第27話 王と会う0歳児
傷ついた人たち、特に重傷を負った人たちへ治療を済ませたりおばちゃんと談笑したり。
そんな穏やかな時間を過ごしていると、遂にゴレイヌ達援軍が到着した。
「イクラウス様……!」
「スー……スー……」
僕を見つけるや否やゴレイヌが駆け寄ってくる。
彼は僕の後ろに視線を少しやった後、それを考えないようにしたらしい。
「うむ、戦いは終わった後は負傷者たちの手当や周囲の見回りなど――」
「イクラウス様、心配しましたぞ!」
「……手紙に書き残した」
「そんな……たった一言『よしなに』だけではないですか!」
「スー……スー……」
僕が持ってきていた本、『聖マルグリッドその強固な信仰』を取り出すゴレイヌ。
その最後のページに書いておいたのだ。
本は貴重ではあるが、紙がないから仕方がなかった。
子どものやることだ、マルグリッド様も笑顔で許してくれるだろう。
「それよりも、私はイクラウス様の御身が心配で――」
「だが、そうしなければ罪なき人々は救えなかった。余はこのことについて一切譲るつもりはない」
「――――承知、しました。イクラウス様、とにかくご無事でよかったです」
「スー……スー……」
彼にも多大な心労をかけたようだ。
人々を助けることと母様を救うことに手段を選ぶつもりはないし、ロロップの時とはまた違う。
だが、申し訳ないのもまた事実。
「心配かけてごめんなさい」
「……いえ。差し出がましいことを申し上げました」
「スー……スー……」
よかった、これで一件落着と言ったところだろう。
後のことは彼らに任せて、後は早速――。
「ところで、この国の王とはお会いになりましたか?」
「ん? いや……」
サンディバーグ王国。
小国と言えど、そりゃ王様もいるか。
「喫緊の事態だったため事後でも致し方ないことではありますが、早めに訪問すべく王城に向かうのが――」
「その必要はないぜ!」
ゴレイヌの声を遮るように声をかけてきたのは、薄汚れた作業服をきた格好の青年だった。
30代前後だろうか、精悍な顔を汗や泥で汚しながら今まで作業をしていたようだ。
「お初にお目にかかる、私がこの国の王、レントレイ・サンディバーグだ」
「おお、これはこれは。王自らが現場におられるとは」
「教会の聖子様が直々に戦ってくれたんだ。私が引きこもっている場合ではあるまい」
「スー……スー……」
額の汗を拭い、とてもさわやかな顔でこちらに笑いかけるサンディバーグ王。
白い歯が非常にまぶしい。
「そこの聖子様を抱えた獣人のお嬢さんにも助けられました。国の代表として感謝を」
ついに触れてしまったか。
僕の背中に顔をうずめるように抱きかかえた彼女のことを。
さっきから大きく息を吸っている音だけが聞こえるが、大丈夫だろうか。ちゃんと吐いているだろうか。
僕としては背中が多少くすぐったい以外に害はないから別にいいんだけど。
「彼女も聖イルミナス教会のお方で?」
「彼女は――そうとも言えるし……そうとも言えないような……」
「むぅ?」
確かに今の彼女は立場的にはどうだろう、正式なものは何も決まっていない。
そもそも獣人に対する教会としてのスタンスも知らないから迂闊なことは言えない。
もちろん悪いようにするつもりはないが。
「スー……ふぅ」
その時、吸ってばかりいた空気を吐き出し、いよいよロロップが口を開く。
その口を塞がなかったことを後悔することになるとは、思いもしなかったが。
「旦那様の奥さん兼犬兼馬です!」
「…………」
「…………」
「…………」
どういう意味だろう。
なぜ犬や馬なんだろう。ウサギということに誇りはないのだろうか。
「あ、ああ。うん。いいことだな」
「ぴょん! スー……」
「時にロロップ殿、先ほどから何をお吸いで?」
「旦那様成分ですぴょん! スー……」
「イクラウス様は猫ではありませ――いえ、気ままなところは猫のようでしたな。はっはっはっ」
ゴレイヌが何を見てどうして発言を変えたのか。
僕には知る由がなかった。
彼女の顔が見えないのだから。
「さて、援軍も来たことですし。僕はこれにて失礼させていただきます。王も何かと忙しいでしょうしね」
「そうか。では改めて、聖イルミナス教会聖子イクラウス様。此度は多大なご慈悲をお恵みくださり、誠に感謝申し上げます」
「いえ。主と母様のご加護が末永くあらんことを」
こうして長い長い遠征はようやく終わったのだった。
◇◇◇◇◇◇
「ふふ。イクラウス君、キミは本当に面白い少年だね……このコイン、使う機会はなかったけど……ありがたくもらっておくよ。ふふふふ」
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