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01:おはよう20世紀

毎日7時更新。全16話です。

この作品はオムニバス形式、シリーズで公開中の4作品目です。

よろしくお願いします。

 おはよう20世紀!

転生3日目の朝、目が覚めると枕元に2匹並べていたウサギの縫いぐるみのひとつが床に転がっていた。

タンクトップにハーフパンツ姿でベッドから抜け出す。転がっていたウサギをベッドの上に戻してあげた。寝相が悪くてすまない、夜中に殴ってしまったのかな。――ピンク色の花柄カーテンの向こうには秋の柔らかな陽射しが透けていた。6畳のこじんまりとしたこの部屋が今世の私の城だ!


 床に足を広げて身体をほぐす。もうの必要ないことだというのに、ついセツナの習慣でストレッチを始めた。脚を左右に180度広げて、上半身をペタリと床につける。一般人から見たら、やや引くポーズだ。その次は前後に開脚しながら頭の上で指を組む。その指を組んだまま腰の後ろまでずいっと降ろした――通称肩抜き。これは、一般人が明らかにドン引きするやつだ。後ろから前へ、そしてまた後ろへ。何度か繰り返して朝のストレッチは10分程度で切り上げた。


「おはよう、ママ」


「おはようセツナ。朝ごはん食べるの?」


「もちろん!」


 小田 セツナ、17歳。今世の名前だ。この私に刹那と名乗らせるとは……と、転生直後に鏡を見た瞬間大笑いしたよ。が、なぜか急に鹿を馬だとゴリ押した男の話を思い出して笑いを収めた。念の為付け加えておくが、言うまでもなくその話と私には一切の因果関係がない。


 髪をポニーテールにしてから顔を洗った。セツナの髪型は10年以上変わっていない。前髪も長く伸ばした常にポニーテールだった。けれどそれもあと数日で終わりだよ。部屋に戻って制服に着替えてカーテンを開けた。うん、秋晴れ!いい天気。


 こんがりと焼けた分厚いトーストにバターをたっぷりと塗って、スプーンで山盛り3杯いちごジャムをのせた。うう……たまらない。トーストの横には、プリプリとしたウインナーが2本と目玉焼き。それからうんと甘いミルクティー。最高の朝食だ。今世は今日から大当たりになる!


「行ってきます」


 セツナの家は二子新地にある。けれど毎日運動を兼ねて二子玉川から電車に乗っていた。セツナの足は今日も多摩川(こっきょう)を渡って二子玉川の駅へと向かっていた。


 今日は月曜日。

つまりセツナに転生したのは土曜日だった。目が覚めた時、セツナは6畳のあの城ではなく、とある県のホテルのベッドで寝ていた。


 目覚めた瞬間の柔らかなベッドの感触、もう一瞬で今世は特大の当たりだと確信した。部屋の中は暗かったが、厚いカーテンの僅かな隙間から日差しが見えていた。朝なのだろうと、ベッドから起き上がり左右を見回すと、すぐ隣のベッドに若いおなごが寝ていた。共同部屋か?とりあえず鏡を探そうと思った視線の先に鏡があった。なんとも段取りよく進むではないか。その鏡を覗き込んだ瞬間の絶望――


 小田 セツナ、なんとむごい青春を送っているのだ。こんな暮らしとっとと辞めてやる。私は好きなだけ美味しいものが食べたいんだ。セツナの身体は飽食の国、20世紀末の日本で暮らす健康な10代とは思えぬほどに痩せていた。よくこんな身体で動けるものだ。貧民として生きた生ですら、もうちょっとは肉がついていた、ように思う。これから私がしっかりと肉をつけてやるからな。


 しかし、あと2日だけは我慢しよう。その時セツナには、まだやり遂げねばならないことがあったんだ。

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