#18 探索者デビュー【鋼侍視点】
東京都内にある銀座A級ダンジョン。
俺――破瀬鋼侍は今、その地下4階にいた。
装備として、『スター・ウィッシュ』で用意してもらった魔鋼素材製の戦闘スーツを身に着けている。……こんな上等な装備、一生縁がないものと思ってたよ。
――ここはさながら、A級モンスターの見本市だ。
さすが、都内でも屈指の不人気ダンジョンである。
グリフォン、オークロード、サイクロプス、……。A級を代表する強力なモンスターたちが敵意をむき出しにして襲いかかって来る。
このダンジョンが不人気なのは、強敵が多くて割に合わないから……らしい。
しかし、どのモンスターも俺の動きをとらえることはできない。
……どうやら俺は、やっぱり並の探索者より強かったみたいだ。
単に攻撃を避けるだけじゃない。
モンスターの突撃をかわし、死角に回り込んだ俺はここぞというタイミングで拳や足にSP――スピリット・ポイント――による強化をほどこし、一撃を加える。
それだけで屈強なモンスターは断末魔の声を上げ、光の粒子となって消えていった。
あまりにも、手応えが軽い。
A級モンスターって、こんなに弱かったのか……。――いや、俺が強いのか……
……なんつーか、三国志とかの無双ゲーをプレイしてる気分だなぁ。
配信をライブで観ている視聴者たちは、信じられないものを見たような反応をしていた。
生まれて初めて着けたスマートコンタクトレンズの片隅に、視聴者のコメントが次々と表示される。
《す、すげえ……》
《……A級モンスターが雑魚みたいじゃん……》
《これが配信施工員――いや、「ハセコー」の実力なのか……》
「ハセコー」っていうのは、俺の探索者名のことだ。
……わかりやすくていいだろ?
俺が配信施工員になったのは4年前だが、実はその前に少しだけ探索者として活動してたことがあるんだ。
「ハセコー」という探索者名はそのときに決めた。
――今でも覚えている。
あの頃の俺は、E級のモンスター1匹を倒すのにも四苦八苦していたんだ。
……当時と今で、俺の何が変わったんだ?
そんな疑問をよそに、モンスターの間引きは順調に進んでいた。
ただし、1つ落とし穴があった。
《――ちょっと待って! さっきからモンスターの死亡エフェクトしか映ってないんだけど》
《ほんまや! 本人どこ行ったww》
《…………そろそろかな?》
――――やべ。またやっちまった…………
そう思った直後、後方から少し高めの女性の声が響く。
「ちょっと、鋼侍! カメラの死角に動かないでって言ったでしょ? もう、これで何回目だと思ってるの!」
「…………すまん。ついクセで」
俺への注意の声を上げたのは、S級探索者の「カスミ」こと天王寺叶純だ。
カスミは今回、探索者として再デビューする俺に付き添って一緒にダンジョンに入ってくれた。ありがたいことだ。
《……プー、クスクス! また怒られてやんのw》
《これは草》
《カスミンが完全に引率のお姉さんな件》
《イチャついてるみたいで気に入らねえ》
《ハセコー、アウト》
うぅ……こいつら、好き勝手言いやがって。
……ん? 心なしか、カスミの顔が少し赤いような……
カスミはコホン、と咳払いをした。
「……さあ、次のモンスターを探そう」
「ああ」
そんなやりとりをしながら、俺とカスミはダンジョン探索を続けていた。
お読みいただき、ありがとうございます。2章スタートです。
引き続き、絵文字での反応やブックマークをいただければ幸いです☆
※この物語はフィクションであり、登場する探索者名などの固有名詞は、実在の人物や団体とは一切関係ありません。




