第92話 壁を掘る0歳児
ついに罠解除の瞬間がきたようだ。
「コツはな、細い糸を出すように対象の魔力に這わせる。んで、魔力の流れで弱いところがあるはずだから、そこをほどいていく感じだ」
「なるほど」
それ、多分めちゃくちゃ得意。
糸そのものだせるし、文字刻むのも魔力通すのもそんな感じ。
「いいか、最初は俺の魔力を通すから――」
「あ、できた」
「――あ?」
思いのほか簡単だった。
繋がって輪になってる古代文字、その文字を断つのと同じだ。
「……本当にできてる……」
「スティングルの教え方のおかげだよ、ありがとう」
「……ケッ! 俺は同じやり方で5分はかかる! これでも並みの奴より5倍は早えんだが……まぁお前の方がすげぇな」
遂に素直になってしまったスティングル。
しかし、実際彼のおかげなのは間違いない。
彼のアドバイスが僕の経験と合っていたからすんなりできたのだろう。
「ゴレイヌ殿、確認ですが……」
「ええ、光か聖属性の物以外はあなた方の物です」
「助かります」
事前に決めていたであろう取り決め、それの確認か。
教会としては本当にその2つ以外いらないとは。太っ腹である。
「これは……剣、ですね」
「魔力を通してみましょう……むっ!?」
ゴレイヌが持った剣からは、炎が出ている。
つまり火属性の剣のようだ。
「ではこちらはお渡しいたします」
「ありがたく。私が持ちます」
ということで、ロロップのおかげで見つかった“遺物”は彼らの物に。
ちょっと悔しい。かっこよかったのに。
「この先、出たところ近くに敵ですね。曲がり角の先かも」
「む! 全員警戒!」
「おう……!」
相手はAランクらしいからね。
全員緊張した面持ちだ。
「ウガァァァ……アアアァァ……」
現れたのは巨大なゾンビ。
体長は3メートルほどか、天井に頭が付きそうである。
まだゾンビになりたてなのか、お腹から内臓が飛び出ている。
「タイラントゾンビ! 気を付けろ、怪力がやばい!」
「ぬっ!? ぐあぁぁぁ!?」
パトルスが注意するも、思いのほか素早いタイラントゾンビの攻撃をヴァスティーユが盾で受けるが、吹っ飛んでしまう。
2メートル近いヴァスティーユが吹っ飛ぶって、相当な力じゃないか。
「ヴァスティーユ!? やばいイクラウス――」
「ぴょん!」
「ウギャアア!?」
「…………」
蹴り即爆散。
Aランクすら物ともしない僕のロロップ。君はなんて魅力的なんだ。
『旅路』のみなさんの言葉もどこかに旅立ったようだ。
「……お前、実は勇者パーティにいたとか?」
「ぴょん! あんな奴らと一緒にするなぴょん!」
ごもっとも。
嫌なことを思い出してしまった。
「ところで……この先まだまだ長いですよね?」
「あん? まあそうだろうな。事前情報がないから文字通り手探りで行くしかねぇしよ」
「そうですか。実はこの壁の向こう側がボスっぽいのですが」
「はぁ!?」
ひと際大きな魔力の持ち主。
“遺物”を守るボスがいると言うのなら、そいつがそうだろう。
僕の魔力感知能力に不備がなければ、目の前の壁の向こう側。
正規ルートはもちろん別にあるはずだが。
「壊しますか?」
「は? 壁を!? 無理に決まってんだろ! 上で見ただろうが!」
「しかし……罠解除と同じ要領で行けそうですよ。ほら、ちょっと欠けました」
「あ……は?」
見せつけるように、自分の手の平と同じサイズの壁の欠片を転がす。
壊れないと言うダンジョンの壁。
その原理は何のこともない、魔力で修復しているだけのようだ。
密度が宝箱の比じゃないが、じっくりゆっくりやれば破壊できる。
「は、はは……そんなん……ありかよ」
「おお、さすが聖子イクラウス様! このヴァスティーユ、感服を超えてもはや祈るしかありません!」
「祈りは主と母様に捧げてね。さて、このまま破壊していっていいですか?」
「は、はい……いいですかな、ゴレイヌ殿」
「……イクラウス様の御心のままに」
どうやら前代未聞だったらしい。
しかし、そろそろ飽きてきたのも事実。
子どもは飽きが早いからね。さっさと終わらせよう。
「お、向こう側が見えてきましたよ。あそこに見えるのがボスですかね?」
数分ほどで壁を貫通、10センチほどの穴が開きそこからボス部屋が見える。
そしてこちらに背後を向けたボスらしき存在も。
「ドラゴン!? もしかしてドラゴンのゾンビか!?」
「『聖女授けし希望の剣』」
「…………」
魔王の軍勢にも用いた大量の聖なる剣の魔法。
1本だけ具現化し、隙間からドラゴンゾンビに射出する。
見事背中に命中し、ドラゴンゾンビはそのまま霧となってしまった。
「では続きを――」
「待って!? 今の何!? 無詠唱!? ボスは死んだの!?」
「え? はい」
「信じらんない! ドラゴンなんてAランクでも最上位よ!? っていうか下手したらSなのよ!? それをゾンビとはいえ!」
「まあゾンビですから。作業、続けていいですか?」
要はあの魔王より弱いか同じくらいってことでしょう?
なら別に、いいかなって。
「俺よぉ、実はこの依頼で死ぬ覚悟してたんだぜ……?」
「私、イクラウスちゃんに弟子入りしようかな……」
「やめとけ。多分人類の領域にない」
「おお、ようやくイクラウス様の素晴らしさに気が付きましたか!」
背後で好き勝手言ってるが、美人さんの弟子なら大歓迎である。
主も言っている。信徒は美女に限る、と。
「よしっと。これで皆さん通れますか?」
「はい、何とか……しかし、本当に壁が壊せるとは……」
「ケケッ、こんなこと初めて見たぜ! お前面白いな!」
「全部スティングルのおかげです。あなた方とお会いできたことに感謝を――おや」
部屋の中央、ボスがいたらしき場所の近くにそれはあった。
「これが……ダンジョン最奥の宝箱……!」
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