第150話 聖戦と1歳児
「坊ちゃん、神官の約半数は我々の味方。とはいえさすがにここは危険です」
「そうだね。ゲオルディクスも一緒に行こう!」
「……承知」
ゲオルディクスを連れ、グラウゼルたちのところへと戻る。
既に教会を守る壁は破壊され、兵士たちは雪崩れ込んでいた。
「おまっ!? 教会を裏切るのか!?」
「教会だ!? 人の道を踏み外した奴の言うことなんか聞けるか!」
神官同士が言い争う声が聞こえた。
ゲオルディクス側が事前に用意していたであろう拘束具で縛っている。
「グラウゼル! この人は味方だよ! 守ってあげて!」
どうにかグラウゼルたちが待機していた場所に辿り着き、ゲオルディクスを押し出す。
「教皇様! この事態はあなたが!?」
「左様でございます。できれば味方の神官には手を出さないでいただけるとありがたい」
「もちろんです! 全軍! 神官に仲間がいる! 気を付けろ! 迷うなら捕縛に留めろ!」
難しい指示である。
だが何としても頑張っていただきたい。
「イクラちゃん! やっぱり何とかなったね♪」
「ゲオルディクス様 おひっさー☆」
「ゲオルディクス様、おひさ……!」
「お、おお……おっひさですな、2人も……それにフルルーチェ様」
いつの間にか母様とマリン、それにクゥが前線まで来ていた。
これにはゲオルディクスじゃなくても驚き。
「ちょっと! 3人とも戻っててよ!」
「イクラちゃん、私の力をご覧あれ~♪」
母様が神々しく、いつもよりさらに神々しく光り輝き始めた。
思わず跪きたくなるのを抑え、状況を確認すると……一部の神官たちが光っていた。
「私たちを応援してくれる人たちに加護を与えました♪ すごいでしょ!」
「母様! 素晴らしい! 僕にはマネできません!」
「うふふ♪」
本当にすごい……どういう条件付けがなされているのか。
いや、聖魔法にそんなもの必要ないんだ。
想いさえあれば。
「ぃよぉーし! それじゃあ……人類の希望の灯は! このクゥ自ら打ち上げよー! 『闇夜照らす漆黒の希望、堕天のクゥ』いざ参る☆」
「……世界に夢を、世界に安らぎを、夜の闇に優しく抱かれて、おやすみなさい……! 『邪を打ち砕く希望の光、天使マリン』行きます……!」
「参らないで行かないで!」
2人がなにやら口上を述べた後に走り出してしまった。
「大丈夫よ、あの2人なら♪ 訓練頑張ってたし♪」
「しかし……!」
「それに、あなたの『守り』もあるでしょう?」
確かにあの2人が着ているドレスには前日に付与し直した『聖女の守り』がある。
ヴェラのブレスにも耐えられるだろうが……。
「……戻ったらお説教だ!」
「そうね、さすがにね……」
なんやかんや母様も心配ではあるらしい。
だがあの2人の思いを考えると、今止めるのは無理だろう。
主よ、絶対守って!
「くらえーネクロマティック絶技! 『薔薇薔薇悪夢・楽園』!」
「お仕置き、です! 『天使の羽剣』」
僕の授けたインスタント聖剣も活躍しているようだ。
子どもは元気が1番。
やっぱり健康が1番なので無事でいてくれ……。
「何だ!? 手だけが――うぎゃあ!?」
「た、たすけて――」
「白い剣……かっこよ――ひぎゃぁ!?」
「なんだこの女の子たち!?」
彼女らの向かった先から、いい感じに混乱の声が聞こえてくる。
元からゲオルディクスのおかげで混乱の渦中にあったことに加え、訳の分からない魔法少女たちのお出ましだ。
敵からしたら災難であろう。
しかし、そんな混乱を一喝の下に抑えようとする者が現れた。
「取り乱すな!!!」
大教皇である。
神殿2階にあるバルコニーから、戦場を見下ろすように立つ彼女。
老体のくせに、どこからそんな声が出るのか。
そして彼女が錫杖を振りながら続ける。
「主の意向は我らにあり! 正義は我らにあり!!!」
どこか不吉な予感を振りまきながら、錫杖を振り回す大教皇。
その魔法を構成する魔力には覚えがある。
聖属性の次に、慣れ親しんだ魔力。
「『聖霊降臨』」
大教皇の下の地面から、ボコボコと何かが湧き出てくる気配。
間違いなく『死霊術』。
だが、その対象が問題だった。
「歴代の神の使徒と共に……正義を示すのだ!」
意思のない、傀儡と化したかつての聖女たちだった。
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