表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/91

幕間 管理者の悪あがき

 神々が住むとされる領域、『神域(しんいき)』にて――。


「……何という、何ということダ……」


 『神域』の主たるレグラの精神は、驚愕(きょうがく)と絶望によってグチャグチャになっていた。


 下界では、先ほど破瀬(はせ)鋼侍(こうじ)たちヒトの探索者パーティーによって、バルディア国に巣食っていたX級ダンジョンが攻略されてしまったところだ。


 あのダンジョンは、地球の在来環境への〝侵食(しんしょく)〟を進める上での最重要拠点だった。

 その喪失は、レグラにとって絶対遵守(じゅんしゅ)すべき【正典(シナリオ)】の崩壊を意味していた。


 ――「あり得ない」と思ったことが起きてしまった。


 精神体であるレグラは、『神域』の中をふらふらと右往左往する。


(あるじ)に……テラ様になんとお()びをすれバ……」


 もしレグラが中世日本の武士であったならば、この場で腹を切って自害していたかもしれない。

 レグラの精神はそれほどまでに、後悔と自責の念でいっぱいだった。


 ――そのテラがすでに別の大いなる神々や、その元眷属(けんぞく)たちに屈服していようとは、レグラには知る(よし)もなかった。


 レグラは独り言を言う人間のように、ぽつりぽつりと言葉をつむぐ。


「もう、あのダンジョンは使えナイ……。世界の〝融合〟は大きく遠のいタ……」


 レグラの言葉は続く。

 受け入れがたい事実を、事実として受け入れるために。


「【正典(シナリオ)】は完全に壊れてしまっタ……。もはや元の流れに戻すことは不可能……」



 ――――しばらくの沈黙が下りた。



 その間、レグラの精神は目まぐるしく計算を続けていた。

 最善の結果を望むことはもうできない。

 それは、妥協点を探るための計算だった。


 ……今の状況は目も当てられない。

 テラ様に報告するにしても、もう少しマシな状況にしてからだ。

 ――レグラはそう考えた。


 以降、レグラは事態の改善のために2つの策を立てる。



 1つめの策は、計算によって得られた次の解にもとづくものだ。


「…………初期目標の60パーセントを達成し得る解アリ。ただし、その可能性ハ…………」


 可能性は高いとはいえなかった。

 それでも、レグラはそれにすがらざるを得なかった。


「――――【主人公】に接触する。【彼】に働きかけ、事態を良い方向に導くための協力を要請スル」


 世界にとっては、新たな管理者の介入。

 それ自体、【正典(シナリオ)】に記されてなどないイベントだ。


 事が上手く運ぶかどうかは、未知数だった。


「【主人公】が協力的ナラ、狂った【正典(シナリオ)】を少しでも元のモノに近づけられるかもしれナイ…………」


 ――これが1つめの策だった。


 当然、レグラはこんなギャンブルのような策だけに頼ることはしない。


「――それが駄目ナラ、別のS級ダンジョンで新たな〝侵食〟ヲ起こす。いずれにせよ、X級ダンジョンの代わりは必要」


 そして、これが2つめの策だ。


 更に、この2つのプランを確実に遂行するため、レグラはある決意をする。


(われ)は、下界に降りル」


 ――それはレグラがこの世界の管理を任されてから、初めて取る行動だった。


 〝神〟の降臨。


 それ自体が、地上を揺るがす一大事件になることは間違いない。

 他の世界の神が知れば、きっとあきれることだろう。

 ……が、レグラとしては、なりふり構っていられる状況ではなかった。



 レグラに下界行きを決意させた理由は、もう1つあった。

 それは、これまで散々【正典(シナリオ)】を壊し尽くし、自分を苦しめ悩ませてきた〝ある者〟の存在だ。


 下界行きを前に、レグラはその者への敵意をたぎらせる。


「――そして我みずから、〝特異点〟たる〝ハセコー〟をこの手で必ず抹消(まっしょう)スル!」







ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

次話から波乱だらけの最終章が幕を開けます。

ぜひ最後までこの物語をお楽しみください☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