスにマリーが、

 「アイリス、アルクの言う通りよ私達はエルルの叔母上様を紹介して貰うのと、

 義父様からエルルの祖父様達の墓参りをして来る様にと言われているのよ、」

「では僕達も!」

と言うアイリスに部屋の隅に控えていたペレスが、

 「若様、私は大奥様より主人様の不在の間、若様達の事を頼まれておりますので主人様不在の間の出来事は全て大奥様にご報告いたします、

 さあ若様玄関でロバートが待っておりますので、」

と言えば大奥様と聞いたナルゼがいち早く、

 「父上母上私は学園に行って参りまする!」

とペレスから目配せをされ扉を開き待っていたスゥーの手を引きサロンから出て行く、

 「あっ!ナルゼ貴女だけ!父上母上私も行って参ります、」

「姉上っ!」

と慌ててナルゼを追いかけて出て行くナターシャをアイリスもアルク達にぺこりと頭を下げ追いかけた。


 アルクはペレスに、

 「ペレス助かった夕方迄には帰ると思うが頼むよ、」

「かしこまりました、今侍女長がお供えの花と果物を用意しておりますので、」

「ああ、すまんエルルが迎えに来る迄もう少し時間があるな、

 マリー私はエルルが迎えに来るまで執務室で少しでも仕事を進めておくとするよ、」

「分かりましたわ、では私は例の女子会の招待状を書きながら待っていますわ、」

 と少し疲れた顔をするマリーにアルクか顔を引きつらせ、

 「まったく妃様も余計な事を自慢して下さる、」

「まったくですわ、王城のお茶会でうちの別邸の自慢をなさるなんて、

 おかげでお泊り女子会を開く事になってしまいましたわ、」

「今回はそのお泊り会にナターシャやナルゼも参加する事になったのだったな、」

「ええ、お茶会に参加したスパロン家のディアナ様がナターシャに話すと、 そこからルーナ殿下やナルゼと共にお茶会に参加した高位貴族の御令嬢に話が広がり家に帰った令嬢達が自身の母親に自分達も女子会に参加したいと懇願したのよ、」

