いらっしゃい母様
宜しくお願い致します。
第五十五話
いらっしゃい母様
ブリネンの王城から急いで帰宅したシャルルが制服から私服に着替え屋敷のサロンにいたサララの所まで来ると、
「母様今良いかしら?」
「お帰りなさいシャル、今日は何時もより早いのね、でそんなに慌てて何かしら?」
「母様今から私と一緒にエルルさんの家に行って欲しいの、」
サララは数秒固まった後、
「えっ!エルルのお屋敷に連れて行ってくれるの?」
「ええ、リリル様が母様に会いたいって、」
「リリル様とは確かエルルの家に住んでらっしゃる方だったわね、」
「ええそうよ、モーリー母様を連れて行っても大丈夫かしら?
今晩は母様も彼方で泊まって来るかも、」
モーリーは胸ポケットから手帳を取り出し、
「お昼前迄にはお戻り下さい、
領の会議を兼ねた御姉妹様達との昼食会がございます、」
サララは立ち上がり、
「そうだったわね、わかったわ
お昼迄には必ず帰るからモーリー後の事は頼んだわよターチル達に宜しくね、」
「承りました、」
とモーリーは静かに一礼する、
「じゃあシャル着替えて来るから待ってて頂戴、」
「ああ、母様そのままで良いわ、
お姉ちゃん達が帰って来ちゃったら大変だから、」
とシャルルはサララの手を取りその場からすっと消えた。
「此処がエルルの家なの?」
と森の家の玄関に転移して来たサララがシャルルに聞けば、
シャルルはスリッパを用意しながら、
「そうよ母様、このお屋敷は外履きでは上がれないから靴をそちらの下駄箱に入れてこのスリッパに履き替えて、」
「へぇ、オーライドでは靴を履き替えるのね、」
「母様多分このお屋敷だけだと思うわ、」
と話している所に玄関の外から、水着姿にパーカーを羽織ったカレンが入って来てシャルル達と目が合うと慌てて、
「ようこそ大公爵様、この様な格好で申し訳ありません、
私はこの家の使用人のカレンと申します、
シャルルさん大公爵様を居間に案内して下さい、
直ぐ着替えて来ますから、」
とカレンはサララに頭を下げ屋敷の中に駆けて行く、
シャルルは駆けて行くカレンに、
「ごめんなさいカレンさん少し早かったよね、」
と声をかけ自身もスリッパに履き替えサララを見れば、
「あの子なんて格好をしているの?
まさかエルルが使用人にあの様な格好をさせているの?」
「母様ちゃんと話すから、こっちに付いて来て頂戴、」
と居間迄サララを引っ張って来れば中庭が丸見えの居間を見てサララはまた固まってしまう、
「母様、私も最初に此処に来た時は母様と同じ顔をしていたわ、
あと、カレンさんは使用人だけれどこの家の中では皆家族として暮らしていらっしゃるわ、」
「ねえシャルお部屋とお庭に壁が無いわよ、不思議なお部屋ね、」
部屋の中に夢中でシャルルの話を聞いているのかいないのか分からないサララに呆れていると着替えたカレンがお茶のセットをキャスターに載せ居間に入って来る、
「改めまして大公爵様、カレンと申します、
今エルル様とイオさんは出ていらっしゃいまして夕食前迄にはお帰りになると聞いています、
リリル様は水泳をしていらっしゃいましてもう直ぐお戻りになると思います、」
と言いながら未だ立っていたサララにソファーに座る様に勧める、
「ごめんなさいカレンさんでしたわね、私はサララ・ルコル、ブリネンで大公爵なんてやっているけれどルコルの家の親戚の者と思って頂戴、
で貴女先程の格好は?」
サララの隣りに座ったシャルルが、
「母様あの衣装は水着と言って水泳の時に着ける衣装よ、
カレンさんもリリル様と一緒に水泳をしていたのよ、」
「水泳ってどこで泳いでいらっしゃるの?」
カレンがサララに紅茶を淹れながら、
「エルル様が庭にプールといいます泳げる施設を作られまして、
この家では健康と美容の為に皆泳いでいます、
先程の衣装は水着です、」
「羽織以外はまるで下着よ、
カレンさんは恥ずかしくないの?」
「大公爵様私の事はカレンとお呼び下さい、
勿論最初は凄く恥ずかしかったのですがもう慣れてしまいました、
それにシャルルさんの水着の方が凄いですよ、」
「見て見て母様私の水着も可愛いでしょ!
