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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第7章 ダンジョンと悪魔の子

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第94話 出待ちされる0歳児

 まず、ゴレイヌが僕の手を引っ張り後方へと向かおうとした。

 次にパトルスたちが出口の方を向き、盾を構えた。

 そしてロロップが僕を抱える。

 最後に僕は……ありったけ叫んだ。


「戻れ!」

「聞けませぬ!」

「戻れ! スティングルが襲われた!」

「聞けませぬ!」


 ゴレイヌの目には涙が浮かんでいる。

 彼も悔しいのだろう。


「ロロップ、頼む! 戻ってくれ!」

「い、いや!」

「お願いだ!」

「やっ!」


 ダメだ、どんどん離れて行ってしまう。

 口が悪くてめんどくさがりで、面倒見がよくて優しいスティングルが……。

 背中から剣が生えているのが見える。

 おびただしい血が流れている。

 突き落とされ、階段の下で倒れている。


「――すまない!」

「きゃっ!?」

「ぬっ!?」


 指先から強靭な糸を出し、ロロップの足を絡めとる。

 同様にゴレイヌにも。

 2人は転倒し、身じろいでいる。


「本当にすまない!」


 それを視界に収めつつ、来た道を急いで戻る。

 そこでは既に戦いが始まっていた。

 ヴァスティーユとパトルスが盾で必死に耐えている。

 アレイザは風で押し戻そうとしているようだ。

 そしてその相手は、見覚えのある者たちだった。


「……双方、止まれ」

「聖子様!? どうして!」


 僕を必死に守ろうとしてくれていたパトルスが叫ぶ。

 当然だ、逃がすために命を懸けてくれていたんだから。

 しかし彼らが命を懸ける必要はない。

 敵の目的は、恐らく僕なのだから。


「止まれギャバン。目的は僕だろう?」


 数日前に、失われた腕の再生をしてやったギャバン。

 彼の後ろにいる者たちも見覚えがある。

 同じように治療した軍人だ。


「これはこれは……いいでしょう。おとなしく付いてきてくれるのならばね。聖子――いいや、『悪魔の子』」

「…………」

「我々を謀り、教会を乗っ取り、聖女様を汚し、あまつさえ――」

「言う通りにしよう。その代わり、彼の治療をさせろ」

「…………」


 無駄話をしている間にも、スティングルの命が危ない。

 一瞬でも早く治療しなければ。

 彼はここで死んでいい人間じゃないんだ。


「いいだろう」


 ここでようやく、双方の動きが止まった。

 合間を縫うように、スティングルに駆け寄る。


「『聖女の癒し』」

「……お、い……何で戻って……」

「恩人を見殺すなど、主が許しても母様が許しません」

「……バカ、が……」


 そう言って僕の頭に手をのせるスティングル。

 悪態をつくしかできない口の代わりなのか、その目はとても優しい。

 救えてよかった。


「悪魔の子、我々についてこい」

「…………」


 僕には『聖女の守り』がある。

 それの範囲を広げれば今いる仲間たちは守り切り、逃亡は可能だろう。

 だが、それだと――。


「教会にいるお友達がどうなっても構わないのか?」

「…………」


 そうなるだろう。

 マリンやクゥのこと。さすがに母様を害することはないだろうが、それも不確かだ。


「……2つ、条件がある」

「既に1つ叶えてやった気もするが……聞いてやろう。何だね?」

「『果てのない旅路』のみんなに危害を加えないこと」

「……もう1つは?」

「僕の仲間に……ゴレイヌやロロップも含めて危害を加えないこと」

「…………」

「聞いてくれるなら、お前らについていく」

「…………」


 少しの間、考えている様子のギャバン。


「……いいだろう。おいお前ら。元聖子の最後の慈悲だ。行くがいい」

「聖子様! それは聞けぬ命令!」

「できる訳ねぇだろうが!」

「私たちは戦うわ! イクラウス様を見捨てない!」


 しかしヴァスティーユ、スティングル、アレイザは尚も武器を構えて立ち上がる。

 それを制してくれたのは、パトルスだった。


「お前ら、剣を退け」

「パトルス!?」

「言う通りにしろ。逃げるぞ。冒険者は命あっての物種だ」

「おい!」


 パトルスが僕の横を通り過ぎた。

 すれ違いざま『待っていろ』と言いながら。

 彼らもとんだお人よしだ。たまたま依頼しただけの関係だと言うのに。


「イクラウス様待ってて! 絶対助けるから!」

「死ぬんじゃねえぞ!」


 アレイザとスティングルも同様に駆けだす。

 これでいい。

 後はどうにかして状況を変えるだけだ。


「おや、お前さんは?」

「私は既に聖子様に全てを捧げている。ここで逃げ出すくらいなら――」

「…………」

「死ぬ」


 ヴァスティーユ……。


「そうかそうか。では今主の御許に送ってやろう……死ね!」

「余との約束を違えるつもりか?」

「――!?」

「違える、つもりか?」

「あ、い、いえ……そんなこと、は……ない……ありませぬ……」

「ならばさっさと余を案内しろ」

「は、はい……わかった……」


 ギャバンなどどうとでもなる。

 少し凄んだだけでこの小物っぷり。案ずることはない。


 というより、パパっと闇魔法で洗脳しちゃえば話は早いか……いや、状況を把握しきるまではじっとしていよう。

 こいつらだけの反乱とは考えにくい。


「ヴァスティーユよ、その忠誠に感謝を。しかし今は耐えよ」

「……御心(みこころ)のままに」


 しかしこれからどうするか。

 そう思いながらも、背中を押されダンジョンを出る僕を迎えたのは、あいつだった。


「これはこれは……無様な姿だなぁ。『悪魔の子』よ」

「――勇者っ!」

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


明日も18時20分頃投稿します!

よろしくお願いします!

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