 「そうだったなあの件ではアイリスがかなり拗ねていたな、」

「ええ、でもナルゼが兄上も叔父上な様になれば参加出来ますぞ!なんて言うから使用人の子達と皆で大笑いしたわね、」

「ああ、あの時のアイリスとエルルの顔は最高だったな、

 まあそのお泊り会の前にエルルはゴースロ王との謁見の他にアズビー家の結婚式があったな 、」

「そうね、相変わらずの忙しさね、

 今回私達には直接関係がある訳ではありませんがアズビー家の結婚式の立ち合い人は義父様ですわ、」

「ああ、父上と騎士爵は兄弟弟子であったそうだからな。」





 「お久しぶりですなロッティ様、」

「貴方もお元気そうねスカチフ殿、

 忙しそうな時に突然転移して来て申し訳なかったわ、」

と部屋の外を慌ただしく動き回る職員にスカチフは苦笑いをしながら声を潜め、

 「内密な話ですが、明日陛下達はこのヨツバルンにお付きになられると情報局の者から連絡があり、

 こちらの王家との根回しや受け入れにばたついていまして、」

「殿下達はお元気ですの?」

「パスカトフ殿下は離れの工房で作業をしてみえます、

 マルティン妃殿下は先程連絡致しましたので直ぐにお見えになるかと、」

 「まあ!殿下は他国でもお仕事を?」

「ええ、例の公爵家の姫君から鍋を作るのが得意な職人を紹介して欲しいと頼まれまして、

 その事を殿下にお話ししたら自分が恩人である姫君の為に自身で鍋を作ると言われまして、」

「あの殿下が鍋を?」

と目を丸くするロッティにスカチフは苦笑しながら、

 「ええ、なんでもギルドで新しく特許登録された鍋で姫君から渡された見事な図面をみて殿下の目の色が変わりましたな、

 で殿下自ら試作した鍋をお渡しした所姫君は大変気に入られ殿下に追加で発注したいと言われまして、」

「今はその追加分を作っていらっしゃるのね、

 それにしても特許のある鍋とは?」

「私も最初お話しを伺った時はどの様にしたら鍋などで特許が取れる物かと思いましたが、

 殿下が試作された鍋を見せて頂いた時は驚きましたぞ、

 確かにあの鍋はこの国の鍛治師では手に余る代物でしたな、

 だから姫君は優秀な鍛治師を紹介して欲しかったのでしょう、

 あとこの事も未だ内密にして頂きたいのですが、

 あの鍋は必ず売れます、我が国の産業に新しい富みを与えてくれる商品になると私と殿下は確信しています、

 高価な武具よりも万人が使う商品の方が国にもたらす利益が大きいのは確かです、」

「スカチフ殿にそこまで言わせる鍋とは私も興味が出て来ましたよ、」

応接室で話す二人の所にマルティン付きの侍女が部屋をノックして、

 「妃様がお見えになります、」

と告げスカチフの了解に部屋の中に待機していた職員が扉を開ける、

 廊下からマルティンがお茶のセットをトレーに乗せた侍女達を連れて入って来て、

 「お久しぶりですわ、ロッティ伯母様、」

「ええ、久しぶりねマルティンあら貴女少しふっくらしたかしら、」

「酷いですわ伯母様!でも正直少し太りましたわ、

 こちらの料理がとても美味しいの、」

「教会でも最近オーライドの料理が話題になっているわ、

 貴女はカヌレを食べた事がある?」

「ええ、先日エルルがお土産に持って来てくれたケーキの中に入っていましたわ、

 とても美味しいケーキでしたが私一押しのレアチーズケーキには及びませんわ、」

 「マルティンエルルとは?」

「私達が懇意にしている公爵閣下の弟君よ、

 主人の恩人でもあるの、」

「それはルコルの姫の事ではないの?」

マルティンはぷっ!と吹き出し、

 「ロッティ伯母様確かにエルルは美しい姫君に見えますが可愛らしい男の子ですわ、

 最近テュレイカ様やエルルの弟子のイオ達からは男の娘なんて言われて拗ねていましたが、」

 やはりパオラが言う様に男の子であったようだ、

 テュレイカ様とはファーセルの皇太子妃で確か希少な魔眼持ちであったな、

 それにしてもザビエス枢機卿が姫と間違える程美しい顔立ちなのだろうか、

 と考え込んでいると自信の前の銀の平皿に白と黒の模様の入り混じった四角形の物が小さな銀のホークと共に置かれていて、

 「マルティンこれは?」

「エルルが持って来てくれたケーキですわ、氷結魔法で凍らせてあって氷室に入れて置けば日持ちがしますの、

 ロッティ伯母様も一度食べたら虜になってしまいますわ、」

なるほどこれが公爵家のケーキか、

 パオラが言っていたが、マルティンは本当にこのケーキに夢中の様だ、

 王族をそこ迄唸らせるケーキとは、

 とロッティはマルティンの用意したマーブルケーキにホークを入れ口の中に入れた直後ロッティの時間が止まってしまった。



 

 公爵屋敷の使用人控室にエルルが転移して来ると花籠と果物籠を用意した侍女長とソフィアが待っていて、

 「エルル主人様達が待っていらっしゃるわよ、」

「侍女長お待たせしちゃってすみません、出掛けにイオから母様もいらっしゃると連絡が入ったので食事の用意とかばたばたしてしまって、」

果物籠を持ったソフィアが、

 「私もエルル君の家に行ってみたいわ、」

「ソフィア先輩僕の家は普通の家で貴族様のお屋敷とはちがいますよ、

 とても田舎の森の中ですし、」

侍女長が花籠を持ち控室から出ながら、

 「奥様達が帰っていらっしゃったらエルルの家の感想を楽しみに聞かせて貰うわ、」

「もう!侍女長まで勘弁してください、」

と言いながらエルルはソフィアと共に侍女長に付いていった。


 