」
と魔法の鞄から水着専用のハンガーにかかった純白の紐ビキニを取り出す、
「シャル貴女その格好で人前に出たらお嫁に行けなくなるわよ、」
とサララが突っ込んだ所に、
「何だいシャル早かったねえ、」
とこれまたビキニの上からタオル地のガウンを羽織り、ユユを腕に抱いたリリルが入って来る、
カレンが直ぐに、
「リリル様早く着替えて来て下さい、大公爵様がいらっしゃっています、
さあユユは此方に、」
とカレンが手を差し出せば、
「ピィ〜」
と鳴きリリルの腕の中からカレンの方に飛んで行く、
「ドラゴン!?」
「ああ大公爵、この家の家族のユユだよ、
おっと自己紹介が未だだったね、
私はリリル、少し前までこの国の皇太后をしていた者さ、」
立て続けの事に目を白黒させていたサララが、
「オーライドの皇太后様と言う事はリリス殿下なのですか?」
「ああ、私は少し訳有りでね、皇太后は崩御した事にして此処でエルルの叔母のリリルとして暮らしているのさ、
それにしても大公爵其方はお母上にそっくりだな、」
「殿下、私には何が何やら、」
「済まないねえ大公爵、説明する前に着替えて来るからちょっと待ってておくれ、
カレン私の着替えは?」
カレンは呆れ腕の中のユユをシャルルにお願いしますと頼みサララに一度頭を下げ奥のリリルの部屋に入って行く、
シャルルが抱き取ったユユに頬ずりしていると、
「シャル私は驚く事ばかりで話に付いて行けないわ、
でもその可愛いドラゴンは白竜様かしら?私にも抱かせて頂戴、」
シャルルは抱いていたユユに、
「ユユちゃん母様をお願い、」
と言えばユユは胸を張り、
「ピュイ!」
と鳴くと目を輝かせておいでおいでをするサララの腕の中に飛んで行く、
「かっ、可愛らしいわ、流石女神様のお使い様と言われる白竜様ね、」
と言ってユユを撫でればユユはサララの膝の上で丸まり気持ち良さそうにうとうととしている。
「母様私も上皇陛下と此方に初めて来た時は今の母様の様に驚く事ばかりだったわ、
でこのお屋敷はオーライドで魔の森と呼ばれていて常人では辿り着けない森深い所に建っているお屋敷なの、私やカレンさんでは屋敷から外に出るのは少し厳しい位の所よ、」
「このお屋敷の中に居ると想像もつかないわね、
それにこのソファーは何?一度座れば心地よさに立ち上がれなくなってしまいそうよ、」
「母様甘いわ!それは彼方の椅子に座ってから言って頂戴、」
その頃アズビー家の屋敷ではウェンディの衣装合わせが行われていて、
男子禁制と張り紙が貼られた部屋では屋敷の女性陣が見守る中イオがウェンディに化粧を施している、
エルルは純白の衣装ケースからこれまた純白のウエディングドレスを出すと、
「では僕は外に出ていますね、
試着が終わったら呼んで下さい、」
と言ってエルルは部屋から出て行こうとする、
ジルの妻が、
「エルル様でしたら問題ございませんわ、ねえウェンディさん、」
「ええ、私の中ではエルル君は可愛い妹にしか思えないもの、
直ぐに親戚の子達も来ると思いますし、
あの子達私と同じ衣装が着れると聞いて大はしゃぎしていましたわ、」
