第52話 死霊術師な0歳児
「近隣の町ででアンデッドが現れたそうですよ」
ドクンと、胸が弾けた音がした。
それは、いつも通り“聖癒”を終わらせた昼下がり。
ゲオルディクスから告げられた。
「へへへへへ、へぇ~~~……」
まさか、もうバレたのだろうか。
クゥのことはたった2日前の出来事だというのに。
いや、あいつのことだ。頭でキャッチボールなんかしてて見つかったのかもしれん。
「ぼ、僕とは何の関係もない。僕とは、な……」
「? はぁ」
「本当にないってば!」
「そうとは言い切れませんねぇ~……」
こいつの張り付いた笑顔が恐ろしい。
あのお気楽娘め、覚えてろよ……!
「とある森の奥で見つかったゴブリンゾンビだそうですよ。近くの神官が対処しようとしたそうですが、歯が立たなかったそうです」
「む? ゴブリン?」
「はい、ゴブリン。それのゾンビですね」
「むむ、それは由々しき事態だ。きっと近隣の住民の方々も不安でいっぱいであろう。聖子として、心を痛めるばかりだ」
よかった、本当に関係なさそうだ。
安心した。
今度クゥにお菓子でもくれてやろう。
「いえ、心を痛めるだけではなく。坊ちゃんに対処をお願いするかもしれません」
「なぜ?」
「対処に当たった神官は歯が立たず、討伐依頼を受けたBランク冒険者も命からがら逃げだしたと」
「…………」
「幸い、その場から動く気配はないようですが、放ってはおけませんからねぇ」
まあいい。
確かに気にはなる。
なぜそのような強力なアンデッドが突然現れたか。
「そいうことなら、僕が行こう」
「おお、ありがとうございます! 坊ちゃんに主のご加護がございますよう」
「加護はいらんから金をくれ」
これから入用になりそうなのだ。
あの元気娘が手加減してくれるのを祈るしかない。
「では早速――」
「すんごーっ! この花瓶ぴかぴか光ってるーっ!」
「ク、クゥちゃん……! 触ったら……だめー!」
部屋の外から聞こえた、騒がしい声。
退出しようとしたゲオルディクスの動きがピタリと止まる。
「わはっ! お花もきれいだなー! あっ――」
「あぁ……お花が千切れちゃった……!」
張り付いた笑顔はそのままに、こめかみのあたりがピクピクしている。
「あ、マリン! あっちの部屋いってみよー! 競争だぞー!」
「クゥちゃん! 走っちゃ……だめー!」
ドタドタと、2人分の走る音が聞こえる。
まったく、マリンの奴め。
「はっはっはっ、子どもは元気が1番である! マリンも以前より明るくなっている気がするぞ!」
「ははは、そうですねぇ」
まずい、ゲオルディクスの笑い方がいつもと違う。
これはマジのガチな奴かもしれん。
「いい加減にしろお前ら! 教会の中を走り回るな!」
「ぐぇ、苦しい……」
「ご、ごめんなさい……」
間もなく神官に捕まったようだ。
さもありなん。
「――失礼っ」
「む?」
それを聞いたゲオルディクスが部屋を飛び出る。
さてはついに捕まえたいたずらっ子にお仕置きをするつもりだな?
「貴様ッ! いくら悪戯したからといって子どもを痛めつけるとは何事だ!」
「えっ! あ、これは教皇様! しかし――!」
「しかしも糞もあるか! 子どもは国の……世界の宝! 子どもの心に傷を負わせるというならこの私が――」
――おっと。
それ以上はよろしくなさそうだ。
「ゲオルディクス!」
「――坊ちゃん……」
「それと、そこの神官殿。彼女らは僕の大切な友人だ」
「……はっ、申し訳――」
「しかし、悪いことは悪いと叱ってやってくれ。その方が彼女らのためになるからな」
「……はっ! 主と聖子様のお導きに感謝を!」
これでいい。
これならきっと悪いようにはされないだろう。
しかしゲオルディクスは……前もこんなことがあったような。
こいつの昔のことは知らないが、もしかすると、ひょっとするかもしれんな。
「坊ちゃん、いえイクラウス様。申し訳――」
「不要」
「――はい、坊ちゃん」
「主と母様のお導きに感謝を」
「はい、主と聖女様に感謝を。くっくっくっ」
こいつめ……やはり何か企んでいやがる。
しかし、それよりも気になることがある。
クゥの奴、なんか匂うな。
「クゥ、それとマリンも。ちょっと“聖癒の間”に来るように。ゲオルディクス、誰も入れるなよ」
「ま、ままっ! まさかぁっ! イクラウス様がついに私たちにお仕置きを!? 人に見せられないあんなことやこんなことをっ!? きゃっ☆」
「こいつ……!」
ちっとも反省していない。
こいつは本当に……本当にっ!
「いいから来い!」
「あ~~~れぇ~~~♪」
「……あ~~~れぇ~~~……!」
マリン、お前もか……。
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