 アルクの執務室にエルルを連れた侍女長が入って来て、

 「主人様エルルが着きましたので御供物をお持ち致しました。」

と伝えるマチルダの背後から前に出たエルルは頭を下げ、

「主人様少し遅れてしまいました、」

 と謝罪するエルルにアルクが、

 「なに、こちらも仕事をしていたので構わんさ、ではペレスあとを頼む、」

 と言いながらソフィアから果物籠を受け取りマリーもマチルダから花籠を受け取ると、

 「エルル準備万端よ、」

と二人がエルルの前まで来るとエルルはペレス達にぺこりと頭を下げてその場からすっと消えた。



 アルク達が大きな木の根本にあるお墓の前に転移してくると、

 「主人様こちらが祖父と祖母のお墓です、」

アルクとマリーは周りを見渡しマリーが、

 「深い森の中にいるって感じるわ、

 空気が濃いって感じかしら、」

「エルルお墓もちゃんと綺麗にしているのだな、」

と話ながら二人はお墓に御供物をすると墓前で膝をつき両手を組んで祈りの聖句を読み上げる、

 「主人様祖父と祖母のためにありがとうございます、

 僕が居ない時はカレンさんが何時も綺麗にしてくれています、

 さあこちらへ、」

とエルルは屋敷の玄関の方に二人を案内する途中、家の建物から離れた所にあるプールを見たマリーが、

 「エルルあの大きな変わった建物はなに?」

と聞けば、

 「あの建物はプールと言う施設で中で泳ぐ事が出来ます、」

「えっ!泳ぐの?」

「姐様もナタリアお母さんも身体作りの為に皆泳いでいますよ、」

「エルル母上は泳げるのかい?」

「はい、最近はかなり長い距離が泳げる様になったわって自慢されましたよ、

 さあこっちが玄関になります小さな家ですが、」

 とエルルは玄関の引戸を開く、

 玄関の中ではカレンが客人様スリッパを用意していて、

 「主人様奥様こちらのスリッパに履き替えお上がり下さい、」

と言いながら一礼する、

 エルルも用意してあった自信のスリッパに履き替え、


 「主人様こちらへ、」

「エルルここはうちの別館の様な作りだな、

 いや、別館がここの作りを真似たのだな、」

と家の中を見渡しながらマリーと共にエルルの後を付いて行くそしてエルルが居間に入りソファーでユユを抱くリリルに、

 「姐様主人様と奥様をお連れしましたよ、」

 「ご苦労様だったねエルル、

 公爵閣下こんな辺境の森の中へようこそ、

 私はリリル・ルコル、エルルの伯母で訳あって此処で暮らしているんだよ、

 先日の夜会の夜は挨拶も出来ずすまなかったね、未だこちらに来たばかりでこの国の陛下にお会いしたりと挨拶の機会を逃してしまってね、

 ってどうしたんだい二人共?」

居間に入って来たアルクとマリーは部屋の中や何よりリリルが抱いている竜に驚いていて、

 それを見たリリルが、

 「ああ、此処に来た客は皆驚くよ、

 この子の名前はユユうちの家族だよ、」

と言えばユユはアルク達の方を向き、

 「ピィ〜!」

と鳴き、我に返ったアルクが

 「アルク・フランツ・フォン・ギルガスですリリル殿、」

と挨拶をしてマリーも姿勢を正し、

 「妻のマリーで御座いますリリル様、」

 と挨拶を返す、

「何時もエルルがお世話になっているね、

 そんな立ってないで座ってゆっくりして下さいな、今カレンがお茶とお菓子を用意するからそれからエルルも座りな、」

「主人様奥様座って寛いで下さい、

 姐様僕はお昼の準備が有りますので

厨房にいきますよ、」

「そうかい、丁度カレンも来たようだしお茶だけでも飲んでいきな、」

と言われたエルルがリリルの隣に座ると、ユユがエルルの肩に乗り頭を頬にすりすり甘えて来る、

 「エルルそのドラゴンは白竜様なのかい?」

 と聞くアルクに、

 「はい、シルバードラゴンの幼生体で人で言ったら赤ちゃんで女の子です、」

アルクの隣のマリーが、

 「エルル私でも抱く事が出来るのかしら?」

「ええ、女性の方なら大丈夫ですよ、

 抱いてみますか?」

マリーが目を輝かせ手を広げればユユはエルルの肩から浮き上がりゆっくりマリーの腕の中に飛んで来てマリーの膝の上に座る、

 「凄いわ!私白竜様に触れてる!