そして エルルが周りを見れば屋敷の女性使用人達がにっこり笑顔で入り口を固めているのを見て部屋から出るのを諦めたエルルはハンガーラックを取り出し子供用のウエディングドレスをかけウェンディとの間に衝立を作ると簡易椅子を取り出しウェンディが着替え終わるのを待つ、
やがて使用人達からわっと声が上がり衝立の向こうからイオが、
「エルルさん試着終わりましたよ、」
と呼ばれたエルルは衝立の端から顔を出し、
「わっ!ウェンディさんとっても綺麗です!ショーンさんより早く僕が見ちゃって申し訳ないです、」
「ありがとうエルル君、
自分が夢見ていた以上の花嫁姿よ、
それにお弟子さんの魔法でこんなに美しくなれたわ、ありがとうイオさん、」
イオは化粧道具を片付けながら、
「魔法なんて使っていませんよ、
ウェンディさんの肌がとても良い状態でお化粧のノリがとても良かったからですよ、」
とイオに言われたウェンディが少しだけ誇らしげに、
「今うちの商品開発部門が騎士爵様の考えられた美容液の商品化を目指していまして、
試作品を自身で試しているのです、
この商品もシャンプーやトリートメントの様に大ヒット商品になりますわ、
それにしても賢者と言われる騎士爵様が私のお義父様になるなんて!」
と感慨に浸るウェンディにジルの妻が、
「ウェンディさん、貴女ショーンから何も聞いていませんの?」
「聞いていないとは何でしょう義母様?」
ジルの妻はエルルに目線を送りエルルが微笑み返すのを確認すると、
「ではウェンディさんもアズビー家に縁が出来た者としてお話いたしますわ、
そもそも夫は世間で呼ばれている様な賢者などではありませんわ、
本当の大賢者様をお守りする為の影武者をしているだけですわ、
だいたい夫が賢者だなんて笑ってしまいますわ、」
「そんな!騎士爵様は賢者様では無いと?
ではお守りしている大賢者様とは?」
と言ってウェンディはハッとエルルの方に振り返る、
「ええエルル様よ、前公爵様や夫は二人のお師匠様であった剣聖様からエルル様とその叡智をお守りする様に託されているのです、
そもそも夫はエルル様が赤子の時から自身の末の息子の様に接してきました、
私達は話を聞く事しか出来ませんでしたが、何時も遠くに居る家族の様に感じていましたわ、
ですからアズビー家は夫と共にエルル様をお守りしますわ、ウェンディさんもアズビーの家と縁が出来た者として知っておいて下さいな、」
「はい義母様、微力ながら私も心致します、
でもやっと納得しましたわ、
ショーンにお義父様の事を褒めると何時も凄く微妙な顔をするんですもの、
最初は照れているのかと思っていましたが、」
「ええ、それはアズビー家のあるあるよ、
私も夫人方のお茶会で何回そんな思いをしたことか、」
と笑い合う二人にエルルが、
「ウェンディさん、ジルおじさんには祖父や祖母と共に大変お世話になりました、
僕はアズビー家の方達に家族として接して貰えて幸せなんです、」
「いえいえエルル様、こちらこそお世話になりっぱなしですわ、」
「エルル君では改めましてウェンディよ、ショーンと共に宜しくお願いします、」
「ウェンディさん、ショーンさんは僕の兄ちゃんだから兄ちゃんのお嫁さんのウェンディさんはお姉ちゃんですね、」
「うふふ、宜しくね可愛らしい弟君!
