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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第4章 病弱王女と望まぬ婚約

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第44話 唇を奪われる0歳児

 アステラと過ごし始めて1か月。


 彼女はめきめきと体力を回復させている。体調も今のところ問題ない。

 こうなるとそろそろお別れの時間も近いかもしれないな。


「イクラウス様、少々ベッドに腰かけてくれませんか?」


 ある日、そんな彼女が母様と僕の部屋にやってきた。

 ベッドに腰かけろとは。


「はい……これでいいですか?」

「もうちょっと手前に――はい、いいです! では……行きますよ!」

「は――えっ!?」


 走り出した彼女。そして床を思いっきり蹴る彼女。僕に向かって飛んでくる彼女。

 それらがゆっくり、時間がゆっくり流れるように、スローモーションで見えた。

 死ぬかもしれない。


「ぐえっ!?」

「えへへ!」


 生きてた。押し倒され、潰されたが生きてた。

 確かに彼女は軽い。とても12歳とは思えないほど体も小さい。

 しかし、僕は0歳だ。

 常識的に考えて、危険だ。


「アステラ、死――」

「ん~ちゅっ♡」

「――はえええっ!?」


 キ、キス……キッスされた……!

 唇に……キスされたぁ!?

 母様ともまだだったのにぃぃぃ!


「イクラウス様、婚前にはしたなくはございますが……どうしても口付けしたくなりまして!」

「『なりまして』じゃないよ! 王族の方的にまずいんじゃないの!?」


 婚約してたとしても関係が解消された場合を考え、貞操とか守らなきゃいけない的な話は聞いたことがある。

 ABC3段階中の1段階目とはいえ、誰かに知られでもしたらまずそうだ。


「はい! さらに兄様も見ています!」

「はぁっ!?」


 あの(こじ)らせシスコン変態野郎が見ていようものなら今この場で処刑される可能性だってある。

 アステラの治療後はすぐに帰国したって聞いたが、まさかいるのか?


「……あ、死んでる」

「……兄様ったら……」


 扉の前で、たった今主の元に駆け昇る魂と目が合った。

 主よ、今御許(みもと)にマヌケな魂が向かいます。追い返してください。


「まじめな話をしますね」

「え? この状況で?」

「私、今年で12になりますが、今まで婚約とかそういった話は全くありませんでした」


 僕の言葉を完全に無視し、それどころか押し倒され抱き着かれたままでまじめな話が始まる。


「政略結婚、それにさえ使えない、王族として何もできない穀潰(ごくつぶ)し王女。それが私でした」

「そんな……」

「事実です。そして、それを変えてくれたのがあなたです。わかりますね」

「……はい」

「生きる意味をくれた。恩返しするチャンスをくれた。何でもできる体をくれた」

「…………」

「こんな私に、命を削ってくれた人。あなたと共になれない未来があるのなら、全てを賭けてそれを阻止する。つまり、あなたとの未来は確定してる」


 最後の言葉の後、再び口付けをされる。

 数秒の後、口を離した彼女の顔は、かつて病弱で寝たきりだったとはとても思えない強いものだった。


「なので、いつでもキスをしていいってことに気が付いちゃいました♡」

「そ、それは違うとおも――むぐっ」

「ちゅー♡」


 もう、逃げられないらしい。

 やれやれ、モテちゃってまいっちゃうなぁー。

 あぁ……母様……。


「ア、アステラよ……頼む、せめて兄のいないところで――ぐふっ」

「……はぁ。お兄様には既成事実を見届けて貰おうと思ったのですが……」


 それね、お兄さんにとって『恩を仇で返す』ってやつだと思う。

 追い返された魂が再び昇って行くのを尻目に、この妹を止めてくれなかった恨みを込めて祈る。


「あ、もちろん初夜は2人っきりですからね♡」

「…………うん」

「あ~ん、かわいい♡ 好き好き♡ だ~い好き♡」


 もう、好きにしてくれ……。


「ア、アス、テラ……よ……早く、本題に……入るのだ……時間はあまり、ないんだぞ……!」

「時間がないからこそ、です! はぁ~、もっと早く気付いてればよかった!」


 よかった、これが本題じゃなかったようだ。

 ようやく体を起こし、今度こそまじめな顔をするアステラ、そして死にそうな顔のグラウゼル。


「こほん。あなたの妻、アステラは――言えない、言えないですお兄様!」

「あーうむ。アステラ連れて帰るわ」

「あ、はい――」


 しまった。さすがに素っ気なさ過ぎたか。

 いよいよアステラが国に帰る時が来たというのに。

 彼女が向けてくれてる気持ちは素直に嬉しい。

 意地を張らずにちょっとだけ盛ろう。


「――えっ!? そんなまさか……大好きなアステラともうお別れだなんて――」

「お別れじゃありません! 少しだけ別の場所で過ごすだけです!」

「それをお別れと――いえ、そうですね!」

「そうです! 次に会った時、笑顔で会うために……!」


 それ、恋人が別れる時のセリフだと思う。


「じゃあまたな。お前もいつでも来い」

「えっ、さすがに早すぎでは?」

「数日前に手紙は渡っていたはずだ。大方アステラが握りつぶしていたのだろうが」


 僕とともにいれない未来があれば阻止する。

 既にその戦いは始まっていたということか。

 今回は失敗したようだけど。


「やめてくださいお兄様! 放してください! すぐに行きますから! あと1回だけキスしたら行きますから!」

「認められるか! いろんな意味で! あとどうせ1回じゃすまないだろう!」

「1回したら2回も3回も同じです!」

「ほれ見ろ! そもそも婚前になあ――」


 離れていく声に、少しだけ寂しさを感じる。

 しかし元気になったなぁ~。

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


明日も18時20分頃投稿します!

よろしくお願いします!

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