 小さな時お祖母様から白竜様に触れた者は女神様の祝福が貰えるって教えて頂いたの。」

リリルはユユを抱きしめるマリーに、

 「へえ〜そんな話があるのかい、

 じゃあ私達は毎日女神様から祝福を貰えて幸せだねえ、」

エルルはそんな二人に笑いながら

 「姐様それはきっと悠久の時を生きられた白竜様ですよ、

 ユユは未だ赤ちゃんだからちょっとだけ良い事があるかも?位ですかね、」

「違いないね、」

と笑い合うエルルとリリルにマリーの腕の中でユユが尻尾をふりふり、

 「ピィ!ピィ!ピィ〜!」

と文句を言うように鳴けばアルクが、

 「流石白竜様人の言葉が分かるのだな、未だ話す事は出来ない様だが、」

「ユユはおませさんだからねえ、

 話し出したら大変だよ、」

リリルの突っ込みに皆で笑っていると、

 「あら、皆でもりあがってるわね、」

と言いながら居間にイオを連れたナタリアがジャージ姿で入って来る、

 「母上お久しぶりですね、そのお姿は?」

「これはジャージよ運動する時に良く着ているわ、

 あと部屋着にしてもとても楽よ、

 あと二人に言っておくわ、

 リリル様はブリネンではとても特別なお方よ、二人ともリリル様とお呼びなさい、リリル様を敬称無しで呼ぶ事が出来るのはブリネンでは上皇様ぐらいよ、

 ちなみにエルルの姉位に見えていると思うけど私より年上よ、」

 「ナタリア歳の話しは余計だよ!

で今日も泳ぐのかい?」

「勿論よ見てよこのウエスト、

 足だって白夫人足なんて言わせないわ!でイオはどうするの?」

「ナタリア様私はエルルさんとカレンさんの手伝いをします、」

 と言ったイオにエルルが、

 「じゃイオさんお昼の用意をするからお願い、

 姐様、用があったら読んで下さい、」

とエルルはイオを連れて厨房に入って行った。

 マリーがナタリアに、

 「義母様泳ぐと痩せる事が出来るのですか?」

「マリー貴女美味しい料理やお菓子ばかり食べて運動しないとお腹周りが凄い事になっているんじゃない?」

と言いながら居間の角のマガジンラックから数冊の本を引き抜きマリーの前に置く、

 ナタリアに最近気にしていた事を指摘されたマリーは水泳で美しい身体をと言う本を見てその本を夢中で読み出す、」

そんなマリーにリリルが、

 「何だい公爵夫人、水泳に興味があるのならナタリアと一緒に泳いでみるかい?

 お昼まで未だ時間があるから私も付き合おうかね、

それとも公爵と一緒に中庭の露天風呂に入って来るかい?」

 マリーは本から顔を上げ、

 「リリル様私の事はマリーとお呼び下さい、

 あのお二人はどんな衣装で泳がれるのですか?」

「んっ、衣装かい?その本の中に水着見本絵があったろ、

 そう、それ水着カタログと書いてある本、

 それに載ってる好みの水着を選びな、」

マリーが水着カタログを見て驚いているがマリーより隣のアルクが目を皿の様にして水着カタログを覗き見していた。

 「ぎっ、義母様もこの様な格好で泳いでいらっしゃるの?」

「そうよ、みな可愛い水着ばかりでしょ、

 そこに載ってる白い紐ビキニはシャルルが着てるわね、

 でシャルルと言うのはエルルの弟子でブリネンのルコル家の三の姫よ、」

 「こっ、この水着下着より過激ですわ!」

マリーの言葉にリリルは笑いながら、

 「その水着を見たシャルルの母親の大公爵が貴女お嫁に行けなくなるわよ、なんて言っていたねえ、」

「じゃあマリー此処はアルクがいるからプールに行くわよ、

 あっちの更衣室に水着が沢山掛けてあるからその中から選びなさい、

 アルク貴方は温泉でも楽しんで来たら?」

とアルクは自身の名を呼ばれて我に返りカタログから目を外し、

 「分かりました私はこちらでゆっくりさせて貰います、」

「じゃあ三人でプールに行こうかね、

 いやもう一人ユユがいたね、」

とリリルはマリーの膝の上にいたユユを抱き上げた。


 

 厨房で鴨と鶏の間の子の様な湖水鳥と言うお肉をパスカトフ殿下に作って貰った圧力鍋から取り出しているエルルにイオが、

 「エルルさんこれが例の新しい鍋ですか?」

「ええ、この鍋を使うとお肉が柔らかくなるんですよ、

 下味もつけ終わっているからあとは

 スパイスの効いた衣を付けて揚げるだけでフライドチキンと言う料理です、

 チキンと言うのは外国の言葉で鶏肉です、」

「エルルさん唐揚げとは違うのですか?」

「似ていますが、唐揚げの様に揚げる前に調味料に漬け込みませんね、

 あと今日のお肉は骨付きです、」

 と言いながらエルルは特製の衣を付けたお肉を揚げて行く、

 イオが油取り紙の上に並べられて行くフライドチキンに手を伸ばそうとすればエルルが、

 「イオさんつまみ食いはダメですよ!