あと薬剤についてもお勉強させてね大賢者様、」
エルルはふくれ、
「ほら皆んなが大賢者なんて言うから!」
と言えば回りの者達からぷっと笑いが上がった。
コンコンとノックの後にクレオの妻がウェンディの母親と女の子を連れた女性達を連れ部屋の中に入って来来て
ウェンディを見た女の子が、
「わぁ〜!お姫様みたい!」
「お姉ちゃんなの?」
とはしゃぎ、ウェンディの母親は、
「ウェンディ見違えたわ!何処の御令嬢よ、
その様な見事な花嫁衣装貴族様の結婚式でも見た事がないわ!」
「母さん素敵でしょ!ショーンの弟のエルル君からのお祝いなのよ、」
「ママ!私お姉ちゃんと同じドレスが着られるの?」
「着たい!着たい!」
とはしゃぐ子供達はウェンディの従姉妹であろう母親達に詰め寄る、
エルルはハンガーラックに掛けてある子供用のドレスをハンガーから外し、
「じゃあこの衣装を着てみてくれるかな、」
子供達は衣装を持つエルルや隣りに立つイオを見て、
「このお姉ちゃん達凄く綺麗!
私一番!」
「ずるい!私は二番!」
と言ってその場で着ている服を脱ぎ出す、」
エルルは衣装をイオに渡し、
「イオさんお願い!」
と衝立の後ろに下がればイオは笑いを堪えながら、
「じゃあ二人共一緒に着替えるからこっちに来てね、」
と下着姿ではしゃぐ子供達を呼び着付けをして行く、
ジルの妻が、
「うちには女の子がいないから羨ましいわ、」
それを聞いたウェンディの母親が、
「うちには男の子が居なくて寂しいわ、
ウェンディにはメディアン家を次ぐ男の子を産んで貰わなきゃ、」
「母さん何言ってんの!気が早いわよ、」
「エルルさん女の子達の準備が出来ましたよ、」
「ありがとうイオさん、」
と言ってエルルは姿見に映る自身にうっとりしている子供達に、
「とっても似合ってるよ、お嬢様達にお仕事のお願いをしても良いかな、
ちゃんとご褒美もあるよ、」
「なになに!お姉ちゃんどんなお仕事?」
とエルルに駆け寄る子供達に手招きをして従姉妹達と話をしているウェンディの所まで行き、
「あのね、お姉ちゃんの結婚式の時に衣装のこのウエディングベールの裾を持って歩いて欲しいんだ、」
と言って可愛らしい花嫁姿の子供達にベールの裾を渡せば周りから黄色い歓声が上がり、
「これを見た貴族様から絶対アズビー商会に問い合わせが来ますわよ、」
「娘達が羨ましいわ、」
などと盛り上がっていると女の子の一人がエルルに、
「ねえお姉ちゃんこのドレスパパに見せてあげたいの、
このままパパ達のいるお部屋に行っても良い?」
と子供らしく可愛らしいお願いをする女の子にエルルが、
「今日はね練習だからお父さんに見せてあげるのはお姉ちゃんの結婚式にしようね、
みて!此処には男の人はいないでしょ、
結婚式の前に男の人にこの衣装を見せちゃ駄目なんだよ、
でも式の時にお姉ちゃんのベールを持って歩くお仕事をしてくれたらお礼にこのドレスをプレゼントするからお家でお父さんにその可愛らしい姿をいっぱい見せてあげてね、」
と笑顔で言いながらエルルは男の人は居ないと言った自身に心の中で泣いた。
「大公爵待たせたね、」
と居間に入って来たリリルがサララに声をかけるがサララの返事は無く、
ソファーでファッション雑誌を読んでいたシャルルが、
「リリル様、母様例の椅子に座ったら眠ってしまって、
一緒に眠ってしまったユユちゃんは巣の中に寝かせました、」
と言いながらマッサージチェアで気持ち良さそうに眠るサララに掛けてあったタオルケットを掛け直す、
「この椅子を初めて使った者なら仕方ないかねぇ、
エルルの話では公爵家の別邸に置いてあったマッサージチェアも公爵が本邸に移して毎日愛用しているそうだよ、」
「私も実家にあったら毎日座っちゃいますよリリル様、
でも今この椅子予約待ちなんですよね、」
「ああ、エルルは今忙しいからね、
この椅子一つ作るのに結構時間がかかるそうなんだよ、
王城やファーセルからも公爵家に遠回しに催促が来てると言っていたね、」
「エルルさん大変ですね、
そう言えばゴースロの大使館から大使様が直接公爵家にいらして、
エルルさんとゴースロの王族方の会談をお願いされたとイオから聞きましたよ、」
「うちのエルルは人気者だからねえ、
おや大公爵がお目覚めの様だよ、」
とリリルが、マッサージチェアに目をやるとサララがチェアから起き上がり、
「あら私知らないうちに眠ってしまったわ、」
「その椅子の坐り心地はどうだい大公爵、」
「リリル様、あまりの心地良さに知らずのうちに眠っていましたわ、」
「まあその椅子に座れば皆そう言うね、」
「とても素敵な椅子ですわ、
是非我が家にも一脚譲って頂きたいです、」
シャルルはサララに、
「母様今リリル様とそのお話をしていたのよ、
残念だけど予約待ちでいっぱいだそうよ、
因みに待っている方々には王族もいらっしゃるわ、」
と言うシャルルの話に残念がるサララに、
「なんだい大公爵、貴女にはシャルがいるじゃないかい?」
「シャルル?リリル様どういう事でしょうか?」
「大公爵はシャルにマッサージをして貰ってないのかい?
シャルのマッサージはエルル直伝でエルルを除けばこの家で一番マッサージが美味いんだよ、
と言うか治癒魔術が使える者のマッサージは特別で風呂上がりのアロママッサージはお肌も艶々になるし、
金を払ってでもお願いしたい位さ、」
「全く知りませんでしたわ!シャル教えなさいよ!」
「リリル様家族には内緒にしていたのに!」
「あははそれは悪かったね、
って事だ大公爵他の家族には黙っておいてくれるかい、」
「リリル様此処では大公爵では無くて、サララとお呼び下さいませ、」
と聞いたリリルが姿勢を正し、
「分かったよ、じゃあサララ今日此処に来て貰ったのは貴女にお願いがあってね、」
「リリル様私に出来る事でしたら、」
「そうかいじゃあ、
私にルコル姓を名乗らせて欲しいのさ、
此処ではブリネンから叔父を頼ってオーライドに来たリリル・ルコルと名乗っているんだよ、
でもブリネンではルコルの家から外に出た者がルコル姓を名乗る事が出来なかったと思いだしてね、
私にオーライドでエルルの叔母としてルコル姓を名乗る許可が欲しくてね、」
サララは一度目を閉じ、
「お話は分かりましたわリリル様、
オーライドのルコル家の当主はエルルです、
エルルがリリル様を叔母として認めたのでしたら、リリル様がルコル姓を名乗るのに問題ありませんわ、
丁度明日姉妹で昼食を兼ねた会議が有りますので、
リリル様の話をルコルの長として通しておきますわ、
勿論リリル様の素性は伏せさせて頂きます、」
「ありがとうサララ、
貴女には私の事をここで話しておくかね、
私が最初訳有りだと言ったろ、
サララから見て私はどう見える?」
「エルルの姉と紹介されても納得してしまう容姿ですわ、
そのお姿はエルルの魔法ですの?」
「いや、髪を染めて目に眼鏡の様な物を入れているだけさ、」
と言ってリリルはサララの前でコンタクトを外す、
コンタクトを外したリリルの眼はブリネンの王女に引き継がれる彩色で、
「ほら、魔法などでは無いよ、
見た目が若いのは私が人種では無いからだよ、 」
サララは驚き、
「えっ!」
「なんだいサララ驚く事はないだろう、
私は御先祖様と同じハイヒューマンと言う種族でエルル曰く人種の突然変異種だそうだよ、」
「リリル様!驚きますよ!初代女王の話は御伽噺だと思っていましたわ、」
「まあ私も最初からハイヒューマンだった訳じゃないけどね、」
シャルルがサララに、
「母様、上皇陛下も最初は母様の様に驚いていらっしゃいましたわ、」
「シャル驚くに決まってるじゃない!」
「サララも直ぐに慣れるさ、
此処に住んで居るのはカレン以外皆化け物ばかりだからね、」
と笑うリリルにお客様用の着替えを持って来たカレンが、
「リリル様ご自分で化け物と仰るのはどうかと、
シャルルさんエルル様達が戻られる前に皆様で湯浴みなど如何です、」
「おっ!カレン良いじゃないか、サララも食事前にうち自慢の露天風呂に入ってシャルルにマッサージをしてもらいな、」
エルルとイオがウェンディ達の試着を終え屋敷のサロンで結婚式の打ち合わせをしていたジルに、
「ジルおじさんウェンディさん達の試着は終わりましたよ、」
「エルルお疲れ様、
丁度良い式当日 立会人のエドモンド様のお迎えの事だが、」
「大丈夫です、朝僕がエド様と一緒にこちらに伺います、」
部屋の奥でクレオと話していたショーンが、
「エルル、ウェンディはどうだった?
なんでも彼方の親戚の娘達も式に参加させるんだって?」
「詳しくは秘密です、当日のお楽しみですよ、
あとイオさんには当日ウェンディさんの付き人をして貰いますので、」
ショーンはイオに頭を下げ、
「イオさん、ウェンディをお願いします、」
イオは両手を振り、
「私に出来るお手伝いをするだけです、」
と答えているとショーンの背後で話し合っている男達の中からクレオが初老の男性を連れて来て、
「エルルこの方はウェンディ嬢の父君で製薬商会メディアンの会頭のヘンリー氏だ、」
エルルはヘンリーにペコリとお辞儀をして、
「エルル・ルコルと言います、クレオさんには弟の様に接して頂いています、」
ヘンリーは不思議そうに、
!
「クレオ君弟とは?彼女は辺境伯家のご養子様なのだろう、
ヘンリーで御座います姫様、」
「ヘンリーさん僕は平民ですよ、エルルと呼んで下さい、
あと僕は男ですからね、」
エルルの背後からはジルが、
「ヘンリー君エルルの事は私の末の息子だと思ってくれ、」
「男子だとは信じられませんよ、
ですが統括がそう言われるのでしたら、
がしかしお二人共美しい姫様にしか見えませんよ、
そちらの方はアルマンの姫様ですかな、」
「こちらは私の弟子のイオです、」
とエルルに紹介されたイオは頭を下げると、
「イオといいます、私の母方がアルマンの家の縁者なんです、」
「そうでしたか、お二人共ウェンディとショーン君をお願いします、
と頭を下げるヘンリーに、
「頭を上げて下さいヘンリーさん、
ショーンさんは僕の兄ちゃんでそのお嫁さんのウェンディさんはお姉ちゃんですよ、」
「ありがとうございます姫様、いえエルル君だったね、
あと統括から式の事で色々骨を折ってくれていると聞いているよ改めてありがとう、
薬の事なら何でも相談してくれ、
と言っても統括の方が薬に詳しいのだがね、 」
ヘンリーの言葉に苦笑いを浮かべているジルにエルルが、
「ジルおじさん僕達はそろそろお暇させてもらいます、
あっ!これ焼き菓子です、お茶の時に皆さんで召し上がって下さい、」
「何時も悪いな、これもまた女達に見せたら大喜びするぞ、
ではエルルの部屋まで送ろう、」
とジルはエルルに渡された大きな紙袋を使用人に預けエルル達を部屋まで送った。
「凄いわシャル!貴女は天才よ!流石私の娘ね、
見て頂戴この肌のきめ細やかさ!」
と脱衣所に作られたマッサージ台の上でバスローブ姿のサララが自身の肌の状態に感動しながら眺めていると、
「母様マッサージが終わったのだから早く着替えちゃってよ!
エルルさん達が帰って来ちゃうわ、」
「シャル貴女こんな素晴らしい特技を持っていたのに黙っているなんて、」
「母様達に話したら毎日マッサージしろって言うじゃない、」
サララはバスローブを脱ぎながら、
「確かにミルル達に話せば毎日おねだりするかもね、
でもこの露天風呂の温泉は最高だわ、
ブリネンだとお風呂と言ったら蒸し風呂と答える人が多いけれど、」
「エルルさんは蒸し風呂の事をサウナとか言ってましたよ、
母様あの角の小部屋がサウナになっているのよ、」
「至れり尽くせりのお屋敷ね、」
「母様それを感じるのはこれからよ!」
エルルとイオが居間に戻りソファーに座るリリルに、
「姐様ただいま戻りました、」
「お帰りエルル イオ、結婚式の準備は順調かい?」
「はい姐様、これ花嫁さんの写真です、
彼方は僕とイオさんに出来る事は済ませて来ました、
後は式当日のお手伝いですね、」
リリルは渡された写真を見て、
「可愛らしい花嫁さんまで居るじゃないかい!」
「でしょう姐様!この可愛らしいお姫様達には当日花嫁のベールを持って一緒に教会に入って貰います、」
「これはまた話題になりそうだね、」
エルルは片目をつむり、
「何時もの様に衣装のデザインなどは縫製ギルドから公開されていますよ、」
「其方の仕事も何時も通り早いね、」
「はい、何時も通りギルドが公開している技術を使って作ったと言う形にしています、」
「カレンから聞いた話だけど、
色々な商会の者が毎日ギルド庁舎に通って新しい特許の公開が無いか調べているそうだよ、」
そこにカレンが居間に入って来て、
「お帰りなさいませエルル様、イオさん、あとリリル様私がどうかしましたか?」
「ただいまカレンさん、姐様からギルドの話を聞いてたんです、」
「ああ、実家に帰った時にアニーから聞いた話ですね、
あとエルル様炭を起こしておきましたよ、」
居間のユユの巣に顔を突っ込んでいたイオが振り返り、
「エルルさん今日は焼肉ですか?」
と聞けばエルルは顔をニヤニヤさせながら、
「今日はモツ焼きをしようと思っています、
女性の肌がぷるんぷるんになる魔法の食べ物ですよ、
冷えたエールや、酎ハイが最高にあいますよ、」
「エルル様!私柑橘の酎ハイが飲みたいです!」
とカレンが言えばリリルが、
「カレンは最近酎ハイにハマってるからねぇ、私はハイボールだったかねあれが良いよ!」
「エルルさんモツって何ですか?」
とイオに聞かれたエルルが答え様としている所に、
「お帰りなさいエルルさん イオ、」
とサララを連れたシャルルが居間に入って来る、
「ただいま!シャルルさん、
サララ母様いらっしゃい、」
シャルルの背後から入って来たサララが、
「エルル素敵なお屋敷に招待してくれてありがとう、
こんな衣装迄用意してくれるなんて、」
「サララ母様とても似合っていますよ、
さあ母様夕食の準備をしますのでちょっとだけ待って下さい、
あっ!少し煙の出る料理なので後でもう一度お風呂に入らないといけないかも、」
「エルル気にしないで、あの様に気持ち良いお風呂だったら何回だって入れるわよ、」
中庭の焼き台の前でエルルは壺を出し中から特製のタレに漬け込んだモツをアミの上に広げる、
途端じゅぅ〜っと音と共に煙が上がるがタレの焦げる匂いにイオはユユを抱えながら、
「エルルさん堪らない匂いです、
ワイバーンのお肉の時の様に少し炙る程度で良いですか?」
「イオさん皮が縮んで脂がフツフツしてきたらひっくり返します、
そして脂をちょっと炙ったらお口へ、」
とエルルは自身の口の中にモツを放り込み、
「はふはふ、ぷりぷりでトロッとして美味しいです、
モツを食べた後にこの冷えたエールをゴクっと飲めば幸せ〜
はい、ユユも食べてみるかい、」
とエルルがユユに小さ目のモツを食べさせる、
ユユもモツを夢中で食べ出し、
それを見た他の者達も、
「私も私も、」
と皆箸を伸ばす、
箸の苦手なサララにはエルルが一番美味しくなったモツを、
「はーい、サララ母様あーんして、
とモツを食べさせ、サララはとても幸せそうにモツを味わった。
「エルルこりゃ美味しいね、これでお肌がぷるんぷるんになるなんて最高じゃないかい!