 僕は主人様の着替えを持って行きますので交代して下さい、

 あと揚げたチキンはアイテムボックスに入れて置いて下さいね、

 絶対揚げたての方が美味しいから、」

イオは食べたいのを我慢しながらエルルが使っていたトングを受け取り、

 「分かりましたエルルさん、早くお昼にしましょうね!」

 と言ったイオを厨房の奥で野菜スープを煮ていたカレンがクスクスと笑っていた。


 

 エルルがアルクの着替えを持って居間に来るとアルクは熱心に本を読んでいて、

 「主人様お風呂に行かれたのでは?」

とエルルに声をかけられアルクは慌てて本を閉じる、

 「エッ、エルルか!なっ、なに私もこの水泳に興味があってな、」

と慌てて水泳ダイエットの本を見せる、

 「水泳は身体の脂肪の燃焼と循環機能の向上や筋肉向上効果がありますからね、」

「そっ、そうなのかエルルこの、

 いや、何でもない、」

エルルはアルクに笑顔で、

 「何ですか?主人様遠慮なさらず何でも言って下さいね、

 でお風呂は如何されますか?」

「勿論頂かせて貰おう、」

アルクはこの様な可愛らしい笑顔を向けて来るエルルに、

 この水着カタログと言うお宝本を譲ってくれと言える勇者にはなれなかった。



 

「マリープールはどう?」

とナタリアは浮き輪に掴まり水の中に浮かぶマリーに声をかける、

 「義母様とても気持ちが良いですわ、水泳がこんなに楽しいなんてしりませんでしたわ、

 でも義母様やリリル様を見て私のだらしない身体を見ると泣きたくなりますわ、」

 と最初に水着を試着し姿見に映る自身に驚愕し、

今は水の中に見える自身のお腹の浮き輪に溜息をはく、

 「マリーわたしのお腹の浮き輪は三重だったわよ、

リリル様やカレンの様に最初から腹筋が割れているのもどうかと思うけど、」

 「私も義母様の様なスタイルに必ずなってみせますわ、」

と水の中で話す二人にプールサイドチェアにユユと共に座っていたリリルが、

 「さあ二人ともそろそろ上がりな、

 エルル達が美味しいお昼を作って待っているはずだよ。」




 マリー達がプールから戻ると待っていたカレンが囲炉裏部屋まで案内をする、

 部屋には仕立ての良いシャツにこれまた仕立ての良いズボンを履いたアルクが既に座っていて入って来たマリーに、

 「マリー水泳はどうだった?」

「とても楽しかったわ、私もリリル様や義母様の様な身体になりたいわ、

でもこの怠さがなんだか心地よく感じてしまうの、

 貴方のそのシャツ姿も素敵ね、」

マリーの後から入って来たナタリアが、

 「マリー水泳のあとのお昼寝は最高よ、 

 でも今日はこれから食事だから食べてすぐ寝ちゃダメよ、」

などと話しているとイオとエルルが大皿に乗せたフライドチキンを持って来て、

 「主人様お待たせしました、今日のお昼はフライドチキンと言う鶏肉料理です、唐揚げとはひと味違う美味しさなので召し上がってみて下さい、

 一緒に美味しい野菜スープもあります、」

カレンがアルク達の前にスープと手拭きをおきながら最後に空の皿を置くと部屋にリリルが入って来て、

 「こりゃ美味しそうなお肉だね、

 エルルユユは眠っちゃったから巣の中に寝かせて来たよ、」

「分かりました姐様、この料理は手掴みで食べて下さいね、

 そちらの空き皿が骨入れです、」

「分かったよ、じゃあ食べる前に公爵お願いがあるのだけれど、」

「リリル様私に出来る事ならなんなりと、」

「いや、うちは皆一緒に食事をするんだよ、

 だからエルルやイオにカレンも何時もの様に一緒に食事をしても良いかい?」

「勿論良いですよリリル様此処はエルルの家です、私達も家族の一員だと思って頂けると嬉しいです、」

「ありがとう公爵、エルル皆の飲み物を出しな、」

「分かりました姐様、

 主人様このお肉にとても合うお酒があるんです、

 ルコルの家の伯父上やイオのお父様にも気に入って頂いています、」

と素早くアルクの前でハイボールを作る、 

 「あっ!エルル私にもハイボールをおくれよ、」

「エルル私はラムネをお願い!