あとハイボールもお代わり!」
エルルは簡易机を取り出し、
サラダやおにぎりをならべ、
「サラダやおにぎりも用意しましたよ、」
と声をかけてモツを食べおにぎりを頬張った。
食後にはさっぱり柑橘のシャーベットを出し皆で簡易椅子に座り食べているとエルルが、
「サララ母様花火をしませんか?」
「あらエルル花火とは何かしら?」
「エルルさん此処であの花火を打ち上げるのですか?」
「イオさん流石に此処ではあの花火を打ち上げる事は出来ませんよ、
だからこんな感じです、」
とエルルは梢の様な物を取り出し魔力を流せば梢の先端から虹色の可愛らしい炎が吹き出す、
「綺麗!エルルそれは私にも出来るのかしら?」
エルルは梢をサララに渡しながら、
「簡単ですよ、梢に軽く魔力を流して見て下さい、魔力を調節すればこんな風にもなりますよ、」
と梢から色々な色の小さな炎の玉を打ち出す、
エルルの隣ではユユが小さな口からこれまた小さな炎を吐き出し皆をなごませる、
サララが魔力を流せば滝の様に梢から炎が流れシャルルが、
「母様魔力の流し過ぎなんじゃない?私の杖を見てお日様の様に輝いて綺麗でしょ、」
「あらシャル私はわざと滝の様に見せているのよ、」
と言ってさらに炎の滝を大きくした。
次の朝、食事前にサララとシャルルはラルルの墓の前に立ちブリネン式の礼法で墓に祈りを捧げる、
「サララ母様ありがとうございます、爺ちゃん達も彼方で喜んでると思います、」
サララはもう一度墓の方を見てからエルルに悪戯っぽく、
「彼方には母上や叔母上達も居るんですもの、
叔父上の奥様は彼方でさぞご苦労なさっている事でしょうね、」
サララの言葉にエルルはラルルに近づく女性に魔法で語るノアが見えた様な気がした。
「サララ今回はありがとう、私は何時でも此処に居るから遊びに来ておくれ、
今度は森の中を案内しよう、」
リリルの後からエルルが、
「サララ母様また来て下さいね、
美味しい食事を用意して待ってますから、」
「ありがとうエルルとても美味しい食事ばかりで帰るのが惜しいわ、
で一つ気になっていたのだけど昨晩のモツとはお肉だと思うのだけど、
何のお肉なのかしら?
お肌に良いのなら彼方に帰って料理長に作って貰おうかと、」
リリルも、
「そう言えば何の肉だったんだいエルル?」
エルルはとても良い笑顔で、
「美味しかったでしょ!あれは森豚の内臓です!」
エルルの言葉に注目していた全員がその場で固まってしまった。
おまけ
公爵家のアルクの執務室でエルルが、
「主人様、奥様以前お話ししました叔母の件ですが、主人様のご都合の良い時に叔母を紹介しようと思います、」
アルクより先にマリーが、
「エルルやっとエルルのお屋敷に連れて行ってくれるの!」
「奥様うちはお屋敷ではありませんよ、」
マリーの勢いにアルクは苦笑いしながら、
「では城に出仕しない三日後にしてくれるか、」
「承りました主人様、」
「うむ宜しく頼む、あとゴースロの件はどうなっている?」
「はい、大使様の話ではゴースロ王のご到着に合わせ時間をとって頂きたいと、
あとゴースロ 一の治癒師様がオーライドに先入りされるともお聞きしましたが主人様の方は如何ですか?」
「勿論宰相の所にも連絡が入っている、
陛下との会談の後に改めて打診が来ると思うぞ、」
マリーは膨れ、
「エルルは私の執事なのよ!他の所へちょいちょい貸し出さないで欲しいわ!」
「マリー、エルルは公爵家の執事だぞ、」
ありがとうございました。