 マリーもどう?」

「義母様が進めて下さるなら、」

飲み物が行き渡るとエルルが立ち上がり、

 「主人様奥様、今日は祖父母の墓参りまでして頂いてありがとう御座います、

 この様な森の中の家ですのでたいしたお持てなしも出来ませんが、

 心ばかりの料理を用意しましたので召し上がって下さい、

あと、鶏肉料理は手掴みで豪快に食べちゃって下さいね、」

「じゃあ公爵頂こうじゃないかい、

 私もこの料理は初めてだから早く食べてみたい、」

「はいリリル様、では私達を招いてくれたルコルの家に乾杯!」

と言ってハイボールをきゅっと飲めば、、

 「こっ、これは美味いな、

 エルルこの酒と作り方をカーンに教えてやってくれ、」

「分かりました主人様、」

と話す二人以外は夢中でフライドチキンを食べ、

 「エルル何だいこの肉は骨まで食べられそうな位柔らかいじゃないかい、

 そのお肉にこの絶妙な味付けの衣がたまらないよ!

 でこのハイボールがこれまた最高だよ!」

「姐様最近ハイボールにハマってますね、」

「イオもカレンも酎ハイにハマってるじゃないかい!」

とリリルが窓側のテーブルに座るイオ達を見れば皿に積まれていたチキンが凄い勢いで無くなって行き、

 隣の皿にチキンの骨が積み上がっていた。

 

 アルクと共にチキンを食べていたマリーが、

 「エルル酷いわこんなに美味しい料理を出されたら我慢が出来ないわ!

 せっかくダイエットを始め様と思ったのに、」

ナタリアが脂まみれの手をお手拭きで拭きながら、

 「マリー食べた分以上に運動をすれば良いのよ、

 貴方エルルにたのんで屋敷の庭にプールを作って貰ったら?」

マリーはパッと顔を上げエルルを見つめ目を潤ませ、

 「エルル私のお腹に付いてる浮き輪が取りたいの!協力して頂戴、

 お金ならアルクが払うから問題無いわよ!」

と言って隣りのアルクを見れば飲んでいたハイボールを吹き出していて

 「マリーそれは帰ってから会計士のジャンと相談してからだよ、

 それに今エルルは忙しいんだ、」

「エルルどうなの?」

とマリーに聞かれたエルルは顎に指をちょんと当て、

 「うちのプールの半分位の大きさで離れの横に作るとすればこんな物かと、」

とハンドサインでアルクにつたえれば、

 「分かった帰ったらジャンに相談してみるよ、

 一応予定を組んでおいてくれ、」

「かしこまりました、予定の中に入れておきます、」

「宜しくねエルル!」

と答えたのは笑顔なのに目が笑っていないマリーであった。


 

 「エルル世話になったな、また私を此処に連れて来てくれないか、」

「私もまた此方に連れて来て欲しいわ、」

「はい、私の時間と姐様の都合が良い時であればいつでも、」

「ありがとうエルル、

 リリル様もお土産をありがとうございました、」

とリリルに頭を下げれば、

 ユユにパンの耳を揚げた物を食べさせていたリリルが、

 此処は森の奥だから渡せる物はそんな物さ、

 いつでも遊びに来ると良いよ、」

「ありがとうございましたリリル様、

  母上お先に失礼させて頂きます、」

「ええ、私もまた孫達の顔を見に行くわ、」

と挨拶を交わしたアルク達は玄関でカレンとイオに見送られエルルと共に転移で帰っていった。




 おまけ


 執務室でエルルの家の事をペレスに質問され、アルクは森の中の家の事を思い出す、

 リリル様、あのお方はルコルの姓を名乗っていらっしゃるが、私のお祖母様であると私の予感が告げている、

 見た目は変わられていたが雰囲気は未だ自身が若かった頃にお会いした時のままであった、

 それにエルルや母上は何一つ嘘を付いていない、

 ブリネンでは特別なお方で敬称無しで呼ぶ事が出来るのは彼方の上皇様だけなど該当する方はお祖母様だけだ、

 あとあの至高の本の事を思い出したアルクは何と言ってエルルからあの本を手に入れようかと真剣に悩むのであった。



 

 


 

 


 

 


 



 

 

  

ありがとうございました。